第十話
紅蓮は連射を止め、銃を肩に担ぎながらこちらを向く。
「狼がいたからぶち殺してやったぜ」
えっ、狼!?
全然気づかなかったんだけど。
話に集中しすぎていたようだ。
一人ならわかっていただろう。
だがしかし。
一番喋っていたはずの紅蓮は、それをやってのけた。
「す、すげぇ……」
「だろ? お前みたいな甘ちゃんと違って、ウチは生まれてずっとここで生きてきたからな。……まあ要するに慣れだ」
「……」
マジですごい。
気づいてから銃を撃つまでの速度が俺とは段違いだ。
「おう、朧月。狼を運べるほどの力は残っているか? せっかく殺したことだし持って帰りたいんだが」
う〜ん。
かなり疲労感があって難しいかもしれない。
「ちょっと厳しいかも」
「おし、じゃあ持て」
そう言うと思った。
「……」
「川辺でお前が仕留めた場所からならともかく、ここからだったら余裕だろ?」
いや、そりゃーまあ、ちょっとは近くなったが。
それでもまだ結構歩かないといけないだろ。
川辺から徒歩40分って言ってなかったか?
けど基地に案内してもらうわけだし。
何もしないってのは確かに申し訳ないような気がする。
かなりしんどいだろうけど、頑張るか。
「わかった。任せてくれ」
「チッ、冗談だって。専用の道具もなしに死体を運べば服が血まみれになるし、普通そんなことさせるわけねぇだろ。常識で考えろ」
お前に常識はあるのか? と言いたいが。
俺のことを気遣ってくれているらしい。
「う、うん」
「……ちょっと惜しいがまあ仕方ねぇ。放置して帰るぞ。というわけでありす、お前が持て」
なんでだよ。
絶対そんな流れじゃなかっただろ。
「!? な……なんで?」
「冗談だっつってんだろ。……ったく。二人して冗談の通じねぇ奴らだな」
そう言い残して紅蓮は歩き出した。
ありすさんと俺はその後ろをついていく。
なんか……。
紅蓮と一緒にいると楽だけど疲れるな。
自分で何を言っているかよくわからないけど。
楽というか、話しやすいって感じ。
初対面で怖い印象だったはずなのに、妙に絡みやすい雰囲気がある。
もしかしてこの世界にきてから自分の性格が変わったのだろうか。
中学とか高校ではまともに異性と会話ができなかったタイプだが。
紅蓮とはびっくりするくらいスラスラ話せる。
これは俺が成長しているパターンかもしれない。
すぐに首を左右に振る。
いや、ないな。
もしそうだとしたら、目の前を歩いているありすさんとも話せるはずだ。
だけど現に声をかけることができない。
あんな優しそうで大人しそうなのに。
つまりだ。
紅蓮鎬がすごい。
口の悪さが帳消しになるくらいのトーク力がある。
なんか異常に頭の回転も速いしな。
「おい、朧月」
前から紅蓮の声が聞こえてきた。
「どうした?」
「ありすが、お前から話を振って欲しいみたいだぞ?」
えっ、マジで?
「ちょ……鎬ぃ。私何も言ってない」
すぐありすさんが否定した。
そ……そうだよな。
うん、わかってた。




