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063話:教室イベント(アイコン・アリュエット)・その6

 講義終わりの講義室でアリスちゃんとアリュエット君が話をしている。これはアリュエット君の選択イベント。


 アリスちゃんが魔法についてアリュエット君に相談するんだけど、「たちとぶ」でのアリュエット君は水属性しか使えないことがコンプレックスだったので、魔法について話しながらもどこか憂うつそうにしている。理由を聞いてくるアリスちゃんに、それでもアリュエット君は自分のコンプレックスを言えずにいて、選択肢で「もう一度聞く」か「別の話題を振る」で、選択肢によって好感度上昇3段階。

 ちなみに「別の話題を振る」のほうが3段階上昇、「もう一度聞く」が1段階下降。


 なんだけど、いまのアリュエット君はわたしのアドバイスを受けて、そのコンプレックスが幾分か解消されているので、同じ展開にはならないはず。

 どうなるのかまでは読めないけど……。


「しかし、魔法ですか。光の魔法についてはよく知らないですからね」


 アリュエット君はそういうものの、アリスちゃんが聞きたいのは、光の魔法についてではなく、魔法全般についてという。


「そうではなくて、もっと、こう、魔法とは何なのかというか、何が魔法なのかというか」


 アリスちゃんとしても言語化できなくて相当もやもやしているのだろうけど、仕方ないのでわたしは会話に加わる。


「ようするに魔法について知りたいということですか?」


 わたしの言葉に、2人はこちらを向いた。それからアリスちゃんはうなずいたので、わたしは苦笑いをしながら言う。


「わたくしたちよりももっと詳しい方がいると思うのですが」


 というのは天使アルコルのこと。アリスちゃんも言われてわかっているのだろうけど、苦笑いで返したことから、どうやら頼れないのか、答えられないのかどっちかだったのだろう。


「まあ、いいでしょう。魔法とは、前にも話したようにわたくし自身の見解としては『導く力』です。一般的には信仰と教育が必要と言われています……が、そういった基礎的な部分が聞きたいというわけではありませんよね」


 さすがにこのあたりは、王都に来たときに叩き込まれている。こんなことが知りたいわけではないこともわたしは知っている。


「はい、教育を受けて、信仰心を高め、そうしたことで魔法が使えると。だから、平民には使えるものがほとんどいないと習いました」


 一般的な認識としては間違いのない内容だ。わたしとしてもこの世界の知識ではそう教わっているし、それはアリュエット君も同様だろう。


「まあ、平民の方々が魔法を使えない理由が本当にそうなのかは怪しいところではあるのですけれどね」


 わたしとしても、ずっと抱いている疑問であり、それを実際に実験したのがここにいるアリュエット君の母親であるラミー夫人。


「どういうことですか?」


「貴族が受けるのとまったく同じ教育、同じ生活をしていた孤児がいますが、いずれも魔法を開花することはなかったそうです。確かに貴族にもまれに魔法を使えない子供というのは生まれるそうですが、割合を考えれば明らかにおかしい」


 これはラミー夫人から聞いた話であるので、アリュエット君も知っていそうなものだけど、彼の反応は特になかった。


「つまり、貴族と平民の間で魔法が使えない決定的な隔たりというものがあるのではないかと、わたくしは考えています」


 まあ、わたしだけじゃなくてラミー夫人やもっと他にも考えている人はいるんだろうけど、一般的な考えではないことは確か。


「それがなんなのかというのは?」


「わかっていません。それが簡単にわかれば苦労はないでしょう。ですが、だからこそ、それを持つ貴族の責任として『導く』義務がある。だからこそ、わたくしは『導く力』と魔法を定義づけたのです」


 もっとも、それは人によってまちまちだろう。上に立つ力とか支配する力とかそんなふうに思ってしまう輩もいるだろうし、わたしの定義と各々の定義がイコールで結ばれているわけではない。


「ただ、光の魔法……いえ、あなた方の言い方をするなら光の力ですが、これに関してはわたくしたちの魔法とは根本的には別物ではないかと思っています」


 もちろん、闇の魔法に関しても同様に思っているけど。


「根本から違う……?

 でも同じように魔力を消費して結果をもたらすという部分は変わりませんよね?」


 と聞いてきたのはアリュエット君。まあ、確かに彼の言うことももっともである。魔法という魔力を消費して対価を得る力。その仕組みは確かに同じだろう。


「仕組みは同じですが、システムが異なるというか……。説明が難しいのですが……」


 なんというか、わたしの中でも仮説の域を出ないし、説明するのが非常に難しい。ラミー夫人なんかと話し合ってじっくりと仮説をまとめていこうと考えていたんだけど。

 天使アルコルが称していた「グランシャリオ」。七柱の神々には、たぶん主神格と神格に分かれる……と思う。たぶんとか思うとかあいまいで申し訳ないけど、絶対にそうと断言できる根拠はない。

 でも太陽神ミザール様と月の神ベネトナシュ様は、明らかに属性をつかさどる神々とは一線を画している……ような気がする。

 そしてその二柱の神がつかさどっているのが光の魔法と闇の魔法。

 だから、主神格がもたらすシステムと属性神がもたらすシステムがあって、魔力を消費して結果をもたらすというツール自体は同じものだけど、発現とか選定とかそのあたりのシステムは異なっているのではないか。


 それがわたしの考えた結果なんだけど、そこに証拠がまったく存在しない。何せ情報が少ない。特に光の魔法と闇の魔法に関する情報が。

 ただ、アルコルはかたくなに「光の魔法」とは称さずに「光の力」と呼んでいた。これは「たちとぶ」でも同様だったし、それを考えると、属性神が与える「魔法」と区別するためにあえてそう呼んでいるのではないかとは思う。

 本当はアルコル自身に直接聞ければありがたいんだけど、あいにく何度かアリスちゃんに頼んでみたけど、向こうがどうにもわたしと対話することを渋っているようだ。


「よくわかりませんでしたけど、とにかく、この力とカメリア様たちの魔法は別ということですか?」


「前に、『思いの力』と評したと思いますが、そうですね。わたくしたちの魔法が『導く力』であるなら、光の魔法も闇の魔法も『思いの力』と呼ばれるべきものだと思います」


 そう、それが善にしろ悪にしろ、「思いの力」あるいは「心の力」と呼ぶべきものじゃないかと思う。


「闇の力も、ですか……?」


「アリスさんが何をしたいと思うかによって光の力が応えるように、闇の力もまた同様だと思います。それが善い思いか悪い思いかは置いておいて、どちらも『思いの力には違いないでしょう?』」


 とはいうものの、実はわたしも闇の力にはそんなに詳しくなくて、いくつかの対策を考えているけど、それはあくまでマカネ・スチールに用いられた対策であって、クロガネ・スチールにも通じるものなのかはわからない。


「まあ、こんなふうに長々と説明しましたけど、一番重要なのはやっぱり『心』なのかもしれませんね」


「『心』ですか」


 アリュエット君がそうつぶやいた。だから、わたしは笑って続ける。


「結局、魔法はその人が描いたものによって変わります。わたくしは『導く力』と称しましたけど、人によってはそれを善くも悪くも使えます。光の力とはシステムが異なるかもしれないと言いましたが、それでもそこは変わりません。使う人がどう使いたいか、何をしたいかで魔法は様々な形を作ります。ですから『心』かもしれません」


 魔法を傷つけることに使う人もいれば、経済の発展のために使う人もいるし、人を助けるために使う人もいる。使い方、使われ方は人によって様々だ。

 その言葉に対して、アリュエット君は、何か思うところがあったのか小さく笑った。わたしが首をかしげていると、彼は「すみません」と言ってから答えた。


「魔法は『導く力』と言っていましたが、カメリア様は魔法などなくとも『導く力』というのを持っているように感じたので」


 それはなんというか……、アドバイスをしているおせっかいさんという認識なのか、それとも……カリスマ性とかそういう話なのか。


「確かにそう思います。カメリア様は、その……、ただ助けるとか救うとかじゃなくて、なんというか導いてくれているように思えるんです」


 それを本人の前で言うかな?

 というか、まあ、導くというか誘導しているというか、わたしの都合よくなるよう動くように導いてはいるけども。


「お2人とも導かれてばかりではいけませんからね。特にアリュエット様は、ジョーカー家を継ぐ必要があるのですから、導く側に成長していただかないと」


 そもそも、わたしは処刑と戦争を回避したら自由に生きたい。そんなに人を導いてばかりいられるか。


「うっ、そ、その通りです」


 しゅんと縮こまるアリュエット君。自覚があるなら結構。当主になるのに、人に誘導されてばかりの人間になっていては困るだろう。むしろ、人を動かす側にならなくてはならないはずだ。


「アリスさんも、いまはわたくしが私情も含め、わたくしの目的のためにいろいろやっていて、その過程で偶然導かれているように感じているだけです。わたくしにもできる限界というものはありますから」


 まあ、あとは王子にバトンタッチする形でアリスちゃんとくっつけるので、いざとなればわたしの変わりの導き手は王子がやってくれるだろうけど。


「わかっています。いつまでもカメリア様に頼っているわけにはいきません。それだときっと……。ですから、わたしは頑張ります」


 何を頑張るのかはまったくわからないけど、できれば王子との恋を頑張っていただけたら助かる。というかわたしにとっていいほうに頑張ってほしい。


 まあ、このイベントはアリュエット君の役割を完全に奪ったので、アリュエット君との好感度上昇は回避できた……はず。


 次が選択パートの大きいところは最後。できればそれが終わった時点で、王子ルートに確定していたらうれしいんだけどね。

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