クリティドと二人で視察 ⑥
馬車で移動をしながら、薬草の群生地へと向かう。
途中からは馬に乗って向かうことにはなっているけれどね。馬車ではいけないような場所に続いているようだから。
私は乗馬が出来ないわけじゃない。一応、乗り方ぐらいは習っている。
ただこういう道を進むことは慣れていないので、正直ついていけるかというのが心配だ。
「えっと、クリティド。私は馬にそこまで乗り慣れていないです」
私はそう口にして、落ち込んでしまう。
だって公爵家やクリティドのためになるように頑張りたいと思っているのに、こういう所で手間をかけてしまうことには何とも言えない気持ちになる。
「そうか。なら、私の前に乗るといい」
そう口にして、クリティドが私の身体を抱える。そしてそのままクリティドが乗る予定の馬の上に乗せられる。びっくりした。クリティドって本当に力が強いというか、簡単に私のことなんて運べてしまうのね。
そのままクリティドも私の後ろに乗る。
「二人乗りって難しいイメージだわ。私をのせても大丈夫なの?」
「問題ない。ウェリタは私に身を任せてくれればいい」
そんなことを言われて、その表情や台詞がかっこよくてときめいた。いや、だって……クリティドって本当に顔がいいの。こんなに素敵な人が私の旦那様なんてことが不思議な気持ちでいっぱいになる。
私の旦那様、私の夫。
うん、良い響きだわ。それにこれだけ私に優しいのも、私のことを好いていてくれているからに他ならないのだもの。
こんなに素敵な人が私のことを愛してくれているなんて、嬉しくて仕方がない。
そのままクリティドと一緒に群生地へとそのまま馬で向かった。
馬は、一応乗れるけれどこんな所で乗ることなんてなかったわ。練習したり、ちょっとだけ乗ったりぐらい。私の実家が貧乏で、乗馬を習うこともなかなか難しかったからというのもあるけれど……。
屋敷に戻ったらちゃんと習ってみたいかも。クリティドに馬に乗せてもらえるのは楽しいし、こうして密着しているのも嬉しい。
だけれども一人で乗れるようになれた方がいいもの。
それにしても他の人相手だったらこんな風に身を任せることは出来ないけれど、クリティド相手なら安心できるわ。なんというか、私の全てを任せても問題がない。そんな相手と出会えたことって本当に素晴らしいことよね。
風が気持ちよくて、馬上からの景色は普段見ているものと違って楽しい。
「遊びに来たわけではないけれど、ついつい景色を楽しんでしまうわ」
「少し遠回りして向かうか?」
「いいんですか? でも……」
私はちらっとゴッチルや同行している者達へと視線を向ける。
そんな寄り道をしても問題がないのだろうか、とそんな不安がわいてくる。
私自身は寄り道出来るならそれはそれで嬉しい。周りに景色をもっと楽しみたいなとそう思っているのだもの。
「構わない」
そう言ったクリティドは優しい表情を浮かべていた。
「なら、お言葉に甘えて寄り道したいです」
私がそう言うと、クリティドは笑った。
それからクリティドがゴッチルたちへと声を掛けて、少しだけ寄り道をすることになった。
クリティドは馬を動かして、そのまま少しゴッチルたちからも離れる。
クリティドが一緒だからこそ周りも安心しているんだろうな。このような自然豊かな場所だと魔物が出ることも珍しくないけれど、クリティドが一緒ならば問題ないと皆、思っているんだろうな。
「綺麗ですね」
周りの光景が綺麗で、思わず呟く
木々も花も、そして聞こえてくる生き物の声も――全てが綺麗。穏やかな気持ちになる。
「そうだな」
「こんな風に馬の上から見る光景って中々ないですもの。なんて楽しいのかしら……! ねぇ、クリティド。屋敷に戻ったら乗馬を習いたいです。こうやって乗せてもらうのも楽しいですけれど、隣り合って一緒に移動出来たらもっと楽しいかなって」
「ではすぐに馬を取り寄せよう。ティアヒムも乗馬を習いたがっているから一緒に習うといい」
「ふふっ、それは楽しそうですわ。でもそれだとクリヒムだけ仲間外れになってしまうわ」
とは言ってクリヒムはまだ小さいものね。私達だけで馬に乗るのを習っていたら、寂しがるかもと思った。
「大丈夫だ。クリヒムのことは私が前に乗せる」
「まぁ! それなら問題ないですわね」
私はクリティドの提案に笑った。それならばクリヒムだけが仲間外れにはならないわ。
私の言葉にクリティドは笑っている。
帰ってからの楽しみがまた増えたわ。私が一人で馬をもっと乗りこなせるようになったら、クリヒムやティアヒムを前に乗せることもできるかも。
そんな腕前になれたら嬉しいわね。
私はまたそんな目標も出来るのだった。




