case.1 突然
章の始まりは毎回絶望してる気がする
―――主様が居なくなった。
それが分かったのは《魔王会議》のあった翌日のこと。
昨日は、主様の様子が突然おかしくなったのに疑問を感じながらも、一日を普通に過ごしていた。
そして翌日。
目覚めた時に感じた違和感。
その正体はすぐに気がついた。
私たちは主様のスキルで『支配』されている。
そして、支配されているその感覚は、ずっと、主様と一本の線で繋がっているような感覚として内に残っていた。
しかし、その感覚が「プツリ」と途切れたのだ。
それに気づいたのは私だけではない。
主様は魔王軍に加入したメンバーには全員に『支配』をかけていた。
それは勿論、最近加入したレヴィーナ様や、勇者や巫女の皇様にもだ。
そんなレヴィーナ様や皇様までもが、気づいたのだ。
全員、眠っていた体を無理矢理起こした。
全員が焦ったような顔をしていた。
汗をダラダラと流した。
今までにこんなことがあっただろうか。
それほどまでに、私たちは焦っていた。
私たちは全員、静かに会議室へと集まった。
まず魔帝八皇のメンバー、サタール様・ベルゼリオ様・アスモフィ様・マノン様・レヴィーナ様・ルシファルナ様。
そして皇兄妹のお二人。
クサナギ様やレオン様。
ここまではいつもの面子だ。
だから私は何の違和感も感じなかったが、ここからがイレギュラーだった。
―――悪魔が3体。確かにそこに居るのだ。
彼ら曰く、自分たちは“七つの大罪”であるという。
初めて見たが、恐らく彼らが主様の中にいる方たちなのだろう。
どことなく、たまに出てくる主様の謎モードの時と雰囲気が似てる方がいるし。
それに合わせて、天使ラグエル様も居た。
ルナ城の会議室は、重鎮が集まっていた。
「それで―――」
私はそう切り出した。
まだ、場は静かだ。
「それで……」
言いながら、私は泣きそうになる。
なんで、どうして?
そういう感情が、胸の中を蠢く。
私の中の光は、もう無いのだ。
「はぁ……重いわね。空気が」
そう言ったのはラグエル様だ。
「仕方ないから、私が仕切らせてもらうわよ?」
「……お願いします」
私はうなだれて、そう答えた。
この会議を進行させるのは、彼女が一番の適役だろう。
まだ、主様との関係もそこまで深くはないからだ。
「さて、早速だけど……。十中八九原因は私にあるでしょうね」
全員、黙っていた。
ラグエル様の、次の言葉を待っていた。
「ちょっと脅しのつもりだったのだけれど……まさかあんなに絶望するとは思わなかったわ」
……ッ、何、それ。
「まあ、何にせよ手がかりがないんじゃ……ね」
「確かになァ……まさか七つの大罪まで置いていくとは思わなかったが」
私がラグエル様を睨んだのを気づいたのか、ラグエルは「落ち着いて」と視線で訴えながらそう言った。
さらに、その言葉にサタン様も同意した。
「一つだけ、一つだけ手がかりならある」
そう言ったのはベルゼブブ様だ。
「我の意識が、この三人の中だと最後まで残っていたことになるのだが……その最後の瞬間だった。意識が途切れる最後の瞬間だ。魔王はこう言っていた。『ディブリビアゼ』とな」
「ディブリビアゼ……小人族が治めている国か」
ベルゼリオ様が、少し補足した。
死国ディブリビアゼ……呪術の栄える狂気的な国だ。
その名前が出たということは……。
「あぁ、ディブリビアゼか!」
突然、マノン様が何かに気づいたようにそう言った。
「何か分かるのですか?」
「ああ、ディブリビアゼって言ったら……」
私の問いに、マノン様は答える。
「―――最後の魔帝八皇、【怠惰】のルヴェルフェが居るところじゃねぇか」
……ッ!
最後の、魔帝八皇。
「ってことは、ルミナス様はそれを一人で探しに行ったってこと?」
そう言うアスモフィ様の言葉に、サタール様が「いや……」と唸った。
「恐らくだが……それなら何も言わずに出ていくのはおかしい。ベルゼブブ様が聞いたっていう“ディブリビアゼ”の言葉も、もしかしたらフェイクかもしれないぜェ?」
「ああ、俺もそう思うぞ」
サタール様の言葉に、ベルゼリオ様も同意した。
「魔王は、ベルゼブブ様の意識があることは気づいていたはずだ。そして、その狙ったようなタイミングで“ディブリビアゼ”、と言い残した。そんなことをしてしまえば、我々が簡単に魔王を見つけ出せてしまうだろう?」
確かに……そうなることくらい想像はつく。
だったら、何も言わずに居なくなる必要は全くない。
と、なると……
「他に、理由があった……?」
「うーん……どうだか」
ラグエル様は、顔に難色を示していた。
「私たち《七つの美徳》に会うには、そのメンバーが冠する“徳”も最も近い波動を出す必要がある。だから、一人だとかなり厳しいと思うのよね……まあ、出来なくはないけれど」
その言葉に、ベルゼブブ様も続いた。
「我々《七つの大罪》に会うには、我々の“罪”を受け継いだ子孫に殺されないといけない……らしいな? つまり、確実に魔王一人では不可能なことだ」
つまり……だ。
ラグエル様が言った内の、《七つの大罪》と《七つの美徳》集めは可能性として、ほぼ無理だと言うこと。
逆にそれ以外は可能性があるということ……つまり、《天帝八聖》や《十二神将》には心当たりがあるのかもしれないのだ。
「……まあ、ともかくよ」
ラグエル様が言った。
「こんなところで話していても埒が明かないわ」
「そりゃァそうだわな」
「だから、手分けして魔王を探すのよ」
ラグエル様のその言葉に、私は少し思ったことを言う。
「あの、それだったらルナ城の警備が……」
手薄になってしまう。
と、いうか全員でいけば、この城は、この土地はもぬけの殻になってしまうのだ。
そこはどう考えているのだろう。
「……まあ、それは……そうね。だったら私が守るわ」
「一人で、ですか?」
「ええ―――」
「それなら我も残るぞ」
私の問いに答えたラグエル様の言葉を遮ったのは、ベルゼブブ様だ。
「ベルが?」
「ああ、せっかくだしな」
「アハッ……嬉しいわね」
どうやら聞くところによると、二人は元夫婦らしい。
なんとも微笑ましい光景ではないか。
《七つの美徳》のラグエル様と、《七つの大罪》のベルゼブブ様が守ってくれるなら、私も安心だ。
「分かりました。では、お二人にお任せしてもよろしいですか?」
「ええ、任せておきなさい」
ラグエル様が、グッとポーズをとってニッコリ笑う。
「それじゃあ、この城は私たちは元夫婦に任せて、アンタたちはさっさと魔王連れてきなさい?」
「はい! ありがとうございます!」
「さ、行った行った」とラグエル様は城の外まで転移してくれた。
「それでは……皆さん。夜になったら一度ここに帰還し、見つからなければまた翌日に捜索する……この繰り返しで行きましょう」
多分、それでいいはず。
こういう時……主様ならどうするかな……。
なんて考えてしまう自分が情けない。
自分の力で……主様に頼らないで問題解決出来るようにならなくちゃ……!
「一応、ペアでも組んだほうがいいんじゃねェか?」
そうサタール様が言った。
確かに……何かあった時に、対象するには二人以上居ないと厳しいかもしれないし……。
「分かりました。それではペアで、ということで……」
と、私が周囲を見回した時には既にペアが出来上がっていた。
なんともまあ、すごい団結力だ。
それほど、主様の存在が大切なものなのだと、改めて痛感する。
組み上がったのは、
・サタール、クサナギ ペア
・ベルゼリオ、レオン ペア
・アスモフィ、マノン ペア
・レヴィーナ、ルシファルナ ペア
・サタン、アスモデウス ペア
こんな感じだ。
つまり余ったのは、私と……
「あとは俺たちですね……三人で一組にしましょう!」
皇兄妹の兄の方、白夜様がそう提案する。
まあ、彼らは二人で一人のようなものだと主様に聞いていたから、問題はない筈。
私は「はい」と頷いた。
「―――それでは皆さん。主様捜索ミッション、開始です!」
「「「「おー!」」」」
私の掛け声に、皆は元気よく答えた。
私はその光景を見ながら、どこを探そうか……そう悩んでいた。
―――主様、待っていてください。必ず、見つけ出してみせます。
台風、お気をつけ下さい……
どうか▶いのちだいじに、ですよ……
次回更新は、月曜日です。
皆様の無事を心より祈っております




