35話
モンハンにハマっていました。パソコンも買い替えたおかげでものすごくハマってしまいました。
大変お待たせしました。
それはさておき、なろう作品では最近ダンジョンものにハマっているので、メイド悪魔書きつつ何か作れればいいかなと思っている所存です。
35話
気づけばあっという間に1ヶ月が経っていた。研究協力やら検査やらで暇だと思う時間はなかった。
ただ──この1ヶ月、TISをやらずに居たことで、私が思った以上にこのゲームを楽しんでいたことに気がついた。
ことあるごとにTISがやりたいという感情が湧いたのだ。
勿論、私自身、自分の身体の変異は興味深い研究対象だったので、進んで協力したわけだが。
それでもまあ、徐々に欲求が膨らむのは仕方ないわけで。
それはさておき、観測結果。この1ヶ月、私の髪は一切変化しなかった。そのため私の髪は仮想空間にて変化している可能性が高いと結論づけられた。
毎日マイクロ単位で測定されていたのに加え、また私がTISを始めてからこれまでの期間も踏まえると、やはり原因は仮想空間──TISによるものとのことだ。
というわけで今日は、仮想空間後遺症対策本部の人たちに観察されながらのプレイとなる。
他人に観察されながらやるのはちょっと気恥ずかしいけど、自分の身体のことだしつべこべ言ってられない。
彼らに用意してもらったデバイスで認証を行い、TISにログインする。
「──ウロボロス。死と再生を司る神、その名は伊達ではないということか」
ログインして早々、忌々しいと言わんばかりの、ご主人様の声が私の耳に入る。
あの威圧感に負けることなく悪態をつけるその様。ご主人様の成長を感じて、私思わず泣いてしまいそうです。
まあ、そう悪態をつく気持ちもわかる。テンドウによって切り裂かれた空間が、一瞬にして元に戻ったのだ。
時間の巻き戻し──それだけの権能のようには思えないが、とりあえず使わせただけよしとしよう。
辺りを探る限り、戻っているのは物のみ。死した人を戻すことはできないようだ。
ブラフの可能性──これは捨ておこう。現状気にする意味がない。
「ヒマリ……ヒマリなのか?!」
テンドウはウロボロスを見上げながら、大ききな声で叫んだ。
まさか本当に依代にされているとは思っていなかったのだろう。というより、一縷の望みに賭けていたという感じだろうか。
ああ、現実とはなんて残酷なのだろうか。テンドウに心底同情してしまう。
そんなテンドウの悲痛な叫び声に気付いたのかどうかは神のみぞ知るところだが、タイミングよく彼女らはゆっくりと空から降下してくる。
『──剣神よ。悪魔に魂を売ったか』
「ウロボロス…ッ!貴様、どの口でそれをほざくか!」
無感情に淡々と疑問を呈するウロボロス。それに対してテンドウは激昂し、一瞬でウロボロスに斬りかかった。
冷静さを欠いた彼の一撃。当然そんなものがかの神に当たるはずもない。
しかもよりによって、ヒマリの手によって防がれてしまった。
「な……!」
自らの攻撃が娘であるヒマリに防がれたことか、あるいは自ら娘に切り掛かってしまったことか。
こんな場面で自責の念に駆られてしまったのか、彼は刀を地面に落としてしまった。
ははは。なんて、なんて人間らしい神様だ。そんなんだから、心に大きな隙ができてしまうんですよ。
「──お父様。大変心苦しいですが、いまは寝ていてください」
いままで黙っていたヒマリが、口を開いた。そして──
「【神罰】」
父親への容赦ない一撃。無防備にそれを叩き込まれたテンドウは、その身を焼かれ、大きく吹き飛ばされた。
いくつもの家屋を破壊し、ドォンと大きな音を立てて白亜の壁に叩きつけられていた。
契約は切れていない。ということはまだ生きている。よかったよかった、彼にはまだ使い道がありますからね。
「……やはり使い物にならないか。お前に全て任せることになるが、ボクは下がるぞ。この獣が気がかりだ」
チラリとアルジェントに目を向けるご主人様。
視線を向けられた当の本人はウロボロスが現れてからというもの、瞳を閉じて俯いていた。
震え等はなく、怖気付いていたりするわけではないようだ。その証拠に、じわじわと彼女の神気が増加していっているのが見て取れる。
どうやら、同期が始まったようだ。
「さて、私たちの要はアルジェントです。守りますよ」
ご主人様に聞こえるように、大きく声に出す。私でも気づくのだ。ウロボロスがアルジェントの変化に気づかないはずがない。
『そやつは──どうやら厄介なモノを連れているようだな』
先ほどまでは目も向けていなかったアルジェントに、ウロボロスは視線を向けた。
まるで私とご主人様は眼中にないような仕草。癪に触りますね。
「おや、これはこれは。アルジェントだけでなく、私にも目を向けて欲しいところですが」
『ふん、災厄の悪魔が何をほざく。貴様の存在は目を向けなくともわかる。全くもって忌々しい…』
だが、と言葉を続けようとするウロボロスに、ヒマリが待ったをかける。
『神は神にしか──』
「──ウロボロス。敵に易々と情報を与える必要はありません。ましてや相手は災厄の悪魔、なにが致命になり得るかわかりません」
ふむ、想定外がこうも早く勃発するとは。まさか、神と契約者が対等だなんて。
「おやおや、これは物寂しいことを仰る。私としては、もっとお喋りに興じていたいところですが」
「わたくしたちが話すことは何もありません。お前が神をも惑わすことは以前から聞いていましたが──先ほど理解しました。これで復活したばかりとは、末恐ろしい」
私の言葉にも毅然とした対応をとるヒマリ。だが、まだまだ甘いようだ。言葉の節々に神、そしてその契約者特有の傲慢さが滲み出ているよ?
「ふふ。以前から聞いていた、ですか。一体全体、そのようなことを宣った預言者は今どこにいるのでしょう?」
私がニッコリと笑みを浮かべてヒマリに問うと、彼女は一瞬にしてその表情が無となった。
「どうやらわたくしも、人のことをとやかくいえなさそうですね」
ペットは飼い主によく似る、あるいはその逆か。契約者にもそれは当てはまる。知らず知らずのうちに影響されてしまうのだ。
しかしそこにもう、先ほどのような傲慢さはない。ウロボロスも何故か黙り込んでいるし、そろそろ開戦だろう。
「それでは自己紹介と行きましょう。私、ご主人様の忠実な僕──災厄の悪魔改め、イアと申します。そして私は、ウロボロス。あなたを殺します」
彼女らに微笑みかけながら、私はゆっくりとお辞儀をする。
さて、はじめるとしよう。




