case.6 絶望の足音
集まりだします……
「アハハハハハッ! 面白いですねぇ……。ですが、そろそろ時間のようですね」
「……時間……?」
フルーレティは自らの服についた汚れををはたきながら、そう言う。
ムルはその隙に周囲の様子を確認する。
ルシファーとベルゼブブ・ラグエルは未だ交戦状態。互いに戦闘は均衡していた。
さらにその隣にはメフィストフェレスが空中に浮いてムルたちの戦いを見ている。
目の前にはフルーレティが。
その後ろには気絶したフラウロスが。
戦闘開始時と、光景はほぼ変わっていない。
なら、一体何が“時間”なのか。
ムルは不思議に思ったが、その答えは直後に明らかになった。
「ルシファー様の側近として働けるのはとても光栄なことで、私としてもその立ち位置につけるものならつきたいですが……」
「ボクも、少しは気になるかな」
フルーレティの言葉に合わせてメフィストフェレスもやって来た。
「まあ、でも。そろそろ“時間”ですから」
「うん。ちょうど“時間”だね」
二人は“時間”を気にしながら、互いに目を合わせて、頷いていた。
「だからさっきから何よっ! その時間って!」
ムルは置いてけぼりにされてる気がして、つい怒鳴る。
「じきに分かりますよ。それもすぐね」
「え……?」
そう言いながらフルーレティは、メフィストフェレスに目配せをした。
メフィストフェレスは一つ頷き、ベルゼブブと絶賛戦闘中のルシファーのもとへ行き、耳打ちをしていた。
「―――ああ、そうか。もうそんなに経っていたのか」
「はい。もうすぐ刻限となります」
「ではゲートを開く。準備をしろ」
「ハッ」
ルシファーの指示を受けたメフィストフェレスは、すぐさま行動を開始する。
そして、ルシファーは言った。
「すまないな、ベルゼブブ。どうやらもう時間みたいだ」
「何の……だ?」
「フッ、分からないのか?」
「ああ、分からないから教えてくれると助かるのだが」
「クク……良いだろう」
ルシファーは笑いながら、人差し指を天に掲げ、そして言った。
「―――1時間。これが何を意味するか分かるか?」
「1時間……?」
「忘れたか。なら思い出させてやろう」
疑問を浮かべるベルゼブブに、ルシファーは答えないままメフィストフェレスのもとへ移動した。
それに合わせ、ベルゼブブとラグエルもムルのもとへやって来る。
「お二人とも!」
「海王よ、良くやってくれた」
「いえ……それよりも」
「ああ、そうだな。今は奴が気になるな」
ルシファーとメフィストフェレスとフルーレティの3人が、横1列に並んだ。
そしてルシファーが一歩前に出ながら、再び天に人差し指を掲げながら言った。
「―――我が愚弟子、ルシファルナを此処へ呼ぶ。もう、1時間経ったのでな」
その言葉を聞いたとき、ベルゼブブは驚愕する。
「……ッ、そうか。もう、そんな時間だったか……!」
「ベル、さっき彼らはゲートって言ってたけど……まさかッ!」
ラグエルが何かに気づいたようで、それを見たルシファーが「フハハ」と笑った。
「今頃気づいたところで、もう遅いさ」
「マズイわ……このままじゃルシファルナが……!」
ラグエルがルシファーを止めようと動き出したが、それはルシファーの言葉通り“遅かった”。
「無駄だ。そこで大人しく見ているがいい」
「―――ック!」
魔力の線で手足を縛られてしまったラグエル。
そんな彼女をベルゼブブが助けている。
「ラグエル様……ルシファーは一体何を……?」
ムルは、気になったことを率直に聞いてみた。
“ゲート”……という単語が何を意味するのかが分からない。
「そうね、時間も無さそうだし軽く説明するわよ?」
「はい」
「“ゲート”っていうのは、“従者召喚魔法陣”のこと。つまり、さっきルシファーがあの三悪魔を召喚したのもそれってことね」
そうラグエルが説明している間も、ルシファーたちは何かをしていた。
ラグエルはそれを見て、さらに補足をする。
「ルシファーの従者には、ルシファルナは勿論、元冥府の王エレボスや伝説の死神アルカナや龍王、他にも堕天使バラキエルなどが居てね」
そんな、規模の大きい人物の名前が並べられていく中、ルシファーが言った。
「貴様ら、そろそろお喋りは終いにしろ。準備は全て整った」
見ると、ルシファーたちの背後には6つの魔法陣が展開されていた。
「これは……いよいよもってマズイわね」
「ああ、止めるなら……今しかないだろうな」
「マジですか……」
6つの魔法陣と、ルシファーたち3人を見ながらムルたちは溜め息をついた。
もしその魔法陣から一人ずつ現れた場合、倒れているフラウロスも合わせて合計10人。
対してムルたちは、レヴィーナを合わせても4人。
数から見ても明らかに絶望的なのは分かる。
しかし、今はまだ夕方。
助けがくる……つまり他の魔王軍のメンバーが帰還してくる確率も低い。
それがさらに絶望を煽る。
しかして時は待ってはくれない。
「フハハ! もう遅いわッ!」
ルシファーがそう叫ぶ。
そして魔法陣の輝きは増していく。
「―――さあ来るがいいッ!!! 我が下僕たちよッ!!!!」
この一言が、ムルたちの絶望の始まりであった。
■
《魔界/ルシファルナ視点》
「フッ、アルカナ。そろそろヤツを捕えろ」
「分かってるけど……コイツ、逃げるのだけはうまいのよッ!」
私はさっきから、とにかく逃げ回っていた。
アルカナとエレボスに追われまくって、それからとにかく逃げまくっていた。
途中、何度も死にかけたが、まあなんとかなったので良しとしよう。
「何処よ……早く死になさいよ……!」
「まあ落ち着けアルカナ。絶対にヤツは我らの手に落ちるのだから」
「ふ、ふん。まあそうね。あの方がいらっしゃれば、まあ確実でしょうね。と、いうかそろそろじゃないの?」
「ん? ああ、もうそんなに時間が経っていたか」
「ええ、私が呼ばれてからもう1時間以上経つわね」
そろそろ……?1時間……?
一体、何の話だ……?
「では我らも準備をするか。あまり気乗りはしないが、致し方無い」
「その必要は無いみたいよ」
「と、いうことは」
「ええ、来るみたい」
準備……?来る……?
さっきから、一体何の話なんだ……?
気になります……が、今はとにかく逃げることに集中しなけれ―――ばッ……!?!?
「―――ガ……ハッ!」
何ですか……コレはッ―――!
「あら、そんなところに居たのね。でももうかくれんぼもお終い。今からあの方のもとへ行くのよ」
「あの……方……!?」
「ええ、堕天使ルシファー様。貴方もよく知る人物ですよ!」
ルシファルナは、突如魔法陣に捕らえられていた。
そしてそれを見つけたエレボスとアルカナはニヤケながら言ってきた。
「―――さあ、転移の時よ」
「―――死と洗脳に備えよ」
アルカナとエレボスがそう言うと、3人の背後にある魔法陣の輝きは増していく。
それと同時に、私の意識も薄れていく。
……クッ……ここまで、なのですか……ね……。
■
《森ノ大国/レヴィーナ視点》
「も、もうそろそろ止めたほうが……」
「ハァッ……ハアッ……」
あれから1時間くらいだろうか。
ずっとリガルテで遊んでいた。
正直、楽しい。
とてもいいストレス発散になるのだ。
だが、確かにそろそろ疲れてきた。
だから、もうそろそろやめて話を聞こうと思うのだけど……
「父さん……こんな姿になって……」
血まみれで、何とか体の形を維持している状態のリガルテ。
さすがに少し冷静になってくると、かわいそうに思えてきた。
が、まあこのくらいの罰は受けて当然だろう。
しょうもない嘘をついてたんだから。
「まあでも、子供がいるんじゃねぇ……」
と、リガーテくんを見ながら呟いた。
さすがに回復してあげようかしら。
なーんて思って、回復魔法を使おうとした、その時だった。
『ル……シファ……サマ』
突然、リガルテが喋ったのだ。
さらに、それが聞こえたその直後の事だった。
『アァ……時間……時間ガ……』
突然リガルテの上に、魔法陣が現れたのだ。
魔法陣の輝きは次第に強くなっていく。
「なに……何なの……!?」
「わ、分かりませんッ!」
リガーテくんも戸惑っていて、何をしていいかわからずまごついていた。
「クッ……とにかく助けを―――」
そこまで言いかけた時、リガルテは魔法陣の光に包まれて消えてしまった。
「父さん……!」
「クッ……何だか非常に嫌な予感がするのだけれど……」
何とも言えない悪寒が背筋を凍らせる。
この感じは、きっとよくない。
それは、“ルシファー”という言葉がそう思わせているのだろう。
《七つの大罪》最強のルシファー……。
もし、それが今回の敵なら……
そう考えただけで背筋がゾッと凍るのだ。
しかし、このままリガーテくんやリガルテをほっとく訳にはいけないので仕方なく救出に向かうことにした。
「全く……あんな魔王の側についただけで、こんなに厄介なことになるなんて想像もしてなかったっつの……!」
口を開けば魔王への怒りが募るばかり。
しかし、文句を吐いている時間はない。
私は、そう焦るように魔王城へ帰還するべく転移魔法を使うのであった。
次回から怒涛の展開!
明日16時更新予定!
ブクマや評価をしていただけると、飛んで喜びます!
モチベもあがる!のでぜひ!




