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48.鉄鉱石を探して(1)

 ニワ子を救出しなければ(十年ぶり二度目)。


 洪水以来、ニワ子の行方は杳として知れない。一番可能性があるのが海。なので、舟を作らなければ。しかし、下手な船だと海洋生物に沈められるので、金属製の丈夫な船にしよう。

 ならば、上部で加工しやすい鉄が必要だ、というところで話は止まっていた。

 ふーむ、鉄。鉄かあ。

 鉄ってどうやって得るんだ?



 順当に考えたら、鉄鉱石を溶かして鉄だけ抽出するのだろう。

 その鉄を、型に流して固めれば鋳造、熱して叩くことで成型するのが鍛造。今回は船の外壁に張り付けたいので、薄く伸ばした鉄を叩いて成型したいから……鍛造になるのかな?

 それ以外にも、釘やネジも作りたい。こっちは型さえ作れば大量生産が可能になる。特にネジが作れれば、かなり高度なものが組み立てられるようになる。

 となると、やっぱり鋳造、鍛造ともにやりたい。どっちも作れる設備が必要だ。


 設備といえば、鉄を溶かすための炉が必要になるはずだ。

 今の窯で鉄が溶かせればいいのだけど、火力にちょっと不安がある。鉄の融点は、千五百度くらいだっけ? 銅よりかなり高いはずだ。今の窯で無理なら、新しく作らないといけない。

 温度を上げるためには、効率的に燃焼させる必要がある。常に空気を送り続け、火を燃やし続けるのだ。たたら場の、あの足で踏むやつはそういう目的のためだよね?

 燃料の方も考える必要がある。効率を考えると、不純物のない純粋な炭素が欲しい。そうなると、薪だとちょっと力不足だ。石炭か木炭が欲しくなる。


 まとめると、必要なのは鉄鉱石、鉄の加工施設、新しい炉に、石炭または木炭。

 うーん、どれも一筋縄ではいかなそう。そもそも、一番大事な鉄鉱石がどんなものかわからん。女子大生に求められる知識じゃないんだよなあ。

 目星をつけて、とにかく石を集めるしかないかなあ。目安になるのは、金属光沢か、鉄錆かな? 他の石よりも光沢があったり、錆びっぽい色があれば回収してみるか。

 でも、確かめるためには溶かしてみるしかなくて、その設備も必要、と。

 やること多すぎて頭おかしくなりそう。


 とにかく、炉を作りながら遠征して、いろいろ探し回るしかなさそうだ。

 その間、ニワ子どうなってるんだろう……。

 鉄鉱石探しの間にポロッと見つかったりしないかなあ。



 〇



 ――――――――見つけた。

 探し回ること五年。ついに見つけた。



 稲の群生地だ。





 鉱物といえば川。表出した地表目当てに、川沿いをくまなく歩いたが見つからず、足を延ばして別の川を探していた時のことだった。

 この五年間。農閑期のたびに、延々川周辺の探索を続けていた私を、神は見捨てていなかったのだ。

 いや、見捨てられてたわ私。牛と喧嘩をしたばっかりに。

 あいつ、いつになったら戻るんだろう。


 まあそんな神はさておき、稲だ。海沿いの拠点からかなり足を延ばし、数時間歩いた先にある湿地帯。そこに稲が生えている。

 季節は晩秋。いまだ枯れず、首を垂れる稲穂の姿が神々しい。あまりの荘厳さに、私は思わず手を合わせてしまう。

 稲。米。わがソウルフード。これさえあれば、私の食生活は勝ったも同然だ。うひょー! たまらん!


 さっそく制圧。最近の私の戦い方は、完全にバイオテロに移行した。

 有り余る大豆で押し切るのだ。大豆の生えている道こそ、私が歩いてきた道である。というわけで、湿地帯にくまなく大豆を敷き詰める。来年の今ごろは、ここにも大豆が生えていることだろう。

 大豆による数の暴力に、稲はたまらず身をよじり出した。何事か、と言いたげに垂れた稲穂を震わせて、私に気がつくと、籾を飛ばしてきた。いて! いて! なんだこいつ!

 応戦して大豆を投げ返すと、稲はしおしおと倒れ込み、動かなくなった。他の稲も同様だ。私は慎重に湿地に足を踏み入れ、稲を手にする。その瞬間。

 倒れたと思った稲が起き上がり、私に向かって下から拳(稲穂)を突き上げる。

 ――こいつ、死んだふりを……!?

 私が近づいてくることを見越して、わざと倒れたふりをしたのだ。さすがは日本の主食。なかなかやる。

 ――だけど、所詮は浅知恵。

 死んだふりなど猿でもできる。数多の強敵と対峙してきた私の敵ではない。

 私はぐっと身を反らすと、稲の拳を寸前で避けた。そして、無防備に天に伸びた稲穂を鷲掴む。

 私の手の中で、稲はしばらくビチビチと暴れたが、ついにぴくりとも動かなくなった。

 完全勝利である。



 やったー! 米だー!!

 今日の遠征は終了! 家に帰って水田作らなきゃ!!


 作った!



 川から水を引き、田んぼの隣に水田を作る。水田に流れ込む用水路の入り口には、大豆のろ過機を設置しており、安全な大豆水が流れ込むようになっている。大豆が染みた水で育てることにより、稲を常に無害化させるという寸法だ。

 翌年。稲はすくすくと育った。私はその間、千歯こきを作ったり、唐箕とうみを作ったり、わくわくしながら待ち続けた。

 なんといっても米。ここ百年近くの主食のない生活からの脱却。米と酒さえあればいいとか言っていたけど、米があれば酒も作れるのだ。もう喜びしかない。

 夏の田んぼは青く染まり、秋の田んぼは黄金の稲穂が垂れる。

 もうじき収穫だ。

 わくわく。

 わくわくわくわく。

 もう待ちきれないよ!


 秋の半ば、私は稲を収穫した。

 千歯こきで籾を取り、唐箕で籾の選別をし、叩いて籾殻を取る。

 そして、取れた米に大豆を混ぜて、土器で炊き…………。


 醤油を垂らした熱々の肉と一緒に食べる!

 こんなん美味いに決まっているだろう!!

 いただきまーす!


 はふっはふはふっ!

 お……おお…………!

 これは……!!




 タイ米だった。

 鉄鉱石は、さっぱり見つからない。


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