6,三つ
「……荒れてるな」
「そうだね……これだけの惨状になる程暴れまわるとは……相手もなかなかやってくれたものだね」
中は結構荒れていた。
機械が壊れているような点は見受けられなかったが、製品は床に放り投げられたりしている。
地面には魔術による抵抗が行われた跡がくっきりと残されていた。
所々が焦げていて……その焦げは天井にも残されていた。
「これで後三日で復旧するって言うんだから……」
「さすがは『組織』というべきだろうか……」
これだけの惨状が繰り広げられているとしても、後三日で復旧作業が終了するらしい。
今は誰もいないが、大和と大地が出て行った後、恐らく再び作業を開始するのだろう。
「それにしても、どうして彼らはこの『組織』を襲ったりしたのだろうか?」
「その筋の人間なら、迷わずこの建物を避けるはずだよな。だとしたら、相手は『組織』のことを知らなかった?」
「その可能性もありえるね……いずれにしても、それはつまり『組織』を恐れないことを意味するから、相手としてはやりにくいよね」
今までの相手なら、『組織』という名前を出すと多少物怖じする傾向が見られた。
しかし、今回の相手はそうではない。
『組織』という名前を知らない可能性があるということは……つまりは『組織』がどのような場所であるのかということを相手に伝えなければ、恐怖に包まれてくれないということになる。
けれど、わざわざ敵に自分達について教えるようなところなんて聞いたこともない。
つまり、この方法は不可能ということになる。
「相手が僕達のことを知っていれば……まだやりやすいんだけどね」
もし相手が『組織』のことを知っていたとしたら、ある程度相手も躊躇してくれることだろう。
それによって生まれた隙をつけば、勝てる可能性も出てくる。
……それが狙えないとしたら、それは相手が『組織』の恐ろしさを知らなくて、なおかつある程度強い組織であることを意味する。
難攻不落の城は、相手の情報を持っていなくて、なおかつ力が強い組織のことを意味するのかもしれない。
「さすがに何か証拠みたいなものを残しているとかはないね……」
大和は地面を見つめながら、そう呟く。
と、その時だった。
「ん? ……これは、羽?」
「羽? 何でそんなものが?」
ふと、大和は地面に落ちていた羽を拾い上げようとする。
そして、大和は感じた。
「(……殺気?)」
ここには人気がないはずだ。
つまり、この建物の中には、大和と大地の二人以外は存在するはずがない。
いくらここが『組織』の建物だと言っても、さすがに今は別の場所に避難しているはずなのだから。
「……森谷、感じるかい?」
「……ああ。数にしておよそ三つだ」
「行けるか?」
「楽勝だ。三つなら俺達が組めば負けるはずのない数だ」
自信満々に言う大地。
自分達の力でなら……三人という数は少なすぎる。
大地は、そう感じていたのだろう。
大和も冷静を保つが、内心では同じようなことを考えていた。
「恐らくこの羽を拾い上げた瞬間が戦いの合図だと思うんだけど……森谷、準備はいいかい?」
「いつでもいいぜ……俺の方はな」
「それじゃあ……行くよ」
合図をして、大和は地面に落ちていた白い羽を拾い上げる。
同時に、物陰から何人かの人達が現れた。
その数……三人。
「予想通りだ!!」
大和と大地は、その三人を迎撃する為に、地面を蹴って自分達から三人に近付いて行った。




