13.悪役令嬢、権力の前に平伏す。
そしてあれから二週間後。
「シャルロッテ様ぁ…!申し訳ございませんでしたぁ!」
カフェテリアでみんなと食事中に音を上げたミザリンが謝罪しに来た。
流石に謝っている相手に対して鞭打つほど、私も鬼ではない。
「ミザリン様、頭を上げて下さいませ。私もやり過ぎていると理解していたのですが、我が家の名誉に関わりますから、このような対応をせざるを得ませんでした。ご理解頂けますか?」
「はいぃ…!ですからどうかぁ、どうかぁ…!」
「ええ、承知致しましたわ。ロートシルト侯爵家とのお付き合いを再開させて頂きます。これからどうぞ、よろしくお願いいたします、ミザリン様?」
「シャルロッテ様の御慈悲に感謝いたしますわぁ!今後ともよろしくお願いいたしますぅ!」
私からいい返事をもらった彼女は顔をパッと明るくして、前回よりも控えめなドスドスという足音を鳴らしながら立ち去って行った。
その後ろ姿を眺めながら一人ほくそ笑み、食事を再開する。
「少し同情致しますわ」
そう言ったのはクレア様で、他の方達も首肯して彼女に同意している。
今、一緒にテーブルを囲んでいるのはいつものメンバーで、クレア様、レイラ様、スーリズ様、リリィちゃん、ポルクス様、カストル様と、私だ。
一様に眉を下げてこちらを見る皆に、頭に「?」が浮かび上がる。
「どうか致しましたか、皆さん?」
「いえ。少し哀れに思っただけですから、気にしないで下さい」
「?哀れ?彼女が、ですか?」
「ええ」
ゲームでヒロインを散々虐めて邪魔した挙句、ポルクス様の気持ちを弄んだミザリンが?
今回だってあちらから突っかかって来たのだから、自業自得というものでしょう?
それに私はただ、ロンド侯爵家とロートシルト侯爵家の人間すべての『ミア・フィーユ』への出入りを禁止して、異世界発便利家電を再現した魔法道具の販売とメインテナンスを完全停止しただけだよ?
むしろこの程度でたったの二週間しか持たないとか思ってなかった。
まあ、あの衆人環視の下で絶縁宣言したら、我が家から援助を受けている貴族家は便乗する以外の選択肢がないから、仕方ないのかもしれないね?
食料難か、契約の打ち切りか、親戚連中の煩わしい介入か…。
一体何があったんだろうね??
「私はただ、自分が考案した商品を手に取って頂きたくなかっただけですわよ?」
「怖いですわ!敵に回したら最後!ですわ!」
「あら?レイラ様はこれからも仲良くして下さらないの?」
「仲良くしますわ!友情万歳!」
「うふふ…」
私が頬に手を添えて笑うと、なぜか分からないけど全員が微妙な表情をしていた。
しかし、最後の確認作業が残っている。
「リリアーナ様。これでいいかしら?」
「え、えっと?」
「ミザリン様に嫌なことを言われていたのは、貴方でしょう?これで気は済んだかしら?」
「ええ!十分!」
「それなら良かったわ」
この時、私とリリィちゃんはとてもいい笑顔を、他の皆さんは苦笑を浮かべていた。
そして更に、一か月後。
「申し訳、ございませんでした…!」
優雅な昼食時に、唇を嚙み締めて怒りを抑えた状態のメザリアンが降参してきました。
しかぁし!しっかりと煽っていくぅ!!
「それは何に対しての謝罪ですか?」
それに対して彼女は私を睨み殺さんと言わんばかりの殺気を籠めた視線を放っている。
しかし相手が怯む素振りがない事を知って、屈辱に大きな身体をプルプルと震わせている。
「…貴方を罵倒したことを、心より、謝罪致します…!」
「それは違うわ」
「え?」
私の発言にメザリアンを含めた全員がキョトンとした表情をしてこちらを見た。
しかし、私が怒ったのは、そこじゃない。
「分かりませんの?貴方が謝罪すべきはカストル様達に、ですわ」
「え?私達、ですか?」
「え?おれらぁ?」
突然名前を呼ばれたふたりは似たような反応の仕方で驚いていた。
そして、これを聞いていたリリィちゃんは私が何をしたいのかを理解して笑っている。
「その場に居合わせなかったお二方には理解できないとは思いますが。…メザリアン様。貴方はポールスト侯爵家の名誉も傷つけようとしたのですよ?理解していますか?」
特に今回は傷ついていないのだが、ゲーム内では散々傷つけたのだ。謝罪があって然るべきだと思う。
本当はミザリンにも謝らせたかったんだけど、彼女はポルクス様の名前を出してなかったから諦めた。
けど、メザリアンは名指しでカストル様を「伯爵令嬢如きを拒否できない者」と公言したのだ。嫡男である彼を侮った物言いである事には変わりない。
そのことに気づいたのか気づいていないのかは分からないが、彼女は彼らに向き合って頭を下げる。
「…カストル様、ポルクス様…申し訳ございません、でした」
「…私は許します」
「おれもぉ、いいよぉ」
「…ありがとうございます」
よし!これでゲームの恨みは晴らしたわよ!
一生涯越しの達成に思わずテーブルの下でガッツポーズをする。
しかし、顔には穏やかな表情を見繕っておく。
「お二方が納得できたのでしたら、私も否はございません。我がミッレ伯爵家の商品を、今後ともご贔屓に。」
「はい!分かりましたわ!では、わたしはこれで失礼します!」
前回あった時より更に大きくなったお腹を揺らして、ドスンッ!ドスンッ!と地面を鳴らしながら立ち去っていたのだった。
それを聞きながら令嬢らしくふんわりと笑みを浮かべる。
モブ、悪役令嬢相手に完・全・勝・利!!!
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