魔力回路を治すためにはどうしたらいいのか ①
パーティーが終わった後、私は公爵夫人として与えられている部屋の中で本を読んでいる。
「うーん、魔力回路ってどうやったら治るんだろう?」
私のボロボロの魔力回路。
意図的に傷つけられて、そのせいで魔法を以前のように使うこともままならない。
魔法が使えなくても、生きてはいける。王族や貴族は魔法を使える人ばかりだけれども、使えない人もいるもの。
それでもまた魔法を使えるようになれるならばなりたい。
それにね、嫁ぐ前は家庭教師なども雇う余裕はなくて、基本的には独学で学んできた。だけどこうしてクリティド達と家族になって、一緒に魔法の練習をしたりも出来る環境なんだもの。それに望めば魔法使いの先生なども呼べるかもしれないわ! 私も以前よりももっと魔法を上手く使えるようになりたいなとそう思っているの。
こうして心に余裕が出来ると、あれをしたいこれをしたいという望みがどんどん湧いてくる。
私は……自分の死を受け入れて、死のうと思っていたはずなのに、今はすっかりこうやって魔法をまた使えるようになりたいってそう思っている。
生きているだけでも本当に素晴らしいことなのにね。
でもこうして幸せを実感していると、色んな望みが増えていくものよね。
今は公爵夫人という立場で、色んなことが出来るから余計にそうだわ。
魔力回路は、魔法を使うのにとても重要な役割なの。魔力の通り道が傷ついている状況って、あんまりよくないのよね。
今もたまに苦しい時はあるもの。薬を飲んだから悪化することはないけれど、魔法を使えばもっと悪くなることが目に見えているわ。
魔力回路が傷ついた場合に飲むと良いとされている薬草などの記載はある。ただ私って、こういう薬草とかについても全く詳しくないわ! そういう薬草が見慣れないのは、私がバルダーシ公爵家の密命を受けるまで幸せに過ごしていた証だと思う。うん、そういうことを学ばなくても、貧しくても生きていけたのだもの。
ただ薬も飲みすぎれば、身体に悪いものだから適切な量を取らなければならないのだろうけれどね。
将来的なことを考えると、そういうものに関してももっと学んでみてもいいかもしれない。
クーリヴェン公爵領には薬草の群生地が存在していると聞いているわ。
公爵夫人という立場になって、領内をクリティド達と一緒に見て回ることもあるけれど、まだまだ行ったことがない場所が多いの。
公爵家の領地は、とてつもなく広いもの。公爵夫人として、内政にも少しずつ関わっている。まだまだ足りない部分が多いから、もっと頑張りたい。
領民達にも認められる私でありたい。
なんて、そんなことを考える。
薬草の群生地に向かえば、私の身体の問題も解決する手立てが少しずつ手に入るかしら?
それにそれらの知識を手に入れることが出来れば、後に同じような問題が起こった時に解消することもできるだろうしね。
それにしても薬草の種類も本当に沢山だわ。薬師などの仕事をしている方は、全て覚えているのかしら。本当に凄いわ。
でも考えてみれば、私もお菓子に関する知識は幾らでも覚えられる話。やっぱり好きなことだと頭への吸収力って凄まじいものよね。逆に興味がないことだと、全然覚えられなかったりするから。
……薬草とか、調合とかについて学んでみたいなと思うけれどやってみないと覚えられるかさっぱり分からないわ。
クリティドに相談して先生でも呼んでもらおうかしら。
過去の公爵家の歴史も学んだけれど、たまに病気が流行ったりしているもの。そういう時に私も役に立てるようになれたら嬉しいとそう思っている。
クリティドに望まれて、ティアヒムやクリヒムは私を慕ってくれているけれどまだ何も成し遂げられてないから。
私は凡人だと自分で思っているけれど、出来る限りのことはしたいもの。
「公爵領の薬草の群生地は……ここから屋敷からは少し離れた場所にあるわね。視察に行きたいと言ってみよう」
領地夫妻にとって、領内を視察するのも立派な仕事なのだ。
バルダーシ公爵家の問題が片付くまでは、私はその役割を行ってこなかったから領民達にとって私の顔とか周知まだまだされてないのよね!
視察に行くなら子供たちと一緒の方が楽しいかしら?
あ、でもそれだと旅行みたいな感じになって、仕事としては駄目かしら? そのあたりはクリティドと話して決めよう。
私の魔法をクリティド、ティアヒム、クリヒムに見せたい。そこまで上手とは言えないだろうけれど、それでも私の魔法を見たら喜んでくれるはずだもの。
そう思った私は早速、クリティドの元へと向かうことにした。




