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仲良さげな三人を見て、にこにこしてしまう。

「はぁ、なんて可愛いのかしら……!」




 私は今、じーっと窓の外を見据えている。外では子供達――私の義理の息子であるティアヒムとクリヒム、そして弟であるイルミテオが遊んでいる。



 ティアヒムは誰かとすぐ仲良くなるようなイメージはなかった。だけど、なんというかイルミテオとはすぐに仲良くなったみたい。

 私の弟だからというのもあるようだけれど、こうして可愛い子供達が仲良くしているのは本当に素敵よね。

 見ているだけでだらしない顔をしてしまいそうになるわ。




「ウェリタ」



 私がじーっと外を見つめていると、クリティドからそう声をかけられる。

 そんな声かけにはっとして、表情筋を引き締める。私のそんな様子を見て、クリティドはおかしそうに笑った。



「可愛いな」

「ありがとうございます」



 お礼を言って受け入れる。でもまっすぐな視線で褒められると照れてしまうけれど。




「子供達が気になるのは分かる。でも折角私と一緒にいるのだから、こっちを見て欲しい」

「……はい」


 表情がとても柔らかくて、ああ、この方は私の事が好きなんだなというのが良く分かる。




 クリティドは私への愛情を全く隠さない。

 私はそれが……恥ずかしくて、だけれども嬉しい。

 こういう視線を向けられるのは私だけだと知っている。バルダーシ公爵家の問題が解決して、パーティーなどにもクリティドと一緒に出るようになって……。




 他の人への態度と、私への態度が明確に違うことを理解して。

 私だけにこうなんだと思うと、嬉しくて仕方がなかった。私は自分が誰かを独り占めしたいとか、そういう独占欲があるなんてあんまり考えていなかった。




 クーリヴェン公爵家に嫁ぐ前は、ただ生きていくのに必死だった。実家が大変な状況で、私は誰かに恋する余裕なんてなかった。そしてバルダーシ公爵家からの密命を受けて、それどころではなくなった。私は死ぬつもりで、誰かに恋をすることなんて全く考えてなかった。

 でもこうして大好きな人に妻になることを望まれ、可愛い子供達に囲まれて……私はどんどん欲張りになってしまっている気がする。





 口づけを落とされる。





 クリティドはそうやって私に触れるのも好きだ。

 私が嫁ぐ前に聞いていたクリティドの評判は、誰にでも冷たいということだった。それに誰かに自分から触れに行こうなんてあんまりしない人。……今でも私以外にはこうやって触れることなどない。

 ティアヒムやクリヒムにだってこんなにべたべたと触れたりはしていないとは思う。





 本当に私だけなのだ。

 私のことを好きだと言って、こうして口づけを落としてくれるクリティドが私の傍から離れようとしたら……私はどうなるだろうか。

 少し前の私ならクリティドのためになるならと引けたかもしれない。大切な人達の幸せのためなら、私が辛い目に遭ってもいいと……。

 でも今の私は散々クリティド達に甘やかされて、そんなことは嫌だとそう口にするだろうと思った。




 というよりもクリティドがそれを望んでいると思う。だから私はそういうことが起きてしまったらみっともなく抗おうとするんだろうなと思った。

「イルミテオがこうやってティアヒムとクリヒムと仲良くしているのを見られるなんて本当に夢みたいです」

 私はクリティドに抱きしめられながらも、子供達に視線を移す。

 死ぬつもりだった私がこんな光景を見られるようになるなんて、クリティドと思いを交わしてから少し経つのにいまだに夢見心地な気分になる。





「ねぇ、クリティド。イルミテオは今まであまり同年代の子供と親しくすることが出来なかったんです。お金がなくて、機会がなかったのもあって……。だから今度のパーティーでイルミテオが仲良い子が出来たら嬉しいなと思いますわ」

「きっと出来るさ。でも私の義理の弟という立場だから望まぬ者から接触を受けることもあるかもしれない。そのあたりは私も目をかけておく」

「ありがとうございます」




 クリティドの言葉を聞きながら確かにそうよね、と思う。




 今まで両親も弟もあまり社交界の場には出なかった。それはそれだけ余裕がなかったから。それにこれまではそういう場に出ても私達家族が注目を浴びることなどなかった。誰も私達家族に接触してメリットなど感じていなかったから。

 でも今は、私がクリティドの溺愛される夫人であると社交界の場でもそれはもう広まっている。その影響は実家にまで及んでいる。




 クリティドがきちんと対応してくれているから、問題のある家とは関わらずに済んでいる。お父様もお母様もこれまで上位貴族と関わることなどほとんどなかったはずだから、特に気を付けてくれているのだと思う。





 もちろん、私もこうして公爵夫人になるまではそういう高貴な方々と関わることなどなかったわけだけど。

 私はそんなことを考えながら、パーティーが無事に終わるといいなとそんな風に願うのだった。


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