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クリティドと二人で視察 ⑪

「かしこまりました」



 頷いた薬師達は、私に調合のやり方について教えてくれる。材料となるものは、毒にも薬にもなる。一歩間違えれば、人を害するものが出来上がってしまうかと思うと少しだけ恐ろしい。

 身体に良いと呼ばれているものだって、取り過ぎてしまったら体調に影響したりもするものね。そういうのって難しい。



 調合に纏わるあらゆる情報がなければ、間違った配分で材料を入れてしまうかもしれないのよね。……そう考えると一人前の薬師として生きている人ってそれだけでも尊敬できる。

 私は前世も含めて、勉強がそこまで得意なわけじゃなかった。私は今、公爵夫人という立場で多くの人の未来を握っている立場だ。私の選択肢一つで誰かの命が失われてしまうんだ。とはいってもクリティドに最終的な決定権があるから私一人で背負うことではないけれど。

 公爵家の当主夫人という役割と、薬師という役割は……人の命を背負っているという点では一緒なのかもしれない。





「素晴らしいわね。一度聞いただけでは流石に全ては覚えられないわ」



 説明は受けているし、メモも出来る限りとった。ただしこれらの全てをすぐに覚えることは出来ない。それにメモを取っても合っているのだろうかと心配になってしまって、一人では調合なんて出来ないだろうな。



 この世界には魔力が存在しているから、余計に前世よりも調合が複雑だったりする。

 薬草などには魔力が含まれているものも沢山あるしね。一つ間違えれば大事故につながる可能性も十分にあり得る。



 そもそも前世の調合などでも、少しの間違いで薬が毒物になったりする可能性だってあるものだった。

 そう考えると、薬を取り扱う人たちは素晴らしいなと思ってならない。




「奥様、その分量、違います!」

「奥様、入れるのは――」



 ……私はやっぱり、少し失敗してしまったりした。細かい分量を間違えてしまったり、入れる材料の種類が分からなかったり……本当に難しいわ!


 前世の記憶があろうともその辺の要領が良くないのも私らしいなと自分でも思う。あくまで前世の記憶があるだけのただの貴族が私だから。




「やはり調合というのは難しいものね。なかなか覚えるのは難しそうだけれども、だからこそやりがいがあるから、是非とも覚えたいわ」




 出来ればいつかは一流の薬師になれたら、それは素晴らしいことだろう。



 私は今のところは、そこまで特徴のない公爵夫人という立場でしか周りに見られていない。だけれどもそこで終わる気は私にはない。

 もっと頑張りたいなという思いが先行している。



 傷ついた魔力回路を回復させるものは、今のところは見当たらないけれど研究を続けて行けばそういった薬が見つかるのではないかとそうも思ってはいる。

 これまで長い間、専門家たちが研究しても見つかっていない薬なのだからもちろん簡単には見つかることはないだろう。……でも私はやっぱりまた魔法を使えるようになりたいと思っている。



 それに数が少ないとはいえ、魔力回路が傷ついている人の事例がないわけじゃない。そう言う人たちが未来に希望を持てるようにはしたいなとは思っているのだ。

 新しい薬を生み出したいと思う前に、まずは基礎を全て覚えるべきだわ。下積みが出来ていない状況でいきなり薬を生み出すなんて天才的なことは私にはまず出来ない。

 一歩ずつ、少しずつ全て進める必要性があった。




 視察でこの場所に居られる時間はそこまで長くない。あくまで今回は長期滞在ではなく、視察として此処にいるのだから。それにクリヒムとティアヒムを置いてきているのだ。

 長い間、子供達に会えないなんてそんなことはごめんだと思っている。私が公爵夫人として立派になることは、子供達のためになることは分かっている。とはいえ、それで子供達に寂しい思いをさせたら本末転倒だ。

 だから今、この場で学べることは幾らでも学ぼう。





「分からないことが沢山あるから、一つずつ聞かせてもらえるかしら?」




 私はそう前置きをする。薬師達が頷いてくれたので、それから思いつくがままに質問を繰り出した。

 細かいことまで沢山問いかけてしまった気がする。向こうからするとそんな初歩的なことを聞くなんてと思われているかもしれない。

 それでも私の学びたいという意思は伝わっていたら嬉しいな。




 これで薬師達から疎ましく思われたら……と不安な気持ちはなくはない。だけど今のところは、悪い感情は思われてはいないみたい。

 そもそも質問さえもされたくないという立場の薬師なら、私の召集に応えてはくれなかったでしょうね。



 もっと私が調合に詳しくなれて、話す価値があると思ってもらえたら……今この場に居ない薬師達とも仲良くなれたりするかしら。

 そんな未来を想像すると楽しみになった。



 今はまだ、縁を繋げていない。だけれども私の行動次第では幾らでもクーリヴェン公爵家の領民達と仲良くなれるのだもの。

 頑張ろうと気合を入れて、その日はクリティドが帰ってくるまでの間、ずっと学び続けるのだった。


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