case.3-2 世紀末
※レヴィーナ視点だす
『GRYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』
龍は、耳を劈くような咆哮をしている。
そして、それと同時にその開かれた大きな口からは、火炎放射がされていた。
家屋に火が灯り、木造建築の家はその火の手の勢いを増していく。
さらに、火の粉が周りの家屋にも燃え移り、連鎖反応を起こすように村が焼かれていく。
地面が、家が、そして家畜が。
何もかもが焼き尽くされていく。
私はその光景と、それを引き起こしている張本人……いや、張本“龍”を見ながら唇を噛み締めた。
―――私がもっと早く着いていれば。
いいや。
早く着いていなくても、この火を消せるほどの魔法が使えれば良かったのに。
生憎私は水属性の魔法を得意としていない。
先程放った、焼け石に水程度の技が限界だ。
こういう時に、自分の非力さが悔やまれる。
しかし、そうこう悔やんでいる場合ではない。
過ぎてしまったことは過ぎてしまったこと。
失ったものはもう取り戻せない。
だからこそ、これ以上失わせない。
そのために、今私がここに居るのだ。
村の人たちは全員守る。
そして魔王の国へと連れて帰る!
「その為には、貴方には消えて貰うわよッ!」
私は目の前で暴れる白き龍に宣言した。
大丈夫、龍なら何度か殺したことがある。
サイズ感はかなり大きいし、白き龍なんて滅多に見ない希少種だけど、多分大丈夫。
それにしても。
なんでよりによって“あの人”と同じ色の龍なのかしら。
不思議だ。
って、そんなこと考えている場合じゃないわね。
「それじゃあ早速ッ! ―――“矢弾”ッ!」
前方、白龍に向かって弾丸のように矢を撃ちつける。
そしてさらに、それと同時にも一つの技も放った。
「“矢雨”ッ!!!」
弾丸のように撃ちつける矢と、空から雨のように降り注ぐ矢が白龍に襲いかかる。
だが、こんなの弓術の初級技だ。
どうせ防がれる。
だから私は、さらにもう一つの技を放つ。
「ッフ。―――“絶矢一閃”」
先程までの魔力の矢とは違う、実矢を取り出し、それに最大限の魔力を込めて、さらにそこへ加速魔法を加えて撃ち放つ。
最後の一矢は、“矢弾”と“矢雨”の影に紛れて白龍へと確かに襲いかかる。
さあ、これをどう切り抜けるのか見物だ。
『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』
白龍はその両翼を羽ばたき、風を巻き起こすことで矢を打ち落としていた。
前方の矢は全て落とされてしまう。
しかし、空から降り注ぐ矢は対処出来ていなかった。
『GYAAA!!!!!』
矢雨は、白龍の背中を、羽を傷つけた。
さらに、遅れてやってきた一閃の矢が白龍を穿った。
『GRYUUUUUUUU!!!!!』
その矢は白龍の右眼に突き刺さった。
眼からは涙のように血が溢れ出てきている。
「ハッ、こんなの楽勝じゃない。レベル差があり過ぎるわ。こんなの所詮は見た目だけね」
このまま押し切れば、私の勝ちね。
たった一撃で壊れるようじゃ、私の相手は務まらな―――
『―――ガァァァァァッ! レヴィーナァァッ!レヴィーナァァァァァァァッ!』
……ッ!?
私の名前を、叫んでいる……?!
何、何なの一体……。
あの白龍は、何者なの……!?
私の知り合いに、あんな龍は……龍は……あ。
え?
いやいや、まさか。
知り合い、というか……よく見知った人物にこんな綺麗な白色の龍になれる人なら一人知っているけど……まさか。
「―――リガルテ……?」
「ハァッ……ハァッ……! レヴィーナさん……ッ!」
かつての夫の名前を呼んだときだった。
ガサガサと奥の草むらから、一人の騎士が現れた。
誰。
私は彼を知らない。
なのに彼は私を知っている。
もう何が何だか分からなくなってきたわ……。
頭が痛い。
一度に処理できる情報量じゃないわ、これ。
クソ……私の冷静沈着でクールで美人なイメージが……!
「貴方は、誰なの?」
「僕は……リガーテ。そこで暴れている父、リガルテと、貴女との間に生まれた息子です―――」
えっ?
ん?
は?
「ちょっと待ってね、整理するわ」
「は、はい……?」
待ってね。
今、彼はなんと言ったのか。
リガルテと私との間に生まれた息子……?
いやいやいや、リガルテとは結婚はしたものの、行為に及んではいない。
だから子供なんているはずがない。
そしてそれだけじゃない。
やっぱりあの暴れている白龍は、リガルテだった。
全く、迷惑ばかりかける問題児なのは昔から変わってないわね。
「リガーテ、と言ったかしら。ごめんなさいね」
「は……? 何がでしょうか」
「詳しいことはちゃぁんと後で説明するから、今は協力して?」
「な、何にでしょうか」
「そりゃ貴方。―――ヤツを半殺しにするのの、でしょうが」
殺意が、高まる。
ニヤケが止まらない。
いいわ、ホラ吹きの糞竜王様にはお似合いの姿になるまで甚振ってあげるわ。
「父さんを……?」
「いいから手伝いなさいな。事情を聞けば、貴方も納得するでしょうから」
「は、はあ。分かりました……」
渋々了承を出してくれたリガーテくん。
小さく、「良いのかな?」なんて言ってるけど……良いのよ。
むしろ日頃の恨みをぶつけてやりなさい。
アハ、アハハハ。
イヒヒヒヒヒ。
さあ、愉しくなりそうだわ。
「もっともっと踊らせてあげるわ―――」
これが絶望の始まり、その一言目である。
■
そこからは、自分でも分かるくらい狂気的で、惨く、残酷なそんな感じだった。
「―――“矢弾”ォォッ!」
ダダン。
「ヒャッハァァァァッ! “矢弾”ォォォォォッ!!!!」
ダダダン。
「オラオラオラオラァァァァッ! “矢弾”!!!!!」
ダダダダダダダダダタダン。
世紀末な叫びと、弾丸のような矢が白龍を襲う。
なんか、楽しくなってきたわ。
あぁ、ストレス発散にちょうどいい的ね!!
「ホラホラどうしたのよッ! 反撃してみなさいよォォッ!」
さらに“矢弾”を撃ち放つ。
数で勝負してる、反撃の隙を与えないように。
『―――ァ。―――ァ。―――ウッ』
「え、死んだ?」
「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャァァァァァッ! 愉快愉快ッ! 愉悦愉悦ゥゥゥ!」
次々と“矢弾”を放つ。
ああこれ本当にいいわぁ……。
溜まっていたストレスが消えていくわぁ……。
「待ってください!待ってください! 父さんはもう!」
「煩いわよォォォッ! 私は誰にも止められないわァァァッ!」
「えぇぇぇぇぇっ!」
もう、誰にも止められない。
私は、世紀末の覇者となるのだから!
「誰かこの人を止めてぇぇぇぇぇぇぇっ!」
『―――ガウ……』
世紀末な妖精レヴィーナと、もうほぼ死んでいるリガルテ、そしてそれを止めようとしているリガーテ。
そんな、混沌とした状況が、《森ノ大国》の一角……小さな燃えた村で起こっていたのだった。
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