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第18話 茶番劇の終わり

低気圧のせいかめちゃくちゃ体調悪いです

 2000人の偽装兵どもと戦闘を初めてから10秒くらいしたんだけど……


 うわぁ、ヴェルディちゃんすっごい暴れまわってない?

 よく見えないけど時々何十人も吹っ飛んだりしてるよ。


 さっすがはこの聖女を殺せる獣だね。ヴェルディちゃんだけでも鏖殺できそうだよ。

 でも、領主さんと契約したからには私もちゃんと働かないとね。


「な、なんだあの怪物は……!? さては貴様、魔獣傀儡師(ビーストテイマー)か!?」


「やだなぁ、そんなんじゃないよ?」


「や、やってしまえ! この女があの魔獣を操っているぞ!!! こいつを殺せばあの魔獣も止まる!!!」


 まぁ、そうなるか。誰でも希望ってものを求めるよね。たとえ嘘とかあやふやなものだとしても。


 私は結界の剣を握り、絶対切断(ザンテツケン)を込めつつも、魔法による攻撃を放つ。


 アルコア様直伝雷撃魔法――


広域雷魔撃(メガフラッシュ)!」


 真っ赤な稲妻が一気に前方へ扇形に迸り、空気が引き裂かれた轟音が響き渡る。


 いまので200人くらいは倒したかな? アルコア様のものとは比較にならないほど小規模だけれど、こいつらにはこれで十分。


「ひ、ひいぃっ!? 話が違うっ! 助けて、死にたくねぇっ!!」


 近寄る奴等は切り刻み、逃げる背には雷撃を。

 逃げた先には不可視の結界で、私は一人として逃がすつもりはない。


 戦場は阿鼻叫喚の地獄と化した。


「弱肉強食を語るならさ、自分らも食われる覚悟くらいはしておかないとね?」




 開戦から2分。

 2000人いた軍勢は、死体も残さずに全滅したのであった。


 ……ヴェルディちゃん口の周りなんだか赤くない?








 *









 翌朝――


 朝日と共に、白い騎士のような服装の集団がシリスの街へとやって来た。人数はおよそ500ほど。


「我らは暁の星(エオステラ)! 悪しき帝国を打倒し平和をもたらす者なり! ただいま救援に参った!!」


 街の外の農地にて、リーダー格の男が叫んだ。

 畑にはちらほら住民がおり、きっと街から命からがら逃げてきたのだろう。


「なんだべお前さんら? 手伝ってくれんのか? そんな白っぺえ格好で汚れんぞ?」


「問題ない、この白き服が穢れようとも我らの魂は真に高潔であるからな。して、帝国兵どもはいずこだ? 街か?」


「てぇこくへぇ? なんの事だべ? おらは畑仕事で忙しいんだべ、よくわかんねが、そういうことは街の方で聞きゃわかるんでねえの?」


「む?」


 ここで彼らは気づく。

 帝国兵が来ていない――という可能性に。


 だがここへ来たのは間違いないはずだ。

 構成員の大半は知らないが、打ち合わせでは確かにこの街を襲撃し領主を殺す手はずなのだ。


 こうなれば、直接街まで見に行くしかあるまい。もしも何かあったのだとすれば、魔導通信で知らされるはずだ。


 一応は制圧は完了しており、あの農夫はたまたま偽装兵に出くわしていないだけなのだろう。


 そういうこともあるはずだ。




 ……が。



「そこで止まってもらおうか」


 市街地に立ち入ろうとした所で、入り口の憲兵に止められてしまった。


「我らは暁の星(エオステラ)。この街へ昨夜帝国軍が攻め行ったとの救援要請を受け馳せ参じた」


「帝国軍? 昨日はいつもとなんら変わらぬ静かで平和な夜であったぞ?」


「何?」


 500人の集団の中でざわめきが生じる。


「しかし領主様よりえおすてら? とやらいう輩が来たらその代表者を一人招くようには伝えられている。代表者は貴様か?」


「……そうだ。皆のもの、すまない。ここでしばらく待っていてくれ」


 そうしてこの場にいる暁の星のリーダーである男は、領主の館へ招かれるのであった。









 ――――











 この街で一番大きな館――といっても他所の領主のものと比べるとずいぶんと小さなものだが、そこで私とヴェルディちゃんは『客人』が来るまでスタンバイしていた。


「……ラズリー様、ヴェルディ様。来たようですよ」


「了解」


 私たちはあくまでベープさんの『従者』という設定で隣に立つ。万一暴れられたりしても抑えたりできるからね。



 ――コンコン


「失礼します。暁の星(エオステラ)からの使者をお連れしました」


「入れ」


 執務室の扉が開き、憲兵さんと一人の青年が入ってきた。まるで騎士のようなカッコいい服を着ている。ビジュアルから入るタイプなのかな、エオステラとやらは。


「ご苦労、元の仕事に戻れ」


「はっ!」


 憲兵さんを帰し、部屋には私たち4人だけとなる。


「私は革命組織暁の星(エオステラ)の騎士団長、リュートと申します」


「そうですか。それで、我がシリスの街に一体何の御用で?」


「……帝国軍の魔の手を退けるためにございます。昨日、救援要請があり騎士団を率い来たのです」


「はて、帝国軍など来ていませんが……?」


「どうやら行き違いがあったようですね。近隣の別の街からの要請だったのかもしれませぬ」


 やっぱりね。誤魔化すつもりか。

 まだ偽装部隊とやらが全滅したことを知らないようだし、一旦退いてからもう一度やるつもりなのかな。


 ……逃がさないよ?


 おっ、ちょうどベープさんからあのハンドサインだ。


 やっちゃいまっせ。


「……いいや、行き違いではありません。帝国軍は(・・・・)来ていませんから」


「……!?」


「それより見てもらいたいものがありましてね?」


 再びベープさんからのサイン。

 今度はヴェルディちゃんが、他の部屋にある『それ』を空間を繋げてその場に引きずり出した。


「ん~!! んん~!!?」


 猿轡をつけられ、四肢の肘と膝から先の無い男が床に転げ回る。


「この男を知っているか?」


知りません(偽装第三部隊のガル)……なっ!?」


「おぉ、やはりグルだったか」


 突然『嘘』をつけなくなって動揺しているね。

 これは私の結界術によるものだ。結界内の存在に付与したルールを強制させる……という、私の編み出した私だけの結界。


 この結界内では『嘘をつけなくする』ルールが、強制させるのだ。私を除いてね。


 それでこの執務室をすっぽり覆った。


 さぁて、楽しい尋問タイムの始まりだ。


「彼はもう洗いざらい吐いてくれたよ。さて、君たちはこの街を帝国兵に扮した偽装部隊との猿芝居で乗っ取るつもりだったろ? この私を殺して」


「〝そんな訳ないだろう(はい、その通りです)〟……くっ!? 」


「私の部屋で嘘をつくことはできない。黙秘はできるが、それは肯定とみなすからね?」


「な、何者だ貴様……!? このような魔法、どのようにして発動しているのだ!?」


「それは私の力ではない。彼女は秀でた魔法使いなのだよ」


 嘘はついていないながら、私の正体には触れない。領主さん、けっこうできる人だね。


「おのれっ……こうなれば今この場で殺してくれるっ!!!」


 騎士――リュートは立ち上がり、剣を抜いた。


「我らが正義を邪魔する者は悪である!!! 覚悟っ!!!」


「ひっ……」


 一瞬怯えたベープさんの間に割り込み、私はリュートの剣を掴んで絶対切断(ザンテツケン)でへし折った。


 そしてそのままその腹にパンチ。


「おぐうっ!?」


 おっとぉ? ゲロ吐いて失神しちゃった?

 かなり加減してたのにいくらなんでも弱すぎない?


 まあいいや。



 そのまま私たちはリュートを引きずって、市街地の外で待機している自称騎士たちの前へやってきた。


「リュート様!?」


「おのれリュート様に何を!?」


 戸惑いと怒号の響く彼らの前にリュートを投げ捨て、同時に生け捕りにした『帝国兵』50人ほどをヴェルディちゃんに取り出してもらう。


「て、帝国兵!?」


「あの顔の傷……お母さんの仇……!!」


 うーむ、既にこの辺りを『嘘を吐けない結界』で囲ってるんだけど、どうやらほとんどがマッチポンプを知らないみたいだね。


 よし、起きろリュート。


 私は治癒魔法をかけ、リュートの意識を無理やり覚醒させる。


「っ!? はぁっ、はあっ!?」


「いまこの場は私の執務室同様〝嘘をつけない魔法〟の効果で満ちている。お仲間の前で質問に答えてもらうぞ?」


「くっ……殺せ!!」


 うわあ、それ言ってる人初めて見たよ。

 でも殺さない。ちゃんと『真実』を話してもらわないとね。




 そしてベープさんは、リュートに『質問』を問いかけて『真実』を500人の仲間たちの前で吐かせた。





『帝国軍に扮した偽装部隊が村を襲い資源を略奪し、それを後続の我々が撃退。偽装部隊が略奪した資源を獲得し、更に救われ恩義を感じた住民が暁の星(エオステラ)に入団する。まさに一石二鳥の作戦を今まで続けてきた――』


 ……と。


「諸君にも問いかけよう。この真実を知っているものはいるかね?」


「し、知る訳がないでしょうが! そんなのでまかせだ! そうでしょうリュート様!」


「事実だ……」


「知りません!」


知らない(知っている)


 反応はやはり、大半が知らないものの……一部のリュートに近い人間は知ってるって感じかな。


 知らないって言った人間は殺さないでおこう。


 逆に『知っている』ヤツの手足はもういらないよね?


「ぐああっ!?」


 数人の騎士の手足が突然千切れた。


 ヴェルディちゃんの能力の応用で、空間ごと遠隔で捻り斬ったのだ。


「後の皆さんは帰ってください。この話をどうぞ、暁の星(エオステラ)の中で吹聴するといいでしょう」


 構成員がどの程度なのかは知らないけれど、500人近くが内部で広めればあとはもう噂が自動的に内側から崩壊させてくれるはずだ。



「嘘だ……私はお母さんの仇に協力させられていたっていうの……?」



 憔悴しきった顔で無辜な方々は街を去っていった。



 さてさて。

 残った人たちはもう用済み。引き出せる情報はもうないしね。




 ――アルコア様、生け贄ですよー!


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― 新着の感想 ―
いや面白っ!!? 何が面白いかって、追い詰め方がパワーだけじゃないことですよ!!  ちゃんと場を設けて追い詰める。証拠を集め尋問するように追い詰める。そしてしっかりと無関係の人は殺さない。  この回で…
被害者に被害者作らせてるの悪辣よな じゃあ無明の底に落ちようね
おおおおお! 1から獣まで何もかもが殺伐としておる……(汗) 流石、稲嫁さん……!!!
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