14.教えて!カストル様!
悪役令嬢という難敵を退けて安心しきっていたモブのシャルロッテ・ミッレです。
しかし。
「あとひと月もすれば期末試験ですわね。皆さま調子はいかがですか?」
このクレア様の一言で精神は天国から地獄へと突き落とされました。
安寧がもっと欲しかった…!
現代日本生まれ育ち、中世レベルの生活基盤のこの世界で勉強に苦戦するなんてことある?と幼い頃の私は思ってました。
が、暗記科目にそんな事は関係なかった。
特に歴史・地理は本当に駄目だ。いつの間にか右から左に抜けていく。
代わりに数学と魔法理論はミスさえしなければ満点取れる。地球数学の方が進んでるし、魔法は楽しいから。
これはリリィちゃんもたぶん一緒。
因みにゲームではヒロインちゃんの成績は学園図書館の利用回数とイベント選択肢次第で決定される。
学力パラメーター上昇イベントの発生は二年生以降だけど。
現実では一年の前期末試験は座学のみの数学・歴史・地理・魔法理論・選択外国語の合計点数が成績に反映される。
後期末試験は魔術理論の代わりに魔術実技を追加した五科目で試験が行われる。
これらを疎かにすると、二年時のクラス替えでランクを下げて好感度も下がるうえに二年からは選択科目も追加されるために科目数が倍増するという三重苦が待ち構えている。
そのため私とリリィちゃんはクレア様に気づかされてからは毎日図書館へ通っている。
そして昼食の場でも専ら期末試験のことばかりが話題に挙がる。
カストル様方がいる時にその傾向が顕著であるのだが、二年生であるお二方にあわよくば山を教えてもらおうと画策しているのだ。
しかも、カストル様が意外と情報を提供してくれる。教師の出題傾向だとか、採点配分だとか本当に色々。これらの情報だけでも他の生徒よりも格段に優位な状況で試験に挑めるのでは?というほど有益情報ばかり。
最近の私は昼食での会話を踏まえて放課後に復習をするようになったけれど、それでも暗記科目の進捗は停滞気味。流れは理解しても、完璧な暗記は難しすぎる!
リリィちゃんも私が微妙な間違いを繰り返し過ぎて「あ~…暗記って大変だよね…」と気まずそうに目を逸らしていた。
これはもうどうにか解決する問題じゃないわ。早急にカストル様に相談しよう。
決意を胸に迎えた翌日の昼食。
いつも通りのメンバーが同じテーブルで食事を摂っており、和気藹々としている。
「カストル様にご相談があるのですが、よろしいでしょうか…?」
普段こちらから話しかける事がないから少し驚いたようで目を見開き、すぐに普段の柔和な表情を浮かべた。
「何でしょうか?」
「その、お恥ずかしながら私歴史などの暗記科目が苦手なのです。勉強しているのですが、あまり身に付いたように思えなくて…。ですから、何か勉強法のアドバイスを頂けませんか?」
恥ずかしさに俯きがちになりながら何とか説明する。
歴史・地理系統は結構重要な科目の為、貴族であれば家庭教師を雇って事前に学習済みである。
歴史は登場人物のほとんどが王族なので王家の忠誠心が云々と判断されるし、地理は社交界での立ち振舞いを推測される。
あまりにも成績が芳しくないと『不忠者』などと嘲笑われて、結婚相手がないと謂われるほど。
まあ、私の場合お金があるから嫁入り先とか考えなくてもいいんだけど。まったく出来ないのは頂けないし、流石にそこまでではないとはいえ、家族の為にも何とか良い成績を修めたい…。
「1年生の今頃でしたら、王国法について学んでいるのではありませんか?その範囲は試験で出される可能性が高いですから、宜しければ放課後、一緒に図書館で勉強しませんか?お勧めの参考書を紹介しますよ」
返ってきた言葉は優しく、私には願ってもない申し出でパッと顔を上げた。
「まあ!ご迷惑ではございませんか?」
「いえ。私とポルクスもそろそろ試験勉強に取り掛かろうと思っていた所ですので、お気になさらないで下さい」
「ありがとうございます。そういう事でしたら、お言葉に甘えさせて頂きますわ」
快い返事に気分を良くした私は手を止めていた昼食を再開する。会話を聞いていたクレア様達もまた図書館での試験勉強をすると参加を表明したため結果的に七人の大所帯となった。
「正解です、ミッレ嬢。次の問題に移りますね。ヘルベスト・フォル・メアスミレ国王陛下は何をした人物でしょう?」
放課後図書館へ集合してポールスト兄弟に傾向を教えてもらいながら、それぞれの苦手科目を復習している最中。
私にはカストル様が持ってきた参考書を基にほぼマンツーマンで暗記科目に挑んでいる。今はある程度復習を終えたので、教科担当の出題傾向から導き出したらしい予想問題を出してもらっている所だ。
「え、えっと。第十五代国王陛下で、爵位相続法の直系血族における血統の正当性を、証明できない場合に、嫡子ではなく、正当性の証明が為された子息が、第一継承権優勢となる法案を施行しました…?」
「はい、正解ですよ。苦手とおっしゃっていましたからもっと基礎からお教えしようかと思っていましたが、どこにも問題ありませんね。これでは私に出来る事はもうなさそうです」
「ありがとうございます。先日まで本当に身に付かなくて困り果てていましたが、カストル様の教えが分かりやすくて嘘のように覚えられましたわ」
「ミッレ嬢の覚えが良かったからですよ」
謙遜して私を持ち上げているが、私の上達振りはカストル様の教育の賜物だと思うの。
だって、へっぽこミスを連発しているのをみて覚えやすいように物事に関連させたり、語呂合わせにしたりと苦手部分を察知して教えてくれるんだよ?
どう考えても生徒じゃなくて先生が素晴らしいでしょ?
あと、モブなのにあのカストル様に勉強を教えてもらえるシチュとか湧き上がるモチベが段違いだったわ。
でもまあ、貰える誉め言葉は素直に頂きますけどね!
「うふふ。おかげさまで落ち着いて試験に挑めそうです」
「ミッレ嬢でしたら望む結果を修められますよ」
「ありがとうございます。頑張りますわ!」
「その意気、ですよ」
麗しい微笑みに応援までされちゃった!これは好成績を残すしかあるまい!
決意を胸に再度参考書へと目を落とし、黙々と復習に励んだ。
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