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第57話 白王と黒王

「さあて、お、ね、え、さ、ま。諸々を説明してもらえると助かるんだけどー」


 リムの右手から発せられた光の球体が徐々に大きくなり人型を形成する。そこに現れた人間は、白王(はくおう)リリ・ホワイティアだった。


 エミルと瓜二つの青い眼の整った顔立ち。白く長い髪は綺麗に編まれていた。編み込みカチューシャにし、後頭部では更に蝶々結びに編まれている。残りの髪はそのまま後ろへ降ろし、凝った編み込みがされていた。

 白銀の甲冑もエミル同様目を張る輝きを放っている。しかし大きく違う物があった。左肩には一角獣であるオルドールの象徴、ユニコーンの頭部を模した装飾が施されている。白く光り輝く一角獣の角の先端、柔な作りではないが武具としての役割は担っていない。

 白のミニスカートに膝当てから脛当て、鉄靴(てっか)までもが白銀に染まっているが、覗かせる絶対領域の太ももがどこか可愛らしさを残している。


「雑な紹介の上に雑な話の振り方ですこと」

「お姉様!?」

「ど、どういう事だ!?」


 予想だにしない人物の登場に一同が唖然とする。


「どこから話せばいいのかしら」

「最初っからどうぞ」


 リムは今まで聞いてきた話を想像するに、原因は自分にある事をそれとなく勘付いていた。


「そうね、それじゃあ知っていると思いますが改めて。私はリリ・エ・ミル・オルドール、現白王を名乗っています。世間ではリリ・ホワイティアと。とりあえずロングラスの出来事からいこうかし――」

「お姉様―!!」


 大声で泣きじゃくりながらエミルが飛び込んできた。心配に心配を重ね、どうにかなりそうだったのだろう。行方不明だった姉の姿を見るや否や、抱き付いてきたのだ。しかし、エミルの抱擁は空しくも叶わなかった。


「エミル……ごめんなさいね。今、私に触れる事はできないの。説明させてちょうだい」

「そんな……ヒック」


 落胆の色を隠せずどんよりと肩を落とすエミル。


「私は親衛隊の五清白(ごせいはく)を含む軍勢を率いてロングラスで黒軍(こくぐん)を迎え撃ちました。相手には五黒星(ごこくせい)という五人の精鋭が黒王(こくおう)を囲っていました。ですが五清白の活躍もあって戦況はほぼ互角。私はなんとか五黒星を黒王から引き離し、一対一に持ち込む事に成功したのですが……」


 一同は静かにリリの話を聞いていた。リムはというと、未だに新調された服をみては満足気にクルクルと回っていた。


「そんな折、突如上空から流星が降って来たのです」


 リリは話を聞いているか分からない、クルクルと回るリムを見つめていた。


「彼の能力は知っての通りです。流星の衝突に巻き込まれた私と黒王ガメル・ブラキニアは、彼に吸収されてしまったのです。何の力が働いたのかは分かりませんが」

「吸収!? いや、アイツの能力自体はなんとなく把握していますが、あれは色力(しきりょく)のみを吸収するはず。人体ごと吸収されたとなれば説明が付きません!」

「ドーム? 貴方は生き残ったオルドール家の最年長です。私に敬語など不要ですよ?」

「あ、いや。そうだが今までの癖でつい」

「ここにはオルドール家とそれを守るリタール家しか居ません。今は少なくとも身内の会話をしたい所よ、兄様」

「オレも忘れないで欲しいね!」


 張本人のはずなのだが一人だけ真面目に聞いていない人間を相手にしていてはキリが無いというモノ。周囲はリムという人間の扱いを少々理解してきた様だ。


「私は得体の知れない空間に漂っていました。なんと表現すればいいのか……現実とどこかの空間の境目、そう曖昧な空間というべきかしら」


 リリはそれからの出来事を全てリムの内から見ていた事を明かす。意識はあるが己の意思で動く事ができず、度々リムに囁きかけていたが中々届かなかった事。しかしリムが色力に目覚めてからは、波はあるものの徐々に意思での会話が可能になったと。


「あの時の流星がリムちんだった事は分かったよ☆ でもリリ姉ちゃん、巻き込まれたのはもう一人いるんだよね?」


 誰もが気になっていた事をミルが問い掛けた。


「可愛い可愛い妹、ミル。しっかり話をするのはいつぶりかしらね」

「エヘヘ☆ ミルね、リリ姉ちゃん大好きだよ☆」

「私もよ、ミル。話を戻すわね。もう一人、そうガメル・ブラキニアも同様に吸収されています。リム」

「やーっぱ出さないといけない? この状況じゃオレを見る目が痛いのは明白なんだが?」

「お願いします」

「ちぇっ」


 リムは左の角を擦ると、観念したように左手を前に出した。黒く淀んだ影が徐々に人の形を形成する。


「で、でかッ!!!」

「大きくて悪かったな小僧」

「こ、黒王だとッッ!?」


 一同は身構える。当然であろう。現白軍の敵対勢力である黒軍の長、オルドールの仇敵であるザハルの父、ガメル・ブラキニアが現れたのだ。


 身長は約二メートル、隆々とした筋肉を露出した身体は近寄り難いものがある。体格のお陰か縦にも大きければ横にも大きい。

 両側頭部からは黒光りした角が、触れた者を串刺しにせんとばかりに突き出している。リムの角は黒王、ガメル・ブラキニアの物だった。

 辛うじて人だと分かるが、真っ黒に日焼けした肌は黒ギャルもビックリだろう。体躯を見せつける半裸姿は、逆に威圧を感じる程だ。

 黒いレザー調の手袋を嵌め、黒くゆったりしたパンツはニッカポッカのそれだ。


 目の前に立たれるだけで足が竦んでしまいそうな程の威圧感。しかしリリ同様、今は触れる事の出来ない幻影に過ぎない。


「我を呼ぶという事はどういう事か分かっておろうな小僧」

「フフフ、我そんなことは知らんであるよ」

「貴様、おちょくっておるのか」

「テヘッ」


 可愛くも無い舌ペロを繰り出すリム、ガメルの口調を真似したつもりなのだろう。


「落ち着けオルドールよ。我は今、貴様らに敵意を向けられた所で何もできぬ、互いにな」

「そういう事です。私とガメルは現在、リムの中に捕らえられていると言っても過言ではありません。しかし、脱する方法が皆目見当がつかない以上リムと同行するしかないのです。この現状を踏まえ、リムと共に私達の解放への旅に出てもらいます」

「やだーめんどくさい、オレはオレの思う様にするから指図しないで」

「構いませんわ。上手く誘導するくらい訳ないですもの。ねえガメル?」

「ああ、一国の主ともあろう我らが人一人を動かすなど造作も無い」

「うるさいな! オレは誰かに縛られたくないの! ()()()()()()?」

「中に居ようが話はできる」

「だああああもう!」


 気付けば完全にリムを中心に話が進んでいる。オルドール勢が話に割って入る事ができない程に急展開だった。

援軍を要請?


良いだろう、飼われたい様だな。


……


まだいるか?

あんなバケモノ如きに援軍など呼んでみろ。

我ら黒軍の力の無さが露呈するだけだ。そんな柔な訓練をさせてきたつもりはないぞ。

死にたい奴だけ逃げるが良い。


アル、コイツ等の指揮を執ってくれ。オレはやることがある。

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