case.8 暴食の罪を背負いし者の過去
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“大罪解放”……これは、俺の内に眠る大罪一体に俺の身体を貸し与える技。
いや、技と呼んでいいのか……?
まあいいか。
「どうしてもやらせて欲しい」、そう言って聞かなかったベルゼブブに、今回は俺の身体を貸すことにした。
そして、つい先程詠唱を済ませ、“大罪解放【暴食】”は完了した。
現在俺は意識だけになっている状態だ。
ベルゼブブが俺の身体の支配権を握っている訳だ。
まず見える範囲の変化から言おう。
と、思ったのだが……
『―――何……? 貴方、何をしたの……?』
ラグエルが、俺……じゃなくてベルゼブブを見てそう言った。
どうやら、俺がさっき言おうとした、俺の身体に現れた変化に驚いているようだな。
それもそのはず。
だって俺の身体には本当に面白い変化が現れていたのだから。
これは、サタンの時には起こらなかった現象……それすなわち、今回の“大罪解放”が完全に成功していることを証明していた。
『―――待って、待ってよ』
突然、焦ったようにラグエルは言った。
一体、どうしたというのか。
『そんな……嘘でしょ? だって……その姿はまるで……ッ!』
何かに気付いた様子で、とても焦っているラグエル。
そんな彼女に、ベルゼブブは言った。
「―――久しいな、ラグエル。5年ぶりくらいか」
……?やっぱり、この二人には面識があった……?
少なくとも、今のこの言葉からはそうとしか読み取れない。
『ッ……やっぱり、アナタなのね……? ねぇ、そうでしょう? ―――ベルゼブブ』
「ああ、そうだ。我だ、ベルゼブブだ。今は訳あって魔王の身体を借りているが、正真正銘、【暴食】のベルゼブブだ」
確定だ。これで二人は、面識があったことが分かったな。
まあ、さっきのセリフで大方予測は出来たが。
ベルゼブブがラグエルの問いに答えた、そのすぐ後だった。
『―――アハッ』
突然、ラグエルは笑ったのだ。
それも、口裂け女みたいに口角を大きく吊り上げて。
ニヤリとした表情のまま、彼女は続けてこう一言。
『―――久しぶりね……ア・ナ・タ♡』
「は?」
え……?
ベルゼブブと、俺の声がシンクロした瞬間だった。
今、この女は何を言ったんだ?
目をハートマークにさせながら、「ア・ナ・タ」だと?
そのアナタは、会話の流れ的に……“旦那”とかの意味を持つ「アナタ」だよな?
それはつまり、二人が夫婦であったことを証明する訳で……?
ん?
え……は?
俺は、辿り着いたその答えに戸惑いが隠しきれない。
「―――ろ」
『なぁに?♡』
「―――めろ」
『アハッ、相変わらず可愛いのね♡』
「止めてくれッ! もう止めろラグエルッ!」
ついにベルゼブブがキレたぞ。
久々にこんなに取り乱したベルゼブブを見たかもな。久々、というか初めてか?
『その一束だけ入った金色のメッシュに、周囲に纏う雷の気、悪魔特有の赤い瞳に背中から生えた黒い悪魔の翼……言い逃れできないくらいにベルゼブブよ、アナタ』
少しだけ冷静になったのか、ラグエルは俺の身体の特徴を言ってくれた。
そう、これが今の俺の姿なのだ。
いや、ベルゼブブの姿と言ったほうがいいか。
『―――まさに堕天使ね』
「その名で呼ぶな」
『いいじゃない? どうせ皆知ってるんでしょ?』
「やめろ」
『あら、その様子だとまだ話してないのかしら。てっきりもう話しているのだと……』
さっきから、何の話をしているんだ?
堕天使……って?
いや、その単語自体は知っているがな?
『じゃあ代わりに私が、アナタの代弁をしてあげるわ』
「やめ―――」
『―――“光輪拘束”』
「ウグッ……!」
ラグエルの口止めをしようと動いたベルゼブブは、ラグエルの光によって囚われてしまった。
手足を拘束されている状態だ。
『今から、この人の簡単な過去の話を聞かせてあげるわ』
「やめ……ッ!」
ベルゼブブはラグエルの言葉を遮ろうとするも、上手く動けずにそれは失敗してしまう。
そしてラグエルは言葉を続けた。
『ベルゼブブは……元天使なのよ。私と同じ、ね』
ベルゼブブが、天使……だと?
『かつて天界に居た頃は、“智将”なんて呼ばれて持て囃されてたっけ』
ああ、なんか想像できるな。その感じ……。
“智将”なのも納得だ。
『私はそんな彼に惚れて、そのまま流れるように結婚まで行けたのよ』
うん……ここまではハッピーエンドで終わりそうな話だが、このあとに何かあったのだろうな。
でなければベルゼブブがあそこまで怒るはずがないし。
『でもね、その後の事よ。ベルゼブブったらいくつも不正や悪事をしていたらしいのよ。実績の改ざんだったり、天使の子供を売り飛ばしたり、ね』
え……?
ベルゼブブが、そんな事を?
『でもね、私は知っていたのよ。それが私の為にやっていたことだって。当時大天使様だった“ルシファー”にベルゼブブは脅されていたみたいでね? それで詳しい話までは知らないけど、たまたまその現場を目撃したの、私』
大天使ルシファー……といえば、かの有名な堕天使ルシファーの堕ちる前の姿として人々の記憶に刻まれているだろうな。
それに、ルシファルナの始祖としても呼べるだろう。
『でもそれもそのあとすぐにバレて、二人は地獄行きになったわ。地獄に落ちた天使は、堕天使になるか、悪魔になるかの二択しかないの。そこで二人は堕天した、ってところまでが私の知っている情報ね』
そう言いながら、指をくるくるとしたラグエル。
すると、ベルゼブブを拘束していた光の輪は消え去った。
「全て、言ってしまったか」
『いいじゃない、別に減るもんじゃないし。そもそもなんでこんなことで怒っていたの?』
「我は、過去の話をされるのが一番嫌いなんだ。それはラグエル、お前もよく知っているだろう?」
『まあ……そうね。アナタは昔からそうよね』
あれ、すごいいい雰囲気じゃないか?
このまま戦わなくて済む状況にならないか???
『だーけーど、それとこれとは話は別よ?』
チッ……
俺は心の中で舌打ちをした。
『まさか、二つの意味で驚くことになるなんてね』
「我と貴様が邂逅した事と、」
『お互いに大罪と美徳になっていたこと、ね』
ああでも確かにな。
ベルゼブブが地獄送りにされて、そこからお互いがどうなったかは知らないんだもんな。
まさかそんな存在になっていて、知らない内に敵になってる……なんてことになってたらそりゃ驚くわな。
『まあ、そもそもこの戦いは八百万神が見てるから、私たち美徳も手を抜くことができないのよ、ごめんなさいね』
と、口では言っているのだが……。
そう言いながらラグエルは、目をパチパチさせて何かを伝えようとアイコンタクトをしているのだ。
俺は、それが伝えようとしている言葉が分からず頭が痛くなる。
しかし、そんな時にベルゼブブが俺に教えてくれた。
「『私を攫って』、だ」
分かるのか……?
しかも、“攫って”だと?
「大方、上のヤツらに見せつけないといけないんだろう? “私はちゃんとやってます”って。だが、本心では俺たちと行動したい……だから不可抗力で仕方なくという演出をすれば、上の者もラグエルを責めたりはしないだろうということだろう」
なるほど、ハヌマーンの時と同じ感じか。
▶フハハ、まったく一緒じゃないか。
ああ、そうだな。
ってか、ハヌマーン……今回はベルゼブブのサポートだ、頼むぞ。
▶了解した。まさか我が七つの大罪のサポートをする日がくるなんてな。
あ、あはは。
まあ昨日の敵は今日の友って言うしな、頑張ってくれ。
▶おうよ!
しっかし、ハヌマーンのヤツもだいぶ丸くなったよなぁ……。
初めて会ったときからは想像もできなんだ。
『はぁ、それじゃああんまり気乗りはしないけど、そろそろ始めましょうか?』
「良いだろう、盛大に元夫婦の喧嘩と洒落込もうじゃないか」
おっとっと、もう勝負が始まるみたいだな。
俺も少しだけ準備しておくか。
彼女を攫ってヘイトを稼ぐのは、どのみち俺になるんだから、だったら最善を尽くしたいしな。
七つの大罪の次は七つの美徳だ。
全員“支配”して、俺はとことん上を目指してやるぞ?
さあ、勝負開始だ。
これから火曜日は17:00更新に変わります!
まちがるんでねぇぞ!!(^q^)




