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岩盤採掘

「地中深くにも油だまりがあるみたいですね。かなり量が多そうですよ」


「油だまり、か。それって、井戸みたいに縦穴を掘ってどのくらい油を回収できるんでしょうね。油全部を取り切るまで、井戸の釣瓶をカラカラと引き続けないといけないなら、川の工事はもう無理じゃないですか?」


「私もバルカ殿と同意見です。どうしてもここに川の水を流したいという強い理由が存在しないのであれば、新たな川の付け替え場所候補を探すほうがよほどいいと思います。まあ、魔力のこもった魔石さえあれば、縦穴を掘って井戸を作ることはできますが……」


 ラッセンが地面に手をついてあれこれと調べてくれた。

 やはり、役立つな。

 人力で縦穴なんて掘るのは本当に大変だけど、それを実際に掘らずに調べることができるのだ。

 アイが連れ出したのもよくわかる。


 そのラッセンによる報告によれば、新たな川のためとしてそれなりに掘っていた土地ににじみ出してきていた油は地中にはさらに大量にあるらしかった。

 それを全部取り切るのは難しいだろう。

 さすがに、計画を練り直す必要がありそうだ。

 アイには大変だろうけれど、また別の土地を見繕ってもらおう。


「ま、計画の変更はするだろうけど、一応縦穴は掘っておいてもらいましょうか。油が手に入るなら確保しておきたいですし。ここにある魔石の魔力だけでもそれができるのでしょう、ラッセン殿?」


「分かりました。なら、準備が少々必要ですね。とりあえず、皆さんは離れておいてください。ほかの作業員にもここから離れて安全を確保するように伝えてもらえますか? 火も消しておいたほうがいいでしょう。火気厳禁としておいてください」


「え? 井戸を掘るだけでしょう? そんな準備が必要なんですか?」


「万が一のためです。水用の井戸を掘るときにも意外と注意が必要なんですよ。一応、簡単に説明しておくと、この地面の下には油がありますが、それは岩盤によって守られているみたいなんです」


「岩盤?」


「はい。地面は地層によって固さがことなります。その中で、ここの地中にある岩盤は強く、そのさらに下で大量の油が押さえつけられているという感じでしょうか。井戸を掘って油を回収できるようにするならば、私の魔力で穴を掘り、岩盤にも穴を開けることになります。その際に、下からの油の圧力を押さえつけていた岩盤の圧に変化が生じることで、一気に油が地表に飛び出してくる可能性があるのです。ようするに、ものすごく大きな油の噴水が生じるかもしれないということです」


「うげ。近くにいたら油まみれになるかもってことですか。そりゃ危険ですね。分かりました。火気厳禁も徹底させるのも大事ですね。その辺はこちらから周知しておきますよ。っていうか、そんな状況で穴を掘るラッセン殿は大丈夫なんですか?」


「私ですか? ええ。穴を掘るのには魔力を使いますから、地面に魔力を通して離れた位置に穴が開くように魔術を発動すれば、油の噴水に巻き込まれる心配はないと思います」


「あ、なるほど。ある程度、遠隔でも穴掘りできるんですね。了解です。じゃ、準備までは時間がかかるでしょうし、ラッセン殿は体調を整えておいてください」


 どうやら、油を回収するために穴を掘るっていうのも大変みたいだな。

 噴水みたいに油が飛び出してくるっていうのは、なかなか想像もできない。

 どんだけ、その岩盤とやらに大量の油が抑えられているんだろうか。


 もしかしたら、俺と同じでここらにいる工事仕事の従事者たちも理解が追い付かない可能性もあるか。

 ラッセンがその後、アイに伝えた地面から飛び出した油の飛距離はかなり遠くまでだったので、本当にそんな遠くまで避難しなければならないのかと思う者もいるだろう。

 しょうがない。

 今日は穴掘りはせずに、作業員全員を退去させるようにしよう。

 それに、食事の用意や暖房のために火を使っている場所もあるし、きちんと全部消しておく必要もあるだろうな。


 こうして、油の井戸採掘のために数日ほど準備期間を設けた。

 油の影響があると思われる場所すべてを【整地】しておいて、そこに枯木一本落ちていないようにする。

 えらく見晴らしのいい土地ができてしまった。

 その広大な平地を俺や多くの作業員が見守る中、ラッセンが地面へと魔力を通して穴を掘っていく。

 遠目に見ていたら、平地の真ん中にぽかんとそれなりの大きさの穴が開いた。

 その後もラッセンが魔石の魔力を使いながらも魔術を使っているので、きっとどんどんあの穴は深くなっていっているはずだ。


「……岩盤まで到達しました。ここからは魔力を通して一気に岩盤を貫きます。念のために距離は余裕をもって離れていますが、万が一何かあった場合はバルカ殿やリード殿はすぐにお逃げください」


 ラッセンがそう警告してくる。

 本当にそんなに危ないのかと思いつつも、俺やアイはワルキューレに騎乗している。

 そのワルキューレもどこか落ち着きがないので、もしかして何かあるんだろうか?

 落ち着くようにワルキューレの首元を撫でながら、ラッセンに言う。


「分かりました。……お願いします、ラッセン殿」


「いきます」


 俺の言葉を受けてラッセンが岩盤へと穴を開ける。

 次の瞬間、地面が爆発した。

 天高くまで噴き出してきたのは油ではなく火柱と数多くの岩、そして土砂だ。

 多くの石や岩が空へと吹き飛び、そして地上へと降り注いできたのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] え〜、いきなり発火とは 聖火の誕生かな。
[良い点] 天然ガスに、引火したのね。
[気になる点] あれ、これトルクメニスタンの地獄の門みたいになったりして…
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