招待状や贈り物
長編版の書籍化企画進行中のため、第二章を開始しております。第一章と違い、のんびりペースですが更新しますでよろしくお願いします
「これが全て私宛のものだなんて……」
私、ウェリタ・クーリヴェンは机の上に置かれた手紙や贈り物を見て不思議な気持ちでいっぱいになる。
それもこれも……私がクリティドに溺愛されているなどという噂が出回っているからだ。不仲と噂をされるよりもずっと、仲が良いと噂される方がずっと嬉しい。ただこんな状況は初めてだから落ち着かない。
バルダーシ公爵家の問題が片付いた後、私達は報告のために王都へと向かうことはしたものの……私はそれ以外に公爵夫人としての働きは正直出来ていなかった。
それは私が……死ぬつもりだったから。
自分の命を諦めて、この屋敷を去るつもりだった。
クーリヴェン公爵夫人として生きていく未来を私は最近まで考えていなかったのだ。だからこそ、パーティーなどにも参加をしていなかったし、公爵家の内政もまだまだ詳しくない。
私はこれから公爵夫人として生きていくのだから、しっかりしないと……!
周りが何を言おうとも私を手放す気はないと、そうクリティドは言ってくれたけれどその言葉に甘えてばかりではいけないと私は思っているの。
だからこの手紙の山にもきちんと返事をしないといけないわ。
それにしてもこんなに手紙をもらうのも初めてだわ。これは私自身への手紙というより、クーリヴェン公爵家夫人への手紙だ。これから私が交友関係をどう広げられるかは私次第だろう。
……やっぱり少し、考えてみると緊張するわね。
社交界に出る時はいつもクリティドや子供達が傍に居てくれるとは思うけれど、私が公爵夫人としてこれから生きていくのならばそのあたりも一人で対応出来るようにしたいわね。
一つ一つ手紙や贈り物を確認していく。
贈り物に関しては高価なものも紛れていて、落ち着かなかった。いや、上位貴族からしてみるとただの贈り物なのかもしれないけれど……!
ああ、でもこういう高価なものにも慣れておかないといけないのかも。
基本的に手紙や贈り物は私に対して好意的なものばかりだけど、実際にどう送り主たちが何を思っているかは分からない。
沢山のパーティーなどのお誘い。
全てには行くことはできないので、どれを承諾して、どれを断るかというのもきちんと考えなければならないわ。
ただ自分一人ではそのあたりが判断がつかないのよね。どちらにせよ、クリティドと一緒に向かうから、予定を確認しておかないといけないわね。
そんなことを考えながら、私は一つ一つ目を通し、執事たちに確認をしながら分類する。クリティドに相談する前に、参加する可能性のあるものとそうでないものの仕分けをしておいた方が楽だもの。
「母上!」
私がそうやって手紙や贈り物の確認をしていると、扉が開いてクリヒムがやってきた。
嬉しそうに私に近づいてくる様子が可愛くて、思わず頬が緩む。
「あら、クリヒム」
「母上、何をしているの?」
そう問いかけながら、私の手に持っている手紙をじーっと見ているクリヒム。
「沢山のお手紙が届いていたから確認をしていたのよ」
「そうなんだー。これ、全部母上への手紙なの?」
「ええ。そうよ。こんなに沢山手紙が届くなんてびっくりしたわ」
「母上、人気者なんだね」
クリヒムは嬉しそうにそう口にして、にこにこしている。
私自身が人気者というわけではないだろうけれど……まぁ、そんなことを子供に言う必要はないので「そうね」と私も同意しておく。
「母上、パーティー行くの?」
「そうね。いくつかは出ることになると思うわ。その時はクリヒムも、一緒に行けたら行きましょう」
「うん! 僕、一緒に行きたい」
クリヒムはパーティーに出るのがおそらく好きなんだろうな。
子供達はあんまりパーティーには出た事はなかったはずだけど、王都でのパーティーでも嫌な気持ちにならなかったみたいで良かったと思う。
これから二人とも公爵子息として、社交界に出ていくことになるのだ。大きくなったら一人で参加することも出てくるだろうし、これからのことを考えるとそういうものが好きであった方がいいわ。
「皆でパーティーに行くの楽しみだなぁ」
「そこでお友達も出来るといいわね」
「んー。お友達かぁ」
「あんまり乗り気ではない?」
私はクリヒムの態度に疑問を思って問いかける。
「たまに嫌な子もいるからね。でも僕、なるべく皆と仲良くするよ」
「そうね。……合わない子はもしかしたらいるかもしれないけれど、なるべく平和的な関係を築いた方がいいわ」
クリヒムは小さくて、無邪気な部分も多いけれどこういう所は大人びていると思う。
そういう所も含めてクリヒムは、可愛いなと思う。
「クリヒムが本当に仲良くしたいと思えるような子と出会えるといいわね。私も心を許せるお友達が増やせるように頑張るわ」
「うん! 母上のお友達、僕も会ってみたいなぁ」
「そうね。ここに嫁ぐ前の友人達とも久しぶりに会いたいわ。その時はあなたにも紹介するからね」
私がそう言うと、クリヒムはにこにことしながら頷いた。
私のことが噂になってから、友人達からも色々と連絡が来ていた。だからそのうち、久しぶりに友人達にも会うことになるだろう。
パーティーへの参加や友人達と会うことなど考えると私は不安もあるけれど楽しみでいっぱいになっていた。




