26話
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26話
──剣聖。それは剣を極めしモノが与えられる称号であり、それゆえに純粋な剣技において剣聖に勝るものは存在しない。
「……剣聖よりかは、どっちかっつーと剣神じゃねえか?神気が身体から漏れてんぞ」
オレはジジイの言葉を鼻で笑い、キッと睨みつける。
神気を纏っておいてたかが剣聖だと?オレをバカにしてるのか?
「たしかにこの身は剣神に至っておるが、与えられた称号は剣聖なのでな。剣聖を名乗らせてもらっておる」
「……とんだ詐欺じゃねえか」
だからこのジジイはこんなにも違和感がすごいのか。
コイツ自身が神の筈なのに、まるで神に力を与えられた人のような気配をしているのだ。
……ここは少し情報を集めるか。アレは最後の手段だし、イアのためにできる限り情報を集めよう。
「しっかしそうなるとわかんねえな。お前みてえなジジイがウロボロスに従ってる理由が」
ふむ、とジジイは呟くと、顎に手を当てニヤリと笑った。
「情報収集かの?まあ別嬪な娘さんじゃしの、特別になんでも話してやろう。──簡単にいえば、ワシがウロボロスの信者じゃからな」
「嘘だな」
「ほう、なぜ嘘じゃと?」
「お前の魂には他の神の匂いが混ざってない」
普通神を信仰したものの魂には、その信仰した神の匂いがつく。だけどコイツからは他の神の匂いがしない。
それに加えてこのジジイは確実にウロボロスの手下だ。にも関わらずコイツ自身にはウロボロスの匂いが混ざってない。
つーことは何かしらの利害の一致で契約したか、あるいは──
「人質か?」
「……さて、のぉ」
ジジイのあからさますぎる返しに、思わずオレは呆けてしまった。
まるでこのジジイは、オレにわざわざ「自分は人質によって仕方なく従ってます」ってのを伝えてぇみたいな……。
ジジイが会ったばっかのオレにわざわざそれを伝えたい理由はなんだ?
とりあえず、これはイアを呼んだ方がいいのか……?
イアに念話を入れようとした次の瞬間、のほほんとしたジジイの空気が剣呑なものに変わった。
「ホッホッホ。どうやらウロボロスの気が変わったようじゃ。お主を痛めつけて悪魔を呼べと仰せじゃ」
表情や佇まいは先ほどと変わっていない。けれど今のジジイからは──明確な殺意が溢れ出ていた。
「神獣を傷付けるような罰当たりなことはしないんじゃなかったのか?」
「すまんのぉ、いまのワシじゃウロボロスの命令には逆らえないんじゃよ」
今のワシじゃ、か。ってそんなことはどうでもいい。ジジイがやる気ってんなら、こっちも手札を出し渋ってる場合じゃない。
殴ったり蹴ったりの物理的な攻撃が効かねえなら、バカでけえ音ならどうだ!
「ホッホッホ。なに、先手くらいはゆ──」
「先手必勝だ!──ガオオオォァァァァアアア!!!」
点でダメなら面で押す。オレは神力を込めて咆哮した。ビリビリビリと空気が震撼し、大地が揺れ、砂煙が舞う。
音は流石に剣じゃ切れないはずだ。そんな馬鹿げたこと、聞いた子もないからな。
「──ホッホッホ。娘にしては中々に威勢のある声じゃの」
「ケッ、傷ひとつないじゃねえか」
「流石に成り立てに傷つけられるほど柔じゃないわい」
そもそもなにも効いてすらいなかった。オレの攻撃は赤子並に軽いらしい。
だが先ほどと違って、やつには変わった点がある。ジジイは抜いたのだ。刀を、鞘から。
なんの変哲もない刀。神力などの強大な力が込められているわけでもない、どこにでも売っていそうな刀だ。
それなのに──震える。身体がガタガタと、震える。
これが武者震いなのか、恐怖による物なのかはわからない。ただわかるのは、アレに切られてはならないと言うことだけ。
「すまんが、腕の一本ぐらいは許しもらうぞ」
オレが認識できたのは、ジジイの姿が一瞬だけブレたことだけだった。
気づいた時には奴はもうすぐ目の前に迫っており、こちらに刀を振り下ろしていて──
「あああああ!!!」
もはや本能ではなく反射的に両腕を硬質化させ、刀に叩きつける形で突き出した。
あぶねえ間に合った、と思ったのも束の間、その剣戟はなんとオレの体をすり抜けたのだった。
それはそうだ。別に剣聖だからといって、正々堂々真正面からくる決まりなどないのだから。
「クソッ!まさか、幻体──」
「ホッホッホ。後ろじゃよ」
体制を崩していたオレに、それを耐えうる術はなかった。
まさに経験不足。オレの脳内はその言葉一色だった。
どんなに後悔しようが当然ジジイの刀は当然止まるはずもなく、その狙いは腕などではなくオレの首に向いていた。
あ、終わった。そう思い、反射的に目を瞑ってしまった瞬間──ゴトン、というなにかが落ちる音がした。
おそるおそる目を開き、音のした方へと目を向けると、そこには──
「……ぇ」
──イアの頭があった。首から下がなくなった、イアの姿があった。
いや、イアの身体ははある。すぐ真横に、首から上をなくした状態で直立不動していた。
「…………え」
イアが死んだ?あの殺しても死ななさそうな悪魔が?オレを庇って?魔物であるオレ如きを庇って主人様が死んだ?
頭が混乱している。呼吸が荒くなる。背筋が震える。尻尾が自然と足に巻きつく。
「……そいつは、災厄の悪魔かの?」
なぜか斬った張本人であるジジイも信じられないものを見る目で、首と身体が別れたイアを見つめていた。
震える両手でイアの頭を持ち上げると、虚ろで焦点のあっていないイアと、目があってしまった。
イアは──死んでいた。
ディスコの画面共有で友達のやってるダンガンロンパ1見てたんですが、メチャクチャ面白かったです




