圧倒的
【主要登場人物】
リン・フォワード
(主人公、男、白髪、825歳)
フィロ・ネリウス
(猫獣人、女、褐色肌、黒髪、16歳)
ジェット・エーギル
(傭兵、酒と女好き、男、金髪、28歳)
オウル・P・マギー
(妖人と人間の混合種、ハッカー、男、青髪、17歳)
カレン・クジョウ
(元工作員、針使い、女、赤紫髪、23歳)
ロック・ロック
(元Riバース、元二重人格、改造、男、緑髪、21歳)
【サブ登場人物】
ボイル(Riバース、?位)
イズミ(Riバース、3位)
ドム(Riバース、5位)
覆面女(Riバース、29位)
リンがイズミの剣に斬られる数分前、カレン達は合成獣ドムのまえに、劣勢に陥っていた。
カレンの麻痺針も、ジェットの銃やナイフも、フィロの爪も、オウルの支援も、ドムには無意味。
ダメージは1ミリも与えられない。
お世話になった、一緒に酒を飲んだ、笑って過ごした、からではない。
合成獣は強い。
皮膚は硬く、爪や牙は鋭い。
パワーやスピードも向上しているし、好戦的になっている。
カレン達は圧倒的不利なのだ。
この4人では勝てる見込みはない。
この戦いは、始まる前から勝敗が決まっていたということ。
これは、リーダーであるリンの判断ミス。
カレン達はまた一人また一人と、倒れていった。
「もう、だめ………」
「強すぎ……」
「あ…う……」
「クソが……」
立ち上がる者がいないことを確認したドムは、一段と大きく咆哮を上げる。
ゆっくり、ゆっくりと歩いていき、倒れた者の喉元を掻っ切ろうと爪を近づける。
振りかざしたその手は、喉元には届かず、リンの足蹴りによって阻まれる。
リンはカレン達を遠ざけたかった。
しかし、2強を前にして、それはできない。
それに熱量値を上げたからといって、筋力は変わらない。
まとめて運ぶことはできないし、1人ずつ運ぶような赦された時間はない。
その場での応戦。
獣爪と氷剣の強襲を避けるのではなく、弾いていく。
弾けない斬撃は、全て受け止めた。
「はぁ、ちっ、やばいな」
ジリ貧。
体力や気力に関しては、リンの方が圧倒的に上だ。
ドムもイズミも強化され、一般的な人間より遥かに早く動けるし、長時間の戦闘を可能にするが、リンには敵わない。
最初から、この2対1だったなら、最終的に勝つのはリンだ。
しかし、この場には倒れた仲間達も含まれる。
彼らは先ほど、ドムに傷を負わされた。
治療をしなければ、失血死するかもしれない。
一刻も早く、この場から全員を離れさせる必要がある。
ボイルや覆面女が虚を突いてくる可能性だってある。
時間はないし、手も足りない。
2人の攻撃を同時に受け止めた際に、パンッと手が一つ叩かれる。
手を叩いた主は、ボイル。
ずっと上から観戦していたボイルは、2人に戦闘をやめさていた。
「十分だ。もっと上もあるようだが、また今度見せてくれればいい。さぁいこう、リン」
「それは、何の冗談?」
「冗談なんかじゃない。俺の、俺達組織の事をもっと知りたいだろう?ここじゃあ、話せない。組織に来てもらいたい。俺にはお前が必要だ」
「生憎、僕はボイルを必要としていないんだ。旧友にかける言葉じゃないけど、僕は嫌いだ」
「そうか」
「ああ」
「そういえば、ユキも会いたがっていたぞ」
「はっ?お前また何言って……」
「嘘じゃない。自分の眼で確かめにきたらいい、さぁいこう」
甘い言葉に心が揺れ動く。
蝶が花の蜜に誘われるように。
それを壊してくれたのは、激しく鳴り響く、クラッシュ音。
10人乗りの大型車は、猛スピードを出し、岩場を乗り越え、空を飛んだ。




