case.9 援軍
3連休!
頑張ります!
「……って……あれ?」
到着早々、俺は周囲の状況がおかしいことに気づいた。
いつものルナ城ではない。
「誰かと思ったら貴方……勇者じゃない!」
「えっ……と、レヴィーナさん……?」
「そう、レヴィーナよ! 貴方が来たってことは、もしかして―――」
レヴィーナさんは周囲をキョロキョロと見回す。
と、ちょうどその時俺の後ろからその他の仲間たちも現れた。
「あ、あれ? なんで白夜様の方が先に―――って、これは一体……?」
「何か……強そうな方たちがたくさん……」
「ここが魔王城……ってうぇぇぇ?! 何ですかこりゃあ!」
「白夜! 姉さん! 見てよ! そこに天使が倒れてるわよ!」
「はいはい、落ち着いて状況確認なさいなラグマリア。何か相当ヤバそうな状況ですよ」
堕天軍一同は、そのやり取りを静かに見守っていた。
援軍だというのに、高みの見物をしているようだ。
そして、レヴィーナは口をあんぐりと開けてとっても驚いていた。
「え、え、え……? 何この大所帯は……?」
「え……っと、あー、説明するのは少々ややこしいのですが、簡単に噛み砕いて説明すると、彼女たちは《天帝八聖》のお二人です」
俺はそう説明した。
ラグマリアとラージエリをそうそう紹介すると、奥の方から倒れていた人影が一瞬でこちらまで飛んできた。
「……あ……貴女が……」
「……?」
その人影はラグエルさんだった。
ラグエルさんは、ラグマリアを見つめながら、しっかりと品定めをするように全身をジロジロを見回した。
「えっと……あの?」
「ああ、いや。何でもないわ。今は説明するのはよしましょうか。ひとまず、今の状況は最悪よ―――」
到着した俺たちにも分かるように、ラグエルさんは説明してくれた。
聞くと、《七つの大罪》最強のルシファー率いる堕天軍が、ルシファルナさんを狙って魔王城に襲撃に来た、と。
そして、その堕天軍と戦うことになった5人のメンバーが、堕天軍の一人、堕天使バラキエルによって蹂躙され始めていた所に、一時撤退していたルシファーと、俺たち勇者のパーティーが帰ってきたという訳らしい。
その話を聞きながら、ルインさんが口に手を当てて考え事をしているようだった。
「ふむ……。向こうの戦力はルシファルナ様と、そちらに倒れている悪魔を合わせれば合計で10。そして私たちは現在11になりました」
ルインさんが、堕天軍と魔王軍のそれぞれの数を交互に確認しながらそう言った。
そこへ、倒れていたもう一人の影……ベルゼブブさんがゆっくりと歩いてきた。
「グッ……だが……こちらの戦力と……向こうの戦力では……かなりの差が……あるぞ? それはどうするのだ……?」
「それは、先程までの皆様の作戦通りで良いのではないでしょうか」
「先程までの……?」
ベルゼブブさんはどうやらまだ少し混乱しているのか、首をかしげていた。
そんな彼の様子を見兼ねて、ラグエルさんが代わりに言った。
「―――援軍が来るまでの時間稼ぎってことよ」
「……あぁ、それか。フム、確かにもう日は沈んでいる。それならば、他の魔王軍メンバーが帰って来てもおかしくはないということか」
なるほど。
と、俺も素直に納得してしまった。
帰って来て早々こんな状況だったから、少し状況理解が出来ていなかったが、まあ大体は察せた。
「ねぇねぇ白夜」
突然、ラグマリアが服の袖をくいっくいっと引っ張ってきた。
「な、なんだ?」
「あのさ、あそこの天使さん。あの人……いや、あの方は何者なの? 貴方分かる?」
そう言いながらラグエルさんの方を見て言ったラグマリア。
そうか、ラグマリアはラグエルさんのことを知らないのか。
それなら、早めに教えたほうが良いかもしれないな。
そう思って、早速その問いに答えようとした。
「ああ、あの方はな―――」
そんな時だった。
「―――そろそろ。そろそろ作戦会議は終わったか? 愚かな反逆者共よ」
ルシファーだ。
ルシファーが空から見下すようにそう言ってきた。
「援軍も来た。時刻ももう夜となった。―――これ以上、我らが無駄な時間を過ごす必要も無くなった訳だ」
「だったら……どうすると言うのだ……」
「分からないのか? ベルゼブブ。お前たちはあの魔王への見せしめとして今から―――死ぬんだよ」
その言葉で、俺の背筋はゾッと凍った。
―――本気だ。あのルシファーって奴、ガチで俺たちを殺そうとしている。
「なら……今一度抗うのみ……!」
「ほう、まだやるか反逆者共よ!」
ベルゼブブの言葉に、ルシファーの言葉に頷くこちらの魔王軍メンバー。
全員が武器を構え、戦闘態勢に入る。
「お前たち」
ルシファーがそう言うと、背後の堕天軍メンバーが、同じく戦闘態勢を取った。
「バラキエル。貴様はそこの天使ラグエルを抑えろ」
「ああ」
バラキエルと呼ばれた堕天使は、ルシファーに礼をし、ラグエルさんを睨んだ。
「フェンリル。お前はそこの勇者と巫女の相手をしてやれ」
「ハッ」
続けてフェンリルと呼ばれた灰色の獣人が、俺と月夜の方を見て来た。
俺たちの相手は、あの獣人……か。
「エレボス、アルカナ。お前たちはあそこの天使二人組と戦え」
「了解」
「分かりました」
エレボスと呼ばれたすごい筋肉モリモリな体型の男と、アルカナと呼ばれたとても大きな鎌を持った華奢な女が、ラグマリアとラージエリさんを見た。
「リガルテは、あの妖精族の女と戦え」
『ガ……ァ……レヴィーナ……ァァァァァッ!』
リガルテ……そう呼ばれた白い龍はレヴィーナさんの名前を叫ぶ。
兄貴から名前だけは聞いたことある。
が、まさか敵だとは思わなかった。
「フルーレティはそこの小人族と戦え」
「かしこまりました」
フルーレティと呼ばれた執事風の男が、スレイドさんを見て舌なめずりをした。
「メフィストフェレス。お前はあの童と戯れてやれ」
「童……? ん、ああ海王のことですか。了解しました。ボクに任せてください」
メフィストフェレスと呼ばれた悪魔は、海王と呼ばれた小さな女の子を見ながら、手をポンとして言った。
海王……海王。
これも、兄貴から名前だけは聞いたことがある。
確か、ムルって名前だった気がするが……。
「そして……フム、そうだな。おい、フラウロス。起きろ!」
そう言いながらルシファーは、後ろの方で倒れていたフラウロスという悪魔を無理矢理起こした。
その時、フラウロスの身体が光に包まれていたので、恐らくあれは回復魔法か何かだろう、と俺は推察した。
でなければ、あんなに勢いよく飛び上がるなんて無理だろうからな。
「うぉぉおっ!? お、俺は一体何を!?」
「フラウロス。お前はあそこの竜騎士を倒せ」
「へっ? 竜騎士……? えー……っと、あ、ぁぁ! なるほど! 了解しました、ルシファー様!」
一瞬にして状況を理解したと思われるフラウロスが、すぐさまルシファーと竜騎士と呼ばれた男を見て、一礼した。
「よし。そして最後だ。ルシファルナよ、お前はあそこの暗殺者の娘と遊んでこい」
「暗殺者……ル……イン……様……?」
「ああ、それだ。それを倒してこい」
「か……しこまり……ま……した」
壊れかけた機械のように、ルシファルナさんはルシファーの言葉に肯定の意を示した。
「さぁ、ベルゼブブよ。貴様は我とだ」
「ハッ、うまいこと対戦カードを組みやがって」
「でも、良いだろう? この方が分かりやすくて」
「ああ、こちらとしてもありがたい限りだ」
「フハハ……感謝される筋合いなどない。このあと、貴様ら全員、我ら堕天軍の手によって殺される運命なのだからな!」
両手を広げて、そう、煽りにも取れる言葉を言い放った。
「―――さあ、それでは再び始めようか。混沌とした、新たな聖戦をッ!!!」
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