第46話 街にダンジョンができるって!?
年明け前になんとか更新……
「特記戦力だと……?!」
サンムルスの将軍、マクスウェルは絶句していた。
東へ進行していた50000人の部隊が壊滅した、というコード師団長の報告はにわかには信じられないものであった。
特記戦力――単体で戦況をひっくり返せる異端。
嘗て帝国が大陸統一を成す以前は、この特記戦力を保有しているかで国の格は決まるとさえ言われていたほどだ。
サンムルスは特記戦力を3体保有している。帝国以前の嘗ての大陸であれば、覇権を握っていてもおかしくはなかった。
「ありえん……あのような辺境に特記戦力など……いや、だがしかし……」
デルタノルド帝国は、神聖魔法により擬似的な特記戦力を10体以上保有していた。しかし神聖魔法の失われた現在、それらは大幅に弱体化。
特記戦力と呼ぶには程遠い有り様であるはずだった。
「つまりは……野良の怪物がいた、ということか……?」
神聖魔法に頼らぬ、自力で万の軍勢を蹂躙できる『何か』があの辺境には潜んでいた。
それは人間の強者なのか、はたまた強大な魔物なのか。一切が不明だ。
報告しようとしていたコード師団長は通信中に何かに討たれてしまったようだ。
「特記戦力などそうそういるはずもない……。脅威ではあるが、しかしヤツを除けば東の一帯は我らの物となる」
マクスウェル将軍は、てかる禿頭を擦り天を見据えた。
「これは未来の栄光への試練なのだ」
――後世では、サンムルスは試練を打ち破り栄光を手にしたと語られることになるであろう。
そう信じて、マクスウェルは決断した。
「――陛下、特記戦力の使用許可をわたくしめに」
「よかろう。打ち勝った暁には我が敵の首を余の前に献上したまえ」
サンムルスの皇帝を自称するものは、そう将軍に命じた。
そうして――シリスの悲劇は、密かに迫りつつあるのであった。
*
シリスの街にて敵兵鏖殺から数時間後。
ベープさんの通信水晶に、隣街のヘブルスから連絡が入った。
「ラズリーさん。ヘブルスの街へ攻め入ったサンムルス兵10000人も無事に殲滅できたそうです」
アチェリーちゃんたちがうまくやってくれたようだ。
サンムルス兵500人に1ヶ月間訓練とトレーニングと稽古をつけ続けて、今や雑兵すら一騎当千の英雄だ。
まぁもっと更に強くさせる予定だけどね。
そんな訳で50000人の敵をぶち殺した訳だけど、問題がひとつあるんだよね。
「死体はどうしましょうか……」
そう、野ざらしのサンムルス兵たちの死体である。その数、ヘブルスの街のものと合わせて50000。
後方にいた補給部隊も加えるともう少し増えるかも?
とにかくこれだけの死体をこのまま放置するのはとてもまずい。
腐れば疫病の発生源になりうるし、ゾンビの依り代にもなりかねない。
んまぁ、これに関しては無計画って訳でもない。
聖女たる私が死体をゾンビにならないよう清めてから、ホグジくんの魔法で地中深くに埋める。ついでに墓でも建ててやろうかね。
なーんて考えていたら
『それはちょっともったいないわね』
アルコア様が何やらリサイクルしてくれるつもりらしい。
*
「――えぇっ!? そ、それは願ってもいない事ですが……いいのですか?」
「いいんじゃない? アルコア様にとっても利のあることらしいし?」
何があったかというと、50000人もの死体の処理をアルコア様が買って出てくれたのだ。
厳密にはベープさんが『贄を捧げる』という形だけれど。
そう、50000人の死体をアルコアに捧げるのだ。
アルコア様にとっても死体は私を介さずにこの世界に顕現するための素材になるらしい。
そして、形式とはいえ贄を捧げられたのだから、ベープさんには『報酬』を与えなければならない。
倫理観? なにそれ美味しいの?
「ベープさんは欲しいもの何かある?」
「であれば街のためになるものを……」
ベープさんは顎に触れてしばらく考え込む。
「持続的に街の利となるものが欲しいですね。例えば鉱脈だとか……」
「悩んでるねぇ」
「悩みますよ。ただ結果だけ得てそれに頼るばかりではじきにこの街は腐敗します。ですからできれば最低限自分たちの努力を要するものがいいですね……」
けっこう考えてるねベープさん。私もただ力とか富を労せず与えられるだけなのは反対だね。神聖魔法という力に驕って帝国は滅んだ訳だし。
『それならちょうどいいのがあるわよ?』
それってなんですかねアルコア様?
ふむふむ、なるほど? 確かにそれなら……
「ベープさん、〝ダンジョン〟なんてどうですかね?」
ダンジョン。
読んで字のごとく、迷宮である。
宝物を得られる……だけじゃなくて、魔物と戦ったりペナルティがあったりとリスクと多大な努力を要求されるアレである。
しかもアルコア様特製。
「確かに……ダンジョンを街の近くに作られるのであれば、それが報酬にもなりますが……」
「兵の訓練にもなるし武器やお金も手に入るしで一石三鳥なんじゃないかな?」
「ですね。では報酬はダンジョンでよろしくお願いいたします」
*
女神死体処理中……
*
使える武器が、無いんだよね。
私の話じゃないよ? シリス兵たちの問題。
武器そのものはあるんだけど、どれもなまくらでね。鍛え抜いた彼らが使うと簡単に壊れてしまうんだよ。
だから今回の戦争ではみんな終始素手で戦ってたの。
そんな訳で一人一人に丈夫な武器を与えたいんだよね。
とはいえアルコア様パワーで直接与えるのはよろしくない。あくまでも自分の力で獲得させたいんだよね。
それを解決してくれるのがダンジョンだ。
ダンジョンを攻略した『報酬』という形で武器とか与えるのなら、まあセーフなんじゃない? という見解だ。
『ちなみに普通のダンジョンじゃないわよ。数多の世界に枝を広げて形造った大迷宮よ。今までにたくさんの人々が挑んできたわ』
「数多の世界にって何ですか?」
『私が関わってきた様々な世界とちょっとずつ繋がってるってことよ。その全貌は作った私すら把握しきれていないわ』
「なんかすごそうって事は分かりました……」
詳しく聞いたら頭がおかしくなりそうだ。
この世界以外にもいろんな世界があって人が暮らしているって話は聞いたことあるし、アルコア様なら世界の壁も簡単に飛び越えられるのだろう。
『ラズリーちゃんも最近鈍ってるみたいだし、挑んでみたらどうかしら? ――〝大迷宮ダート〟に』
確かに……私は最近鈍ってきている自覚がある。
というのも、引きこもっていたここ300年あまりまともな戦いというものを経験していないのだ。
圧倒的格下を叩き潰すか、超格上である神クラス相手しか戦っていない。アルコア様と模擬戦ならしたけれど、それもかなり手を抜いてもらっていたのだ。
接戦というか、駆け引きのある戦闘。
何よりイドーラやらクターニドに命を狙われている以上、これからは私単体でも『神』と戦えるようにならなきゃならない。
アルコア様はそれも見越して、鍛練の場を用意してくださったのだろう。
さすがはアルコア様だ。
「ありがとうございますアルコア様!!」
ともあれ、大迷宮というものはそんなすぐにポンと用意できるものではないらしい。
色々と調整をしたりして、シリス兵程度でも攻略できるようにしたりとか色々……。
何はともあれ、完成が今から楽しみだね。
特記戦力、うち5人いるんですわ……聖女と魔獣含めたら7体……
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