16,目的
翌日。
原因不明のアンジック病患者は、更に数を増していた。
もちろん、ここ雷山塚高等学校も例外ではなく、次々と倒れて行った。
「春香に続いて織や啓介まで……」
「その前には真理亜もアンジック病に倒れたし……一体これはどういうことなんだ?」
瞬一と大和が呟いた通り、織と啓介と真理亜もまた、アンジック病にかかって倒れていた。
「そういえば刹那達もかかっているらしい」
「どういうことなんだ……? こんなにも爆発的に増えてるんだ?」
先に述べた三人のほかにも、瞬一達の周りだけでも、優菜と刹那の二人もアンジック病に感染していた。
「なんなんだよ……アンジック病って一体、どんな病気なんだよ……!!」
晴信が叫ぶような形で言う。
悔しいのか、地面をダン! と思い切り蹴った。
「……おかしくないか?」
「え?」
その時。
大地が何かに気付く。
「何がおかしいの?」
大地に向かって葵が尋ねる。
すると大地は、
「倒れた奴らには……共通点がある」
「え?」
共通点といわれても、瞬一達にはそう簡単にそれが思い浮かぶわけがなかった。
それは瞬一達が劣っているのではなく……本当に些細な所にしか共通点がないのだから。
「その共通点が、今回の一連の事件をすべて結びつけるはずだ」
「一連の事件を結びつける……共通点」
瞬一達は、ただひたすら考える。
やがて月夜が、
「……みんな、科学魔術師」
「そう。啓介・神山・北条・植野姉妹……共通点は、全員が科学魔術師だということだ」
「……ん? 科学魔術師だというのなら、アイミーだってそうじゃないのか?」
「はい。ですが……私は特に異常とかありませんよ?」
まったくもってその通りで、実はアイミーの身体に異常がないのにも、理由があるのだが……それは今はまだ置いておく事にしよう。
「当然だろうな……王女はこの国の科学製品を使っていないのだからな」
「は、はい。確かに私は向こうからいくつか携帯を持ってきたので、この国の科学製品は使用してませんけど……それとなにか関係があるんですか?」
「あるなんて問題じゃない……むしろ今回の事件において、それだけがアンジック病にかからない唯一の回避方法となっている」
「唯一の……回避方法?」
理解で来ていない晴信。
大和は、大地の言葉を聞いてようやっと理解したようだ。
「そうか! この国の科学魔術師だから、彼らはアンジック病にかかったのか」
「……どういうことなんだ? 俺達にはさっぱりだ」
お手上げと言ったように、瞬一達が大和と大地に答えを求める。
そこで二人は、自分の考えを述べ始めた。
「これはあくまで僕達の独自の考えだ……だから必ずしも真実ってわけじゃないけど、いいかい?」
「もちろんだよ。是非聞かせて」
葵がそう言ったら、大和は笑った後で話をはじめた。
「そもそものことの始まりは……科学魔術製品工場襲撃事件からだった」
「そんな前から始まってたのか……?」
「うん。この科学製品工場を襲った原因としてあげられるのはたった一つ」
「それって……?」
晴信が尋ねると、今度は大地がこう言った。
それは恐らく、今回の事件において核心をつくような答えだった。
「答えは簡単だ……アンジック病を広げる為だ」




