それぞれの一番①
【主要登場人物】
リン・フォワード(主人公、男、白髪)
フィロ・ネリウス(獣人、女、黒髪)
ジェット・エーギル(傭兵、男、金髪)
オウル・P・マギー(ハッカー、男、青髪)
【サブ登場人物】
ドム(赤牛亭店主)
峠を越えた先、麓から見える景色は壮観。
「わー、ひろーい!」
「眼先の大きな建物が、おそらくドムさんのご自宅ですね」
「つーことは、少し向こうに見えるのが、次の目的地か」
「都市連合の1つだから久々に大きい場所で滞在することになるね」
都市に行く前に、山登りの休息を取るため、ドムさんの宿屋を挟む必要がある。
もう野宿をしたくがないために、全力で山を駆け上がっては降った。
ご自宅兼宿屋が見えてくる。
上からも気付いたが、建物は大きく立派だ。
敷地も広く、家の屋根が長く連なっており、屋敷を連想させ風情を感じさせてくれる。
他に建物があるわけではないので、この土地はドムさんが所有しているのだろう。
家族がいれば、その方が所有権を持っているはずだが、以前聞いた話では、奥さんと娘さんしかいなく、10人ほどの店員さんが離れに住んでいるほかは身内はいないと言っていたので、それはない。
玄関というべきか、敷居を跨ぐと、入口には店員さんが一人立っており、僕達のことを知っていたのか、丁寧にお辞儀をしてくれたあと、通してくれた。
中は想像以上に広く、心地がよい。
音色も心地よい。
奥から、一人大きな男性が近づいてくる。
僕達に気がつき、手を振っていた。
「よぉ!お前たち、久しぶりだな!1年振りか!」
「ご無沙汰しています」
ドムさん達がいた仙都を出て、4人旅をして、まもなく1年が経つ。
圧迫死しそうなほどの抱擁は仕方のないことだ。
「まずは乾杯、いや風呂だな、お前たち汗くさいぞ。ここは他にも客が何人もいるんだから、気をつけてくれ。うちの評判は下げてくれるなよ」
店員さんに連れられ、それぞれ個室に案内される。
宿の人気の1つは温泉のようで、疲れた体をしっかりと癒してくれた。
各々用意されていた衣服に着替えてから、ドムさんの座っている卓へと向かう。
何やら手招きしている。
「乾杯の前に紹介しておこう。うちの愛娘だ」
「アイです、よろしくてす」
「あんたにこんな可愛い娘がいるなんて驚きだな」
「ぜんぜんにてない」
「奥さんも綺麗ですね」
「アイちゃんの首の所に何か装着してますが、これは?」
耳にも同じような器具がある。
「アイは少し病弱でな。生まれつき心臓が悪くて、最近は気管系の炎症も起こしやすい。呼吸補助のためで装着しているんだが、これまた高くてなぁ。稼いだお金は娘に費やしているんだ」
「だいじょうぶ、おとうさん。しゅじゅつでなおるんでしょ?」
「手術するんですか?」
「ああ来月な。ここより西の都市の病院で予定している」
僕達が赴く都市とは別方向だ。
「大丈夫だ、アイ。心配するな。そこの医者は腕利きと聞いている」
「うん」
「そうだお前たち、良ければうちの娘に旅の話をしてくれないか?1年振りなんだ。色々とあるだろう?」
快く承諾した僕達は、各々この1年で一番と感じた旅の話をすることになった。




