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クラス1地味な浅井くんに彼氏役をお願いしたけど……マジ惚れしたから付き合ってとか今更言えない  作者: 逢坂こひる


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8/9

聞いてないんですけど……

 なんで……なんでここにアキラ様がいるの!?

 なんで私の名前を知ってるの!?

 呼び間違い?

 聞き間違い?

 もしかして他人の空似?

 幻覚でも見てる⁉︎


 一旦深呼吸をして、もう一度目を凝らして見てみても——


「…………」


 ご本人じゃん! 

 どこからどう見てもアキラ様じゃん!


 ライブ終わりだからなのか、ほんのり滲む汗がセクシーなアキラ様。


 ヤバい……格好いい。

 心臓が止まりそう。


「あれ、今村さん?」


 目の前に何かがチラついている。

 アキラ様が私の目の前で手を振っているようだ。


 だけど私は、この異常事態にすぐに反応することが出来ず、しばらく呆然としていた。


 ——これは夢?


 だって……アキラ様だよ?

 今……若者の間でカリスマ的人気を誇る『継ぐ音』のアキラ様が目の前にいるんだよ?


 インディーズって聞いているけど、芸能人みたいなもんだよ?


 さっきまでステージに居た人だよ?


 何で……何で⁉︎

 

「今村さん、大丈夫?」

「だ……大丈夫です」


 な……生アキラ様。

 しゃがれ声が素敵っ!


 いやいやいや、今はそんな事よりも、何でアキラ様が私の事を知っているかよっ!


 もしかしてテレビのドッキリかも知れないし、恥をかく前にちゃんと確認しないと。


「……あ……アキラさん……どうして私の名前を」 

「どうしてって……そりゃ、同じクラスだし」

「……へ」


 お……同じクラス?

 何それ……格闘技とかのヘビー級とか、ライト級とかそういう階級のこと⁉︎


「あ、あ、あ、アキラさん……同じクラスって、どう言う意味ですか?」


 アキラ様が眉を八の字にして、何で? って顔をしている。


「今村さん、俺、浅井だよ? 浅井晃」


 ……えっ。








 一瞬時間が止まったかと思った。



 ……浅井?


 



 もし、アキラ様の言っている事が本当なら、色々と説明がつくけど——





「……今村さん?」

「…………」

「えぇ————————————————っ!」


 私は声を上げて驚いた。

 むしろ人生最大級に驚いた。


「……浅井って、あの浅井?」

「隣の席の浅井くんだよ」

「……浅井って、私の彼氏の……」

「彼氏《《役》》の浅井だよ」

「で……でも、髪型とか凄い格好良いし、ピアスとか開けちゃってるし、見た目とか、声とか全然違うじゃん!」

「見た目はほら……ライブだし、声はちょっと、今日張り切り過ぎてしゃがれちゃったかな」

「ちょっ……ちょっと待って、浅井がアキラさんで、アキラさんが浅井……」

「今村さん、俺が『継ぐ音(つぐね)』のギターボーカルの浅井晃だよ」


 ——衝撃の告白だ。


 浅井がアキラ様だったなんて……。


 ていうか私……同じく男性ひとに、2回も恋しちゃったってこと?


「今村さん、もし時間あるなら『継ぐ音』の打ち上げくる? そしたら、もっとゆっくり話せるし」

「め、め、め、滅相もない! 恐れ多いよ」

「恐れ多いって……」

「だって私、ファンだもん」 


 それに、これ以上情報が増えると頭がパンクしてしまう。


「嬉しいよ、ありがとね」

「い……いえ、どういたしまして」

「どうしちゃったの今村さん?」

「どうしちゃったも何も……まだ、混乱してるのよ」

「え……なんで」

「な、なんでって『継ぐ音』のアキラよ? ウチの学校でもファンの子めっちゃ多いんだよ? 女子高生の中では超有名人だよ? それがウチの学校で、同じクラスで……私と一番近い浅井だなんて……驚くなって方が無理よ!」

「そ、そうなんだ……知らなかったよ」

「私は『継ぐ音』のファンだって言ったし!」

「……そう、だったね」


 ……まあライブに行くほどとまでは話していなかったけど。


 それよりも——


「何で教えてくれなかったの?」

「なんか、タイミング逃しちゃったし……わざわざそれだけ言うのも格好悪いし」


 なるほど……それは確かにそうだ。

 でも——衝撃が強すぎるよ!



 *



 この後も、色々と話した。


 まず、見た目の違いは別に正体を隠している訳ではなく、本当に朝が弱くて髪をセットしていないだけとのことだった。

 まあ、それは散々聞いているから信用に足る情報だ。

 眼鏡はダテで、前髪が目に入るのを防いでいるだけだそうだ。


 そして、昼間一緒に居た美人さんは『継ぐ音』のスタイリストさんだった。


 腕を組んでいたのは浅井の逃亡防止の為とのことだ……つまり、完全に私の勘違いだった。


 あの時、浅井の言葉に耳を傾けていれば、何も拗れなかった。人の話しはちゃんと聞かないとだめだって教訓だ。


 そして私は、色々分かって安心したと同時に、新たな問題が発生した事に気付く。


 私は今日、あの出来事があって浅井の事が好きだと気付いた。

 自分から彼氏役になってくれとお願いをした手前、とても言い難いんだけど——今更ながら、この気持ちを告白しようと思っていた。


「…………」


 だけど——この展開は想定していなかった。


『継ぐ音』のアキラ様だと知った途端に告白したら……あまりにもあからさまじゃん!


 好きだった人と好きな人が同一人物だってのは、とても嬉しいけど——



 告れねぇ————————っ!



 何て頭を抱えていると。


「晃! こんなところに居たのか!」

「おや、彼女さんも一緒ですね」

「打ち上げ行くぞ! 打ち上げ!」

「彼女さんも、一緒に行きましょう」

「え、あっ……はい」


 私たちは『継ぐ音』のメンバーに連行された。


 あまりの怒涛の展開に理解が追いつかない私だった。


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