聞いてないんですけど……
なんで……なんでここにアキラ様がいるの!?
なんで私の名前を知ってるの!?
呼び間違い?
聞き間違い?
もしかして他人の空似?
幻覚でも見てる⁉︎
一旦深呼吸をして、もう一度目を凝らして見てみても——
「…………」
ご本人じゃん!
どこからどう見てもアキラ様じゃん!
ライブ終わりだからなのか、ほんのり滲む汗がセクシーなアキラ様。
ヤバい……格好いい。
心臓が止まりそう。
「あれ、今村さん?」
目の前に何かがチラついている。
アキラ様が私の目の前で手を振っているようだ。
だけど私は、この異常事態にすぐに反応することが出来ず、しばらく呆然としていた。
——これは夢?
だって……アキラ様だよ?
今……若者の間でカリスマ的人気を誇る『継ぐ音』のアキラ様が目の前にいるんだよ?
インディーズって聞いているけど、芸能人みたいなもんだよ?
さっきまでステージに居た人だよ?
何で……何で⁉︎
「今村さん、大丈夫?」
「だ……大丈夫です」
な……生アキラ様。
しゃがれ声が素敵っ!
いやいやいや、今はそんな事よりも、何でアキラ様が私の事を知っているかよっ!
もしかしてテレビのドッキリかも知れないし、恥をかく前にちゃんと確認しないと。
「……あ……アキラさん……どうして私の名前を」
「どうしてって……そりゃ、同じクラスだし」
「……へ」
お……同じクラス?
何それ……格闘技とかのヘビー級とか、ライト級とかそういう階級のこと⁉︎
「あ、あ、あ、アキラさん……同じクラスって、どう言う意味ですか?」
アキラ様が眉を八の字にして、何で? って顔をしている。
「今村さん、俺、浅井だよ? 浅井晃」
……えっ。
一瞬時間が止まったかと思った。
……浅井?
もし、アキラ様の言っている事が本当なら、色々と説明がつくけど——
「……今村さん?」
「…………」
「えぇ————————————————っ!」
私は声を上げて驚いた。
むしろ人生最大級に驚いた。
「……浅井って、あの浅井?」
「隣の席の浅井くんだよ」
「……浅井って、私の彼氏の……」
「彼氏《《役》》の浅井だよ」
「で……でも、髪型とか凄い格好良いし、ピアスとか開けちゃってるし、見た目とか、声とか全然違うじゃん!」
「見た目はほら……ライブだし、声はちょっと、今日張り切り過ぎて嗄れちゃったかな」
「ちょっ……ちょっと待って、浅井がアキラさんで、アキラさんが浅井……」
「今村さん、俺が『継ぐ音』のギターボーカルの浅井晃だよ」
——衝撃の告白だ。
浅井がアキラ様だったなんて……。
ていうか私……同じく男性に、2回も恋しちゃったってこと?
「今村さん、もし時間あるなら『継ぐ音』の打ち上げくる? そしたら、もっとゆっくり話せるし」
「め、め、め、滅相もない! 恐れ多いよ」
「恐れ多いって……」
「だって私、ファンだもん」
それに、これ以上情報が増えると頭がパンクしてしまう。
「嬉しいよ、ありがとね」
「い……いえ、どういたしまして」
「どうしちゃったの今村さん?」
「どうしちゃったも何も……まだ、混乱してるのよ」
「え……なんで」
「な、なんでって『継ぐ音』のアキラよ? ウチの学校でもファンの子めっちゃ多いんだよ? 女子高生の中では超有名人だよ? それがウチの学校で、同じクラスで……私と一番近い浅井だなんて……驚くなって方が無理よ!」
「そ、そうなんだ……知らなかったよ」
「私は『継ぐ音』のファンだって言ったし!」
「……そう、だったね」
……まあライブに行くほどとまでは話していなかったけど。
それよりも——
「何で教えてくれなかったの?」
「なんか、タイミング逃しちゃったし……わざわざそれだけ言うのも格好悪いし」
なるほど……それは確かにそうだ。
でも——衝撃が強すぎるよ!
*
この後も、色々と話した。
まず、見た目の違いは別に正体を隠している訳ではなく、本当に朝が弱くて髪をセットしていないだけとのことだった。
まあ、それは散々聞いているから信用に足る情報だ。
眼鏡はダテで、前髪が目に入るのを防いでいるだけだそうだ。
そして、昼間一緒に居た美人さんは『継ぐ音』のスタイリストさんだった。
腕を組んでいたのは浅井の逃亡防止の為とのことだ……つまり、完全に私の勘違いだった。
あの時、浅井の言葉に耳を傾けていれば、何も拗れなかった。人の話しはちゃんと聞かないとだめだって教訓だ。
そして私は、色々分かって安心したと同時に、新たな問題が発生した事に気付く。
私は今日、あの出来事があって浅井の事が好きだと気付いた。
自分から彼氏役になってくれとお願いをした手前、とても言い難いんだけど——今更ながら、この気持ちを告白しようと思っていた。
「…………」
だけど——この展開は想定していなかった。
『継ぐ音』のアキラ様だと知った途端に告白したら……あまりにもあからさまじゃん!
好きだった人と好きな人が同一人物だってのは、とても嬉しいけど——
告れねぇ————————っ!
何て頭を抱えていると。
「晃! こんなところに居たのか!」
「おや、彼女さんも一緒ですね」
「打ち上げ行くぞ! 打ち上げ!」
「彼女さんも、一緒に行きましょう」
「え、あっ……はい」
私たちは『継ぐ音』のメンバーに連行された。
あまりの怒涛の展開に理解が追いつかない私だった。
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