仕事④
朝、目が覚めるとベッドの横にネムがいた。
子供達の中では一番下の年齢。
「だいじょうぶ?」
僕は軽く微笑むとともに起き上がった。
下に降りると、何人かが朝食を摂っていた。
「お、起きたか。昨日はぐったりだったようだな、おつかれさん。今日も頼むぞ」
そう言うと、ジモンさんは僕の背中を叩く。
痛くはない。
「…死なないように頑張ります」
ジモンさんは大いに笑う。
席に着くと、宿屋の亭主だろう女性が飲み物を出してくれた。
「もし可能だったらで良いのですが、運搬は半分くらいにして、他の仕事をさせていただくことは可能ですか?大変というのもありますが、色々と経験を積みたいというのもありまして…」
嘘である。
疲れるという理由一点である。
「あー、そのうちな」
やはり、ダメか。
「掘るのも大変なんだぞ。鉱石を見つけたはいいが、本体を削ってしまって、商品価値を下げるということもある。新しい鉱石を見つければいいだけの話だが、時間と労力の観点から場合によっては給料から差っ引くこともある。それでもいいか?」
「うっ…それは…」
「お前さんの仕事はリスクが少ない。変更する必要はないと思うが?」
「…リスクはあった方が燃えると思います!」
僕は何を言っているのだろうか。
疲れで、頭が回っていないのかもしれない。
「ほぉう」
少し考え、懐のメモ帳に何かを記入した。
「いいだろう。では、今日の午後からは採掘の方に行ってもらおうか」
「あ、はい、ありがとうございます」
交渉が上手くいく保証はなかったが、博打には勝ったようだ。
僕は心の中でガッツポーズをした。
午後が近づくにつれ、気持ちが楽になってきた。
午前は相変わらず運搬業務だったが、昨日よりも気分は良い。
昨夜は食事を囲えなかったが、今日は余裕がある。
採掘場に案内されると、中はかなり広い。
カンカンと音が鳴り響いている。
僕と交代してくれたのは、端にいる老人。
現場では最高齢らしく、掘るにあたっての助言を幾つかしてくれたが、途切れ途切れで聞き取りにくい。
ジモンさんに言われていた注意点だけを思い出しながら、掘り進めることにした。
「ふう…」
掘る作業というのは、単純だ。
手に持つ道具を握り締め、腕を振り上げ、対象物に突き刺し、削り出す。
「くっ…」
そういうものだと思っていたが実際は違う。
見様見真似でできる作業ではない。
不器用というのも原因かもしれない。
やっぱり、力仕事は向いていないのかもしれない。
ジモンさんが、すぐに首を縦に振らなかったのも経験則で見抜いていたからに違いない。
交代枠として来たのに、一番最初に手を止めてしまっていた。
鉱石なんてものは発見できない。
もしかしたら、削った石の中にあったかもしれない。
冷たい視線を感じる。
後ろを見たくないから、前を見るしかない。
歪だ。
何気なく僕は、自分が掘った歪な跡に触れた。
「……ん?……あれ?……」
感じる。
「…そうか!」
思い出した。
僕には異能とも呼べる特異体質があったことを。
傍から見ると、可怪しく見えるかもしれない。
壁を触りながら、叫んだり、驚いたりしている姿は奇妙だろう。
鉱石を感じ取れる嬉しさも相まってか、つい口が笑ってしまう。
疲労困憊で狂ってしまったと思われたのか、誰かがジモンさんを呼んできていた。
「ど、どうした!?大丈夫か?」
「はい!大丈夫です!僕はやれます!」
「お、おぅ…ん、何がだ?」
「だから僕は、やれるんですよ。この仕事向いてます!」
ジモンさんは、ニジリニジリと歩み寄って肩に手を置いた。
「…ほんとうに、大丈夫なのか?」
「はい!やれます!信じてもらえるなら、僕の指示する所を掘ってみてください。絶対に!確実に!間違いなく!そこに鉱石はありますから!!」
胡散臭いと思われたかもしれない。
でもここは正念場、推しの一手。
「一度で良いので、僕を信じてください!!」
勢いで土下座までしていた。
「そこまでいうなら…な、おいっ誰か、あいつの指差す所掘ってみてくれ」
指定した場所から鉱石が出てきた。
「あとは、ですね。あそこと、ここと、あとはあっちの上の方にあります!」
更に出てきた。
嘘偽り無く、本物の鉱石。
その後のことは言うまでもない。
歓声と驚き、そして胴上げ。
ほっとした気分に僕は浸った。
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