case.15 【覚醒1st】誰かを『殺す』為の力
前・中・後編に分かれてます
VS堕天軍はまだまだ続きます!
「今度こそ終わりだ―――燃え尽きるがいい」
エレボスがそう言って、指をパチンとならした。
すると、目の前に黒炎が浮かび上がり、そしてそれは俺に身体に灯った。
一瞬にしてその火は勢いを増していく。
「グァァァァァァァッ!」
「び、白夜ッ!?」
レヴィーナさんの声が聞こえる。
クソ……俺がもっと早く反応出来ていれば……ッ!
「ガ……ァァァァァァァァァッ! 痛い……熱いッ!」
ヤバい……これはヤバいぞ……。
俺……また死にかけてるぞ……?
このままじゃ、焼死コースだ……。
まだ、思考ができる内に、どうにか出来ないか試してみないと……!
まず、そもそもどうしてこうなったかと言うと、だ。
エレボスとアルカナが「本気を出す」と言った直後、二人のオーラは一気に強くなった。
そんな二人が同時に襲いかかってきて、俺はレヴィーナさんと協力して何とか避け続けることが出来た。
だが、俺の体力には限界があった。
疲れで一度立ち止まってしまい、そこへエレボスがあの炎を放ってきたのだ。
そして、今に至る訳だが―――
「アグッ……ガァッ……ァァァァァッ!」
「フフ……ついに仕留めたぞ、この兎足め。どいつもこいつも、逃げるのだけはうまいようだが、最後にはやはり我が勝つということだ」
エレボスが何か言っているが、今はそんなのどうでもいい……!
とにかく、このままじゃ……死ぬ……!
「白夜、今から水魔法でその炎が消せないか試してみるわッ!」
背後からレヴィーナさんの声が聞こえる。
水魔法……か!
これで、この炎も……
「水魔法、か。無駄よ、普通の水魔法程度じゃその獄炎は消せないもの」
「そ、そんなの試してみないと分からないでしょう?」
「あ、そう。ならやってみるといいわ」
アルカナの余裕そうな言葉が聞こえてきたが、それに構わずレヴィーナさんは俺に向けて、水魔法を放った。
だが、しかし―――
「なんで、なんで消えないの……ッ!?」
「そりゃあだって、その炎は地獄の業火、煉獄の連中すら恐れた絶望の“獄炎”なんだから。冥王にのみ継承される、冥府の特徴の一つでね。その炎を一度喰らうと、二度と消えないの。残念だけど、貴方はここで生き絶えるわ」
……そん……なッ!
それじゃあ、俺にこの炎を消す方法はもう無いのか……ッ!?
いいや……まだだ……まだ諦めるのには早すぎる……!
こうしてまだ生きている以上、何とかしてこの窮地を脱しなければ……!
「まだ……だッ! 俺は……諦めないぞッ!」
「フッ、足掻けばいい。足掻いて足掻いて、その分だけ苦しめばいい」
どうする……どうする俺!!
魔法で消す……?
いや、レヴィーナさんの魔法が通用していないのを見ると、俺の魔法じゃ絶対に無理だろう。
じゃあ、スキルを使う……?
俺の使えるスキルの中で、そんなことが可能なスキルは……無…………いや、待てよ?
俺は、ふと思いついた。
―――スキル『逆行』。
これは確か、対象の時間を巻き戻すことのできるスキルだったような……。
そうだ……そうだよ!
このスキルを俺自身に使えば、そもそも炎が無かったことになるんだ!
よく、こんな方法思いついたな……俺!
まさに“背水の陣”ってやつか。
とと……そんな事を考えている場合ではない!
今すぐスキルを使わないと!!!
「時間よ巻き戻れ……スキル発動ッ! 『逆行』!!!」
「なっ……スキルだと……!? だが、我のこの力を打ち消すことなど、出来るはずがない!」
フッ、そいつはどうかな。ってやつだぜ冥王さんよ……。
俺の身体が光に包まれていく。
これから俺自身の時が巻き戻るのだろう。
そうしたら、今の記憶は無くなるのか……?
いや、もしそうだとしても問題は無いか。
それなら、遠慮なく過去に戻れるぜ……!
「ガァッ……さ、さぁ……ここからが本番だ……ッ!」
俺がそう言うと、光の輝きは増していく。
そして、辺りを閃光で包み込んだすぐ後、俺はそこに立っていた。
「お……成功した??」
手足を動かす。
大丈夫、何も以上は無い。
身体にまとわりついていた炎も消えている。
記憶もある。
本当に、何にも無かったみたいな感覚だ。
「まさか……本当に……!?」
「何……何をしたの?!」
エレボスとアルカナが驚いた表情でこちらを見てきている。
さらに、
「すごいわ……流石勇者なだけはあるわね……!」
なんてレヴィーナさんも称賛してきた。
少し恥ずかしい気持ちになった。
「フッ……フハハ……面白い……面白いぞ人間ッ!!! 我の獄炎を処理できたのは、貴様で二人目だ!!! ルシファー以来だな……俺が本当の本気を見せるのは」
刹那、周囲の空気がピリッとする。
「アルカナ。一つ頼みたいことがある」
「何かしら、そんなに改まって」
「ヤツの……勇者の本気を見てみたい。その為には、ヤツの本気を解放させる“きっかけ”が必要だ。だから―――」
エレボスは、そこまで俺たちに聞こえるように言った後、恐らく一番肝心な部分を俺たちに聞かれないようにアルカナの耳元で話していた。
そして、その耳打ちが終わると、アルカナはなんとも愉快そうに笑い、そして大きな鎌を構えた。
「承ったわ。でも、いいのね? 本当に。どうなっても、私は知らないからね? 助けないからね?」
「フン、余計なお世話だ。我が良いと言っているのだから、良いに決まっている」
「あ、そ。なら遠慮はしないわ」
なんだ……一体何を仕掛けてくるんだ……?
俺の本気がみたい……そう言っていたが……。
「レヴィーナさん、警戒しといてください。何か、嫌な予感がします」
「え、ええ。そんなの分かってるわよ。こんな天才秀才妖精の私が、警戒を怠っているとでも……?」
「声、震えてますよ」
「……いいから、貴方も早く警戒してなさい」
「……はい」
この空気感のせいで、本調子が出ない様子のレヴィーナさん。
先程から、特にこれといって活躍はしていなかった。
まあ、俺も対して活躍した訳ではないのだが。
「―――舞台は整った。アルカナ、始めてくれ」
エレボスが、大剣を地面に突き刺し、そして俺たちの背後に、いつの間にか居たアルカナに向けてそう言った。
そして俺は、その言葉につられて背後を向いたその時、衝撃を受けた。
「何を……しているんだ……ッ?」
そこには、宙に浮かぶ二つの魔法陣。
それに貼り付けられた二人の人物。
―――ラグマリアとラージエリさんだ。
そしてその目の前には、巨大な鎌を構えたアルカナが。
「―――私は伝説の死神。それだけで、今から何が起こるかなんて、赤ちゃんでも分かるはずよ」
ま……さか。
「それじゃあ、ショータイムの幕開けよ。開幕祝いの鮮血、プレゼントさせていただきますわ。―――勇者様」
「待てよッ―――」
直後、アルカナの背後で血が吹き出した。
二つの血柱。
「う……ぁ」
落ちる生首。
血のついた巨大鎌。
「ぁ……ぁぁぁ……」
―――ドクン。
心臓が鼓動する。
「あぁ、良いわぁその顔……。苦痛に歪むその顔が、私の大好物なのよぉ……!」
―――ドクン、ドクン。
鼓動は加速していく。
動悸が激しくなり、息が切れてきた。
「ねぇ、エレボス。エレボス!」
「なんだ。ここからが本番だと言うのに」
「あの子、食べてもいいかしら?! いいでしょ? ね? ね? ね?」
―――ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン。
視界が歪む。
思考が纏まらない。
「ダメだ。アイツは我が殺す。勇者を討ち取ったとなれば、ルシファーからの評価も得られるはずだからな」
「はぁ!? そんな事を気にしてるの!? ならせめて、殺したあとの魂くらいは食べさせなさい!」
「まあ、それなら良いだろう」
―――ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン。
ふざけた事を、言うなよ。
▶スキル解放を実行―――
何で殺した?
▶失敗。再度実行―――
俺の本気が見たいが為に、せっかく改心してくれた彼女と、その姉を殺したのか?
▶失敗。再度実行―――
ふざけるなよ……ッ。
あの笑顔は、鎖から解き放たれた少女の笑顔だったんだ。
俺は、その笑顔が良いなって思ったんだ。
▶―――到達。
―――彼女に、惹かれていたんだ。
▶五番目のスキルを解放―――
それが、ようやく分かったのに。
なんで……なんでッ!!!
▶―――スキル『覚醒』を獲得しました。
お前たちだけは……許さない。
▶以降、『覚醒』によりあらゆる進化形態へと変化することが可能です。
俺が……俺がお前たちを殺してやる……ッ!
▶現在、怒りを象徴とする種族“鬼族”の進化形態、“鬼神”へと進化することが出来ます。
その為の力なら、喜んで受け入れよう。
勇者なのに、惹かれた人すら守れない。
ましてや殺されることにも気づけない、こんな無力な俺なんか。
―――死んでしまえばいいのだ。
だから……だからッ!
▶スキル『覚醒』を発動します。種族を“人間族”から、“鬼神”へと進化します。
俺が、甘かったんだ。
チートとか言って、浮かれていたんだ。
兄貴が前に話してくれた過去話が、ようやく俺にも分かった気がする。
―――人は、絶望した時に真価を発揮する。
事件は、どうしてこうも突然起きるんだろうな。
奴らは引き返せないことをした。
俺からかけがえのないモノを奪ったんだ。
だから、だから―――
「―――今だけは、今だけは勇者なんて職業、クソ喰らえだ。守るんじゃない、“壊して”やるよッ!!! テメェら全員なァッ!!!」
そこに居たのは、“勇者”皇白夜ではなく。
―――復讐に燃える、鬼神だった。
ブクマ・評価を何卒よろしくお願いしますッ!
励みになります!




