真実
【主要登場人物】
リン・フォワード(主人公、男、白髪、?歳)
フィロ・ネリウス(獣人、女、黒髪、16歳)
ジェット・エーギル(傭兵、男、金髪、28歳)
オウル・P・マギー(ハッカー、男、青髪、17歳)
カレン・クジョウ(?、女、赤紫髪、23歳)
ロック・ロック(?、男、緑髪、21歳)
都市から赤牛亭までは、それほど距離が離れているわけではない。
昼前には着いたが、光景は見るも無残だった。
数ヶ月前まで繁盛していた面影はない。
誰かが意図的に滅茶苦茶に破壊した、そんな状態。
建物には大穴がいくつも空いており廃屋同然で、人がいる形跡はなかった。
「……」
声を発することができない。
フィロだけは、生存者がいないか、大声で探し回っている。
「情報が錯誤していて何が本当か分からないわ。一応、生存している従業員さんの居場所は資料にあるのだけど、行ってみる?」
沈黙は重くのしかかる。
誰がこんな酷いことをしたのだろうか、許されることではない。
僕達一行は生存した従業員さんの所に向かうことにした。
その人は陰都の都市内にいた。
本人の居住所であるが、居留守を使っているようだ。
熱源感知で人がいることに間違いはないが、応答はない。
面会はできそうにない。
今日のところは、一旦戻ることにした僕達は古家へと踵を返した。
「どうします、これから」
オウルの問には誰も答えない。
足音だけが奇妙に響き渡る。
「あの従業員さん以外は、この近くにいないんですか?」
カレンも答えはしなかった。
「オウル、もういいぜ。今、空気を良くしようとする努力は無意味だ。リン、お前から聞けよ。分かってるだろ?」
「あー、そうだね」
僕は、後ろを歩くカレンを見た。
「全部、情報は出てるんでしょ?教えてくれない?カレン」
「本当にいいの?知らないほうがいい事も世の中にはあるのよ」
「いいよ、覚悟はできてる。フィロもいいよね?」
「……うん」
「そう」
「で、誰が犯人なのさ?」
「………ドムさんよ」
その言葉を聞きたくはなかった。
嘘であってほしかった。
しかし現実は無情。
カレンが隠そうとした事実は何事にも受け入れ難い。
「経緯とかも知ってるの?」
「そうね、ドムさんに娘さんがいたでしょう?彼女の手術が失敗したことが原因らしいわ」
「じゃあ、アイちゃんは…」
「亡くなったわ」
フィロは道端で大泣きしていた。
無理もない。
あんなに仲良く遊んでいたんだ。
妹のように。
「娘さんが亡くなって、病院側に猛抗議。異議は認められず、1週間後に戻ってきたドムさんは豹変していたそうよ。店番をしていた奥さんや従業員さん達は、乱心したドムさんによって殺害された…という風に聞いてるわ」
「それはどこまで本当なの?」
「全部よ。あの従業員さんの証言なんだから。まぁ、生存者が彼一人だから他と照合することはできないけどね。ただ、気になることが1つだけあるわ」
「なんだそりゃあ?」
「……ドムさんは人のかたちをしていなかったらしいわ。獣みたいな、ね。豹変というのは、そういう意味よ。だから今度は私が聞きたい。彼らはそういうこともできるの?ロック?」
昨日の夜から殆ど何も喋っていなかったロックが口を開く。
「オレっちは全ては知らないよー。凄腕の研究員は7人。彼らならば可能かもねー」
「へぇ、そんなにいるのね」
「研究員だけでも数百人。構成員は大多数。戦闘員は数知らねぇ!」
「ランキング形式だから100人かと思ったわ」
「そんな事あるわけが無いでしょうーに、世界はくるくる回ってるんだ。人の異動は毎日さ」
「急にいつもの雰囲気に戻ったな」
「オレっちだって、塞ぎ考え悩み込む込む込むことはありますぜ。とりわけねこわけいぬわけ、組織が絡むと面倒なんす〜」
「とりあえず、今は戻ろうよ」
泣きじゃくるフィロを宥めないといけない。
それに道端で話す内容ではない。
ここは陰都。
お金にまつわる歴史ある都市ではあるが、元は陰湿者が多く集まるということでその名が着いた。
誰が聞いているかも分からない場所で秘匿性の高い話題はしない方が身のため。
この続きは古家に戻ってからだ。




