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築城

 城というのはなにか。

 それは権威と力の象徴でもあり、防衛のための要でもある。

 そんな城だが、やはりいちばん重要になるのはいかに相手の攻撃を防ぐことができるかという防御力だろう。

 では、その防御力を上げるためにはどうするか。

 相手の攻撃をどのように防ぐかという城の形が問題になる。

 つまりは相手側の攻撃能力によって、求められる機能と形が変わる。

 それが城なのだ。


 どうやらこのあたりでは城壁のある城というのが一般的なようだ。

 魔法が存在するこの世界では鉄砲や大砲といった兵器のようなものがないからではないだろうか。

 あまり科学的な発展がなかったのかもしれない。

 確か、前世の記憶では大砲技術の発達によって城壁式のものは駆逐されたのだったと思う。

 城壁ごと大砲で崩されてしまうからだ。


 だが、ここらの魔法は先のフォンターナ軍との戦いで見たように、氷柱を飛ばすようなもので、城壁を崩すような規模のものではない……のだと思う。

 グルリと城壁で囲ってしまえば難攻不落の城を造ることも可能なのだろう。

 そこで、俺はグランに対して案を出した。

 どうせなら城壁の周りを堀にして水堀を作らないかと。


 せっかく川という水源が近くにあるのだ。

 これを防御力底上げのために使わない手はないだろう。

 対して、グランは城壁の改良と塔の建築を主張してくる。

 俺の【壁建築】という呪文で造ることができる壁は高さ10m、厚さ5mというなかなかの防御力があるのだが、もともとの目的が大猪の突進を防ぐためにあった。

 人間による軍の攻撃を防ぐためのものではないのだ。


 そのため、【壁建築】で造った壁の上部へと登れるようにし、そこから迎撃するために改良を施す。

 壁に登るための階段を随所に作り、魔法や矢から身を守るための盾となる壁を上部へと造る。

 さらに城壁の四方に塔を建てる。

 これは壁よりも更に高くして、より遠くを見通すことができるようにという意味らしい。


 というわけで、大雑把な完成イメージとしてはロの字型の城壁の四方にニョキッと突き出た塔がある城、いわゆる西洋風の城を造ることにした。

 さっそく、その作業へと取り掛かる。

 といっても、すでに川北の陣地として周囲の土地を【整地】を使って平らにならして、周りを【壁建築】で造った壁で囲っている。

 あくまでもこれをもとに改築していくことにした。


 まずは俺とグランで人を振り分けることにした。

 俺のもとに集まった300人全員に名付けを終えており、その中で【壁建築】が使えるものと使えないものに分ける。

 俺が【壁建築】を使える人を率いて、グラン側に使えないものを集めた。

 【壁建築】が使えないというのは魔力量が少ないからであるが、【レンガ生成】などの魔法は普通に使うことができる。

 グランはまず最初に自分の率いるメンバーにレンガづくりをさせ、そのレンガを用いて塔造りを始めるようだった。


 俺のほうは水堀造りだ。

 まずは俺が魔法で地面を掘っていく。

 これは俺にしかできない。

 なぜなら呪文化していないからだ。

 だが、大猪退治のときに何度も地面に大穴を開けていたため、慣れている。

 魔力回復薬を飲みながら陣地の周りをどんどんと掘り進めていった。


 俺が掘った地面だが、そのままそこに川から水を引いて流し込むのは怖い。

 もし水の流れで掘った地面が崩れたら城壁はその土台から崩壊してしまうことになるからだ。

 だから、俺は自分が魔法で掘ったあとの土を補強するように、俺が引き連れたメンバーに【壁建築】をやらせることにした。

 掘った穴の側面に向かって壁を設置していく。

 多分これならそこそこ丈夫な土台になるに違いない。

 こうして、陣地周りに深さ10mほどの水堀ができていく。


 一通り陣地の周りをぐるっと回るように堀を作った俺は、土台補強の作業を任せてグランの様子を見に行った。

 どうやらグランの方もかなり作業が進んでいる。

 人海戦術であっという間にレンガを作り終えたグランは、さらに塔の形となるようにそのレンガを積み上げていく。

 その積み上げる作業でも【身体強化】を使うものだから、まるで機械でも使っているのかと思うほど早く作業が進むのだ。

 驚くべきことに、ひとつの塔を作り上げるまでにかかった日数は3日ほどですんでしまうくらいの作業の速さだった。


「ふっふっふ。どうでござるか、アルス殿。この見事な塔を見るでござるよ」


「いいね。雰囲気出てるよ」


「雰囲気だけではござらんよ。きちんと役に立つのでござる。さあ、あと3つの塔も早速造っていくでござる」


「いや、その必要はない。もう覚えた」


「は? どういうことでござるか、アルス殿?」


 グランが造った見張り塔。

 塔の内部には螺旋階段があり、上に登るまでにいくつかのアーチ状の窓が空いている。

 基本的にはシンプルな構造のものだった。

 そして、俺は1つ目の塔が完成したとき、この塔へと自分の魔力を通してみたのだ。

 今までにも何度かやった、建造物に対して魔力を通し、その魔力を【記憶保存】という呪文を使ってインプットするという方法。

 ちょっとやってみようか、という思いつきのようなものだったが、これが成功したのだ。

 塔の構造を完璧に理解できる。

 そして、今までの経験からこれなら宿屋やマイホームのように魔法で一度に作れるのではないかという感触が得られたのだ。


 残りの塔建築予定地に足を運ぶ。

 魔力回復薬を飲んで自身の魔力を最大限まで回復させておく。

 そうして、その状態で魔力を練り上げ、その魔力をもって記憶した通りの塔の構造を再現していく。

 やはりか。

 どうやら俺の魔力量はまた少し上がっていたようだ。

 自身の魔力が塔を再現し終えた俺は、その魔力の形の通りにレンガ式の塔を作り上げた。


 一瞬で完成する高さ30mほどの塔。

 それがその日のうちに他の2ヶ所でも行われた。

 こうして、俺はフォンターナ軍との野戦が行われた数日後に、巨大な水掘に囲われた堅牢な城を作り上げることに成功したのだった。

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