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244話:1か月後へ向けて・その3

 乙女ゲーム。一口にそう言っても、実は様々な種類が存在する。


 例えばグランシャリオ・ゲームズが出していたのは西洋風ファンタジー系と中華風ファンタジー系、つまるところ、この世界のお話ではあるけれど、大別するとそういうことになる。


 でも、わたしがプレイしてきた乙女ゲームは、グランシャリオ・ゲームズのものだけではない。例えば大正ロマン風物語「華散りて、君思ふ」、新撰組恋物語「誠狼蝶」などの歴史系。例えば、現代学園部活ものの「空高く鳴り響け! ~思いあふれる悠久のエール~」とかアイドル学園もの「あいどり ~アイドルドリーミング~」などの現代系。例えば、アメリカセレブものの「バグドッシュハワー」、シチリアを舞台にした後継争いに巻き込まれた系の「ファミリアン・ルモローゾ」の外国系。他にも御伽噺モチーフの「お伽迷宮プリンスベーゼ」とかSF交じりの「真皇宇宙戦記アンナリーゼ」とか。


 「たちとぶ」ほどではないものの、熱中した作品はいくつかあった。


 なぜそんな話をしているかと言うと、そんな作品たちの中に、ミステリというかサスペンスなのかな、ちょっと変わったゲームがあって、わたしの屁理屈や思考回路の何割かは、そのゲームの影響を受けていると言っても過言ではない。


 追及ファンタジー「z!nbquiz」。乙女ゲーム要素よりもロジック要素に寄ってはいるのだけれど、ストーリーはしっかりしていて、よく考えれば考えすぎだろとなる仕掛けがキレイにハマっていたのと、主人公のキャラクター性がウケて、ヒーローたちがことごとくやらかして追及されているにも関わらず、評価は結構高かった。


 そして、その物語に出てくる黒幕、アンダスタン博士は、味方を演じ続けて、その実、裏ではヒーローたちを貶めて、主人公を手に入れようとしていた。

 徹底的に尻尾を見せず、狡猾に、あらゆる策謀を尽くして。


 それがいまのアーリア侯爵家と重なるような気がした。そう、「たちとぶ」とかにヒントがないのなら、他のゲームからヒントをもらおうということだ。もちろん、明確な答えにつながるとは思っていない。

 アンダスタン博士の目的は、主人公を手に入れることだったわけだけれど、行動原理としては、主人公に気付かれないようにするために徹底的に隠すということで、プレイヤーは神視点からアンダスタン博士が怪しいということに気が付ける作りになっていたけど、主人公視点では、唐突にヒーローがアンダスタン博士を追及し出すので、その段階に至るまで気付かなかったことになる。


 追Q(ついきゅー)システムでアンダスタン博士の行動を暴くと、主人公を欲する理由やヒーローたちとの因縁、壮大な計画などが明らかになるけど、いまはそこを置いておいて、参考にしたい点は、リカバリー方法。

 博士は途中で何度も想定外の事態を迎えていて、まあ、主に主人公のせいなんだけど、それをどうにかリカバリーする。






「というわけで、計画修正能力の高い人物の思考を真似ることで、最悪の事態を想定するということを考えたのですがどうでしょう」


 一か月後の作戦。これはもう絶対の事項としてわたしたちの中での共通認識になっている。だとするなら、それに向けて、それが失敗したときのことを考えるにあたり、相手の思考を考えようという話。


「どの程度、参考になるかは分からないけれど、聞くだけ聞きましょう」


 そうは言うものの、あのゲームの舞台は現代なので、それをベースですべて話すことはできないので、かみ砕いて話す。


「そうですね、その人物は、徹底して自分の行動が明るみに出ないようにしていましたし、実際、近くにいた人でも全く気付けませんでした」


「どうやって、そうしていたのかしら」


 アンダスタン博士のトリックというか仕組みはいたって単純なものであって、わたしも似たようなことをしたことがあるのだけれど。


「基本的に、普段は派手な格好で印象付けて、活動時はいたって普通の格好をすることで気づかれにくくしていたようですね」


 アンダスタン博士は、普段、いついかなるときもコートを着込み、モノクルと帽子、博士というよりは教授というようないで立ちだけれど、博士を自称し大きな声と大げさな身振り手振りを多用する。

 しかし、犯人として行動するときは、それら一切を捨てた普通の格好に、普通の動き。

 わたしも子供のときは、ドレスを毎回変えて、印象を付けないようにしていたけれど、それは実は、アンダスタン博士の行動を参考にしていた。


「つまりは、ある面を印象付けることで、人の認識をすり抜ける手法ですね」


 手品とかそういう類に近いのだけれど、それでどうにかやってのけるのが凄い。プレイヤーには、章と章の間に入る暗躍パートでしだいにアンダスタン博士だと何となくわかるような仕組みになっていた。


「それをアーリア侯爵家に当てはめると?」


「4人の伯爵たちの行動を印象付けるとか、そういう感じでしょうか」


 まあ、別に行動原理が同じわけではないので、当てはめられるとは限らないのだけれど。


「それで、その人はどのように暗躍し、どのようなことを、どうやって成したのかしら」


「簡単に説明しますと、ある女性の父親の友人と偽り、女性に近づいてきた4人の男性を貶め、女性を我が物にしようとしたわけですが、具体的な行動としては……」


 虎頭(ことう)久四郎(きゅうしろう)は、痴漢を捕まえたとしてもてはやされたが、痴漢冤罪だったのではという疑惑とともに、久四郎の仕込み説が浮上し、名声が貶められていく。実は痴漢はアンダスタン博士の仕込みであり、博士の知人の弁護士が絶対無罪にするという約束の元、痴漢のフリをさせたのだった。つまり、痴漢のような行動をしていたものの、冤罪ではあるのだけれど、その行動自体は非常に迷惑な行為であることは立証されたため、久四郎の行動自体も正しい行動だったと認められた。


 果梨(はてなし)(ただし)は、モデルとしてもてはやされていたが、本人はあまり乗り気ではないようだった。そんなある日、事務所の社長が正をとある雑誌の専属に推薦する。本人は当然断るが、それがいさかいの原因となり、事務所と雑誌社に溝が出来たが、それが実は、雑誌社に正の元カノがいて、正はそれがイヤで断ったといううわさが流れだした。事実、正と過去に付き合ったという女性が雑誌社にいた。実は、その女性は正のストーカーであり、付き合ったと自称しているヤバい人物であり、正が距離を置きたがるのも当然だが、それをあえてアンダスタン博士が女性をそそのかすことで、ややこしい事態に発展させて、雑誌社と事務所の関係が崩れるということは正とあなたの関係性が本当であると世間に信じさせることができるとか言葉巧みにそそのかしていた。結局、女性が自爆する形でストーカー行為の証拠がバレて終わる。


 門戸(もんど)暗座(あんざ)は、ストリートミュージシャンとして活動していたが、ある日、彼にCDデビューのオファーが来る。そうして出されたCDに収録されていた曲が、ある曲のパクリなのではないかと言われるようになってしまい、契約打ち切りの危機に。実は、暗座の曲を発表より先にアンダスタン博士が入手し、作曲に行き詰っている別のミュージシャンに提供した。そのミュージシャンは、自信が作曲に行き詰っていること、才能が枯渇し始めたことを公表したくないため、他人から提供を受けたとは絶対に口にしない。結局、暗座がそのミュージシャンのファンであったことから、暗座への後ろ暗い気持ちもありミュージシャンが吐露し、終わる。


 遠鳴(とおなき)(かい)は、主人公の友人の兄であったが、ある日、妹に手を出したとして学校中にうわさが流れるようになる。界も、主人公の友人である妹も、それに対して否定も肯定もしないという奇妙な状態が続いた。実は、界も妹も謎の脅迫者から脅されていて、界は自分が妹に手を出したというのを否定したら主人公と妹がそういう関係にあるといううわさが流れると、妹は兄が主人公に暴行したといううわさが流されるとそれぞれ脅されていた。さらに、脅されていたことが露見すると、それが2人の自作自演であるとうわさがながされるようになっていたらしい。結局、主人公が友人に手を出したという別のうわさを流して大混乱の末に、すべてウソだったのではという流れにした。


 これらの暗躍においてアンダスタン博士の怖いところは、すべて主人公のそばで、解決に導くように懸命に手伝ってくれると言うところである。


「つまり、演じることができる、使い分けることができるのが恐ろしいのです」


「一挙手一投足に油断してはならないってことね。……いままでと大して変わらないじゃない」


 確かに、いままでも常に警戒するのは変わらないけども。


「それにしても、あなたが知る……、知るはずのない知識の数々の中には、本当に良く分からないものも多いわね」


 まあ、ここではない別の世界のゲームでのお話だし。当然、ラミー夫人の理解できないものは多くある。できるだけこの世界に合わせて話したつもりだけれど。


「それで、ここから最悪の事態を想定するとどうなるのかしら」


「……もっとも最悪の場合は事前に計画を見破られて、向こうの計画前倒しか、こちらの計画に合わせて復活させることですかね。その場合は、注意をする必要があるのは、おそらく……」


 わたしは、頭の中にアンダスタン博士を宿すように、相手の取り得る行動を想像した。


 結果、いままでに想定していたものと大して変わらないという。

どうでもいいメモ

・大正ロマン風物語「華散りて、君思ふ」

:普通の少女、雀部桜を主人公に繰り広げられるハイカラストーリー


・新撰組恋物語「誠狼蝶」

:団子屋の娘はるを主人公に新撰組たちの日常にフィーチャーしつつ、しだいに戦いに巻き込まれていく…


・現代学園部活ものの「空高く鳴り響け! ~思いあふれる悠久のエール~」

:吹奏楽部に入った転校生の少女、笛吹遥香を主人公に同じ部活の男子や応援する野球部・サッカー部などの男子との恋愛物語


・アイドル学園もの「あいどり ~アイドルドリーミング~」

:アイドル養成学園に入学した愛川美鳥(名前変更可)が学園のアイドルたち6人と繰り広げる物語

:2人組ユニット「炎歌」の火野進・湯川火威、3人組ユニット「ディメンション」の間島遊仁・熊田重道・エリック中村アンソニー、学園の頂点「星」の星川仙里が攻略対象

:ファンの間では「アイミン」(アイドリだと他のゲームと被るため)と呼ばれ、ファンは「あい民」と呼ばれる


・アメリカセレブものの「バグドッシュハワー」

:セレブの娘ジャスミンがハリウッド映画を作るために、イケメン俳優たちと恋愛しながら映画撮影していくお話


・シチリアを舞台にした後継争いに巻き込まれた系の「ファミリアン・ルモローゾ」

:シチリアに旅行に行った少女アヴローラが後継者争いの抗争に巻き込まれてしまうお話


・御伽噺モチーフの「お伽迷宮プリンスベーゼ」

:不思議な少女キャロルが様々な王子とイチャイチャする物語


・SF交じりの「真皇宇宙戦記アンナリーゼ」

:宇宙統一戦争の最中、二大勢力の片側を担う女帝の後継者に選ばれたアンナリーゼが主人公


・追及ファンタジー「z!nbquiz」

:謎解き好きの少女・九伊豆クエスを主人公に、人々を「追Q」する追及現代もの

:追及「ファンタジー」のファンタジー部分は主人公が「追Q」をするとき、相手の深層心理に潜り込む魔法を使うため

:z!nbはひっくり返すとquiz

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