68,不審な行動をする刹那
Side晴信
そして、その日の部活での話。
「何!? お前がラブレターを!?」
「違う! ラヴレターだ!!」
「どうでもいいからな、呼び名なんて」
とりあえず俺はラヴレターのことをみんなに知らせてみた。
すると、あり得ないという反応が返ってきた。
……まぁ無理はないだろうな。
コイツらは生まれてこの年までラヴレターなんてもらったことなんてないんだろうしな……。
「ん? 僕はすでにもらったことあるけど?」
「……え? まさか大和……お前……」
……いや、恐らくそうだろうとは思ってたけども。
まさか本人からこんなにもあっさりと言われるとは思ってなかったから……少し心にひびが入ったぜ。
けど、まぁ瞬一はもらったことないって聞いてるし、さすがに他にももらってる奴なんて……。
あ、ちなみに今回は剣術部との合同練習ということで、組手をし終えた後の話な。
「私ももらったことあるよ」
「あ、ボクも!」
「……すみません、私もです」
「何ですって!? 私はまだもらったことがございませんのに……!!」
「何の張り合いをしてるんだよお前は……」
瞬一の言葉がきっかけで無駄な張り合いは終わったが。
今の言葉だけだと……大和・葵・織・月夜の四人がラヴレター受け取り経験ありだなんて!!
信じられない……この学園にはモテる奴らっていうのが揃ってるのか!?
「信じられない……アンタだけは絶対にないと思ってたのに……」
何故か刹那が悔しそうな目でこっちを見てくる。
へっ……そんな目で見るなよ。
俺が困っちまうぜ。
「……お前、顔がニヤけてるぞ」
「……気持ち悪いですわね」
「何だとこの野郎……!!」
刹那に引き続き、コイツは……!!
ていうか俺、後輩の女子に敵視される傾向があるんじゃね?
「晴信……とりあえず、その手紙の返事はどうするんだ?」
啓介からそう尋ねられる。
瞬間。
「!!」
何故か刹那の肩がビクッと震える。
……なんでだ?
「いやぁ、相手の顔が分からないから何とも言えないけど……よさそうなら告白を受け入れようかなって思ってよ」
「……そうか」
瞬一が何か満足そうな笑顔を見せる。
その笑顔を見て俺は、
「いつか強く願ってた。こんな幸せが来るってな」
と、極上の笑顔で言ってみせた。
……しかし、その時何故だか、刹那が悲しそうな目で、俺を見てきた。
「……どうしたんだよ、刹那」
「……何でもないわよ。私、ちょっとトイレに行ってくるわね」
そう言って、刹那は闘技場から一旦出て行ってしまった。
……何故だか悲しそうなオーラを見せて。
「あ~あ……刹那の気持ちに気付いてやれないからこんなことになっちまったんだよ」
「刹那の……気持ち?」
瞬一が何か知ってるような顔を見せ、俺にそう言ってくる。
刹那の気持ちって言われても……俺ってば刹那に攻撃されているだけだしな。
「晴信、本当に君は刹那の気持ちに気付いていないの?」
「え? 何の話なんだよ……」
「……つまり、植野刹那がお前に対してどんな想いを抱いているのか、ということだ」
大地がそんなことを言ってくる。
そう言われてもな……イマイチぴんとこないんだけどな。
「男は鈍感ってよく聞くけど、その通りなんだね」
「……鈍感なのは瞬一の方だろ?」
「お前もだ。それに、俺が言われる筋合いはねぇ」
織が言ってきた言葉に、瞬一も乗っかってくる。
……何なんだよ、鈍感って。
意味が分からねぇよ……。
そんな思いを抱えながら、俺は残りの部活の時間を過ごしたのだった。




