case.1 原初の堕天使
新章!
《魔王捜索1日目》
「さぁて、皆行ったわね」
「ええ」
ルナ城に残った私たちは、軽く会話をする。
私はレヴィーナ。
《魔帝八皇》の弓使い、【嫉妬】を司る大悪魔レヴィアタンの子孫にして、《魔帝八皇》随一の知識者よ。
今私たちは、消えた魔王ルミナスを捜索する為に、魔王軍メンバーで二人ずつペアを組んで、各々思うところを調べてみる、っていう作戦を実行している最中。
私は、同じく《魔帝八皇》のメンバーの一人である、言霊師のルシファルナと一緒にペアを組んで、魔王を捜索中……なのだけれど。
私たちはまだ、この魔王の城を離れていない。
理由は簡単。
―――探す宛が無い。
ルシファルナは、あまり魔王と行動してなかったみたいだし、私なんかは特にだ。
そんな私たちは、行き場が無くて、皆を見送った今も、こうしてここに居座っているのだ。
「我々は、どうしましょうか」
「そうねぇ……」
私は思うのだ。
どうせ、魔王はあの側近の子が見つけるだろう、と。
それに可愛いお弟子ちゃんが二人も居るのだ。
あのグループが絶対に魔王を見つけると思う。
だから、私たちは魔王を探す必要が無い。
彼女たちを信じているから。
「私はね、カッコよくなりたいのよ」
「というと?」
「そうね……例えば皆が帰ってくるまでの間に、この国を発展させておくとか、そういう感じの」
「ああ、なるほど。カッコよくなりたい、というのは、つまるところ活躍したいってことですね」
「そう、そんな感じよ!」
魔王を見つけられないのであれば、別のことで活躍して、皆に認めてもらいたいのだ。
あの魔王にとって私の印象は、「適当なやつ」になってしまっているから、それをどうにかして払拭したい。
「と、いう訳で。思いつきで言ったけど、さっきの発展させるっていうのはどうよ」
「ふむ……」
ルシファルナは考える。
私も主様に活躍したところを自慢したい。
本来であれば、ここに存在すらしていない筈の私を、仲間と呼んでくれた、彼の力になりたい。
だから、彼の驚くであろうことをするというレヴィーナの意見には大いに賛成だ。
しかし、冷静になって考えてみたら。
我々二人で出来ることというのは、限りなく少ない。
「我々に、何が出来るでしょうか」
「そうねぇ……例えば、建物はあるのに、人が居ないでしょ? だから、魔界とか、どっかの国から人を移住させるとかさ」
「なるほど……いい考えですね。それなら、今日の夜までに出来そうです」
はい来たわ。
私ってやっぱり天才なのかしら。
思いつきで適当に言ったけど、それは内緒よ。
「それじゃあ、早速行動しましょうか」
「了解しました。それでは……まずは魔界ですかね……?」
魔界に住む魔族の全人口は、約1万人。
それに対し、現在の段階で、この国が人を受け入れられる数は大体約10万人。
余裕すぎるくらいのキャパシティがこの国にはあるのだ。
「あ」
私思いついちゃったかも。
やっぱり私って天才……♪
「? どうかしましたか?」
「えっとね、魔界はアンタに任せてもいいかしら?」
「……え? 別に構いませんが……その理由は何なのですか?」
「私は、《森ノ大国》から連れてこようと思うわ。知り合いが居る村があるのよ。多分一時間もかからないと思うわ」
「ああ、なるほど。了解しました。それでは、一時間程度で全ての行程を完了させる形で」
「オッケー!」
そうして、あっさりと決まった私たちのやる事を実行するべく、私たちはそれぞれの目的地へと転移していくのだった。
■
《二人が転移した後のルナ城にて》
「フン、行ったか」
ベルゼブブは、《魔帝八皇》のレヴィーナとルシファルナが転移していくのを、城の窓から眺めていた。
「さーて……私たちが一番暇みたいねぇ……」
「うむ。だが仕方ないだろう」
「何か面白いこと起きないかしら」
ラグエルは、暇そうに髪の毛を弄りながらそう言った。
「別に話すこともないしねぇ……」
「うむ」
「誰か襲撃してきたりしないかしら」
「うむ」
「はぁ…つまらないわぁ……。アナタ、何か面白いことしなさいよ」
「うむ……?」
ベルゼブブは眉間にシワを寄せた。
彼は何かに気づいた様子だった。
「ほう。ラグエル、お前の望み通り客人が来たようだぞ」
「あら? 本当に?」
しかし、ラグエルは気づいていなかった。
不思議そうに辺りを見回すが、ラグエルにその客人は見当たらない。
「何処にいるのよ、そのお客さん」
「―――下だ」
ベルゼブブがそう言った直後だった。
―――ダァンッ!
という何かが崩れるような音が聞こえた。
「あら、タイミングがいいわね。まるで私たちが二人になるのを狙ってたみたいな、ね」
ラグエルは窓を開きながら、丁度眼前で起こっていた壁の崩壊を眺めていた。
人影は二つ。
一つは、小さな幼女。
もう一つは、黒き羽を6枚展開した漆黒の天使だった。
「―――ほう、奴か。面白い」
「まさかのお客さんね」
彼らには見覚えのある人物過ぎた。
それくらい、後者の黒き天使は見覚えがあるものだった。
「―――久しいな、ベルゼブブ。それにラグエルも」
黒き天使は二人に声をかける。
さらに続けて、
「早速だか要件を言おう。ルシファルナを引き渡せ。拒否すればこの者の命は無いぞ」
そう言いながら、黒き天使は自らが吹き飛ばしたと思われる青き幼女の頭を掴んで見せた。
シンプルな取り引きだった。
《魔帝八皇》のルシファルナを要求する、そんな事をする人物は、自然と限られてくる。
それに、そんな特定をしなくても、ベルゼブブたちには彼の顔を見ただけで、それが誰なのか理解できるから。
そう、その黒き天使の名は―――
「―――ルシファー……」
堕天使ルシファー。
それは、堕天使の中でも最も有名な存在であり、伝説や神話にも名前を連ねるほどの有名人であった。
かく言うベルゼブブも、過去に彼に脅されて、共に地獄へと堕天した経験がある。
共に堕天し、共に《七つの大罪》へと成り上がった。
そんな輝かしい過去もあったなと、ベルゼブブは思う。
「奴は……ルシファルナはもう居ないぞ。先程転移で何処かへ行ったばかりだ」
ベルゼブブは正直に答えた。
別に嘘をつく必要はない。
と、いうかルシファーに嘘をつこう物なら、ベルゼブブとラグエル、それに彼が掴んでいる幼女など、ほんの一瞬で消し炭になってしまうからだ。
冷静に考えてみてほしい。
何故、ベルゼブブやサタンは《大罪の間》に隔離されていて、ルシファーは隔離されていないか。こうして今、彼らを襲っているのかを。
それは単純に、ルシファーが強いからだ。
ベルゼブブや、リーダーのサタンの数百倍も強いのだ。
原初の堕天使であり、かつて冥王エレボスを窮地に追い込んだという話もあるくらい、ルシファーは強いのだ。
だから、嘘はつかない。
「嘘はついていなさそうだな。ふむ、そうか」
「あぐっ……!」
ルシファーは、手の中の幼女を落とした。
そして、そのままベルゼブブを見据える。
「なら、ルシファルナが帰ってくるまでの暇つぶしに、貴様を殺すとしようか」
「おいおい、冗談はやめてくれ。昔馴染だろ? ここは一つ、穏便に行こうじゃないか」
「いいや、駄目だ。このままでは、我までもがあの“支配の魔王”に呑まれてしまう。それだけは、断じて許してはならないのだ」
支配の魔王……ルミナスのことだ。
ルシファーは、魔王に怯えているのだろうか。
「魔王軍を壊滅させる。それが今の我の目的。見たところ、貴様も魔王軍の一員なのだろう? なら殺す理由には充分だろう?」
背筋が凍る感覚を、ベルゼブブだけでなくラグエルまでもが感じた。
そんな中、とある人物がルシファーに向かって声をあげた。
「―――もう許さないわよッ! 貴方は絶対にダーリンの支配下になってもらうわ!」
それは、先程までルシファーに蹂躙されていた、深海に住む幼女。
ボロボロの姿で立ち上がり、そしてルシファーをキッと睨んだ。
―――海王ムル。それが、恐れをしらない強者、或いは暇すぎて性格思考までもが幼児退行してしまった者の名前である。
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