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王都の公爵邸

 クリティドから王都に行く話を聞いた後、早速私たちは王都へと向かった。正直王都に来ることも久しぶりなので、なんだか高揚した気持ちになる。




 王家への報告やパーティーに関しては緊張するけれども、こうして家族四人で王都に来れたことって嬉しいもの。

 死ぬはずだったのに、私はこうして生きているんだなと実感すると……なんだか夢のようにやっぱり思える。私が願望を抱いて見ているだけの夢だったらどうしようなんて時々思って、生きている実感にほっとする。





「王都の公爵邸もとても広いですね。……それに同じ部屋なんですね」

「手は出さないから安心してくれていい」

「それは心配してません。クリティドが約束を破るとは思わないですから」




 王都の公爵邸の用意されている部屋は、夫婦で同じものだった。それでも特に心配はしていなかった。だってクリティドが私が望んでいないのにそんなことをするとは思わないから。

 それにしてもこれから本当に私は公爵夫人として立つのね。




 ……やっぱり何だか緊張する。





 バルダーシ公爵家の養子になって、クーリヴェン公爵家に嫁いで。死ぬところだったのにクリティド達に助けられて、今はこうして此処にいる。本当に私の人生ってびっくりするぐらい波乱万丈。





「……明日には王家に報告するのですよね?」

「そうだが。何も心配する必要はない」

「クリティドにそう言ってもらえるなら、安心ですね」





 王家への報告をしたその夜にパーティーが行われるのよね。一日で沢山詰め込まれているから、本当に大変な一日になりそうだわ。

 クリティドと会話を交わしていると、部屋の扉がノックされる。それと同時に聞こえてくるのは子供達の声だった。

 私たちが許可を出すと、二人が部屋へと入ってくる。






「母上と父上同じ部屋なんだー。僕も一緒に寝たいなぁ」

「クリヒム、邪魔は駄目だよ」





 入ってくると同時に目を輝かせるクリヒムと、それを咎めるティアヒム。

 二人の様子に思わずくすりっと笑ってしまう。





「いえ、大丈夫よ一緒に寝ましょう。いいでしょう?」




 クリティドに確認するようにそう言ったら、頷いてくれる。



 クリティドが頷くのを見て、クリヒムとティアヒムは目を輝かせる。本当に可愛らしいわ。二人はソファに並んで座る。





「僕、王都のパーティー初めてなんだ。楽しみだなぁ。母上のことを自慢する!」

「まぁ。クリヒムは初めてなのね。私も久しぶりだから緊張しているのよ」





 クリヒムは幼いのもあって、あまり王都には来たことないのだろうなと思う。そもそもクリティド自体が王都に来ることが少ないからだろうけれど。

 ……私がこれからクーリヴェン公爵夫人として生きていくのなら、きっと何度もパーティーに出る形になるのだろうな。数をこなしたら慣れていけるのかしら。





「母上のドレスは父上が選んだんですよね?」

「ええ。そうよ」




 ティアヒムの言葉に私は頷く。




 そうパーティーに参加するためのドレスはクリティドが選んでくれた。それも一目で夫婦だと分かるような色を合わせているものなの。アクセサリーはクリティドの瞳の色である赤い宝石がついているペンダントなどで、それもなんというか……独占欲を露わにされているようで、クリティドの気持ちが見て取れて思い起こすと顔が赤くなりそうになる。




 私達家族に対する噂は様々流れているらしい。

 一部の噂は教えてもらったけれど、きっと私が聞いていないだけでもっと沢山のことを囁かれているだろう。

 その噂が消し飛ぶぐらいの仲の良さを広められたらいいなとは思っているけれどね。






「母上、私達もいますから」

「ありがとう」




 ティアヒムは基本的に心を読む能力は制御しているけれど、気を抜くと声が聞こえたりは当然あるみたい。私が全然、心の声を聞いてもいいと言っているからティアヒムは傍に居る時にリラックスしてくれているのかなと思えて嬉しい。




「僕もね、母上のことを虐める人いたら守るからね」

「私たちが傍で母上を慕っているのを見せるだけでも効果的だと思う」

「そうなの?」

「そうだよ。実際に見せないと人は噂を信じたりするから。私たちが仲が良いのを見せたらそれだけでも母上が動きやすくなるはずだから」




 ティアヒムがクリヒムに向かってそう言って説明をしている。

 よく分からないと言った様子のクリヒムはティアヒムの言葉に目を輝かせている。




「うん。僕は母上のために頑張る」




 そんなことを言っているクリヒムの頭をなでなでした。

 そうしていたらティアヒムも撫でてほしそうに頭を差し出してきて、その頭も撫でた。

 その様子をクリティドが優しい目で見ている。



「父上も、母上に撫でられよう!」




 そんなこんなしていたらクリヒムがそんなことを言い始めた。流石にクリティドは撫でられようとしないのでは? と思っていたのに、案外クリティドはこういうときに乗ってくる。



 そのまま頭を差し出されたので、私はクリティドの頭も撫でた。とてもサラサラの髪で撫で心地が良かった。




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