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2月2日(日) 15:30








――――――うわ。




私は、思わず唇を動かした。

視線の先にいるのは、小野寺くん。

留年しない程度にしか学校に来ない、茶髪で耳にピアス穴が3つもある小野寺誠くんだ。






頭の中が真っ白になりかけたところで、会計台の上にカフェオレと菓子パンが置かれてるのに気がついた私は、慌てて頭を下げた。

「……いらっしゃいませ、こんにちは!」

顔を上げて目が合っても、小野寺くんは何も言わない。それどころか、眉毛一つ動かさない。

クラスメイトだ、っていう認識、彼の方にはないんだろうな……。

「2点で203円になります」

私は素知らぬ顔でバーコードをスキャンして、表示された金額を読み上げた。

そのままストックしておいたポリ袋に手を伸ばして、商品を詰める。

ほんとは買い物袋1枚につき2円いただくマニュアルになってるけど、これくらいの自己判断なら店長も多目にみてくれるだろう。

「……どうぞ」

袋を小野寺くんの前に出すのと同時に、耳元で硬い音が響いた。お金が会計トレーに置かれた音だ。

私はすぐに、置かれた硬貨を手のひらにのせて確認した。

会計額が小さいから、目視ですぐにピッタリだと分かる。

「203円ちょうど、お預かりいたします」

硬貨を投入口に落としこんで、自動計算で表示された数字を確認して承認ボタンを押す。

ほどなくして、短いレシートがカタカタと音を立てて出てくる。

私はそれを切り離して、静かに佇んでいる小野寺くんに向かって差し出した。

そして、レシートが彼の手に渡るのを見届けて頭を下げる。

「ありがとうございました。

 またお待ちしております」

マニュアル通りの営業スマイルを浮かべて顔を上げたら、小野寺くんはすでに背を向けて出口へ向かって歩いているところだった。


高2の冬、とある日曜日のバイト中の出来事である。






彼……小野寺誠くんがここへ来る時は、大抵黒いエプロンをしてる。

きっと彼もバイトだろうな、なんて。勝手に想像してる。

買ってくのは、コーヒーと菓子パン。もしくはお茶とおにぎり。

よっぽど急いでなければ、大抵レシートもきちんと受け取っていく。

初めての時は、小野寺くんが駅前のスーパーに出入りしてることに驚いた。

ロクに学校に来ない彼のことだから、買い物するなら斜め向かいにあるコンビニの方がイメージ通りな気がして。

……これも、私の勝手なイメージだけど。





これが今の私が知っている、小野寺くんの全て。

……いや、もっと知りたいなんて、全然そんなつもりはないけど。








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