第1フェーズ
【主要登場人物】
■■
誕生、躍動、闘争、調和、そして邂逅。
世界は廻る。
幾多の銀河、数多の惑星、億千の生物。
物語は無限。
この星にも、誰も知らない物語が存在する。
広大な施設、研究所には多くの者が集められる。
星の解明をする者、新技術を発見する者、生態系を調査する者。
新たなエネルギーを開発する者達もいる。
彼らは皆、この星を豊かにするための研究員。
6つの大陸から集められたエキスパート、国の代表を背負った者達。
その一人である■■は、今日もエネルギー研究に勤しむ。
「この理論もダメか」
机上の議論だけでは進まない。
実験をすることで初めて結果が判明する。
成功率は低い。
「次を試してみるか」
希望値には満たない数値。
失敗は当たり前、挑み続けることが成功の秘訣。
「今日も精が出ているな■■」
「ああボイルか、そっちの班は良い数値出てるみたいだね」
「まあな、あの鉱物は新エネルギーの代替となりえるだろうよ」
「隕石様々だね」
「近いうちに、俺とお前の班合同で、あれを研究することになりそうだぞ。隕石、中心地、エネルギー、ふむふむ、そうだな、名称は核エネルギーと今のうちに名付けておくか」
この男の名はボイル・マクレーン。
同僚で親友、同時にライバルでもある。
努力で入った僕とは違い、才能溢れる男だ。
「命名権は無いと思うけど、核か…悪くない」
「だろう?我ながらセンスの良いことだ」
「毎度のことながら、自画自賛はどうかと思うけどね」
彼は第1班の班長および、2チームのまとめ役でもある。
配属時期は一緒だが、歳は上だ。
兄貴分的な役割も兼ねているので、ある程度の気概はあって然るべきだ。
「で、■■のとこの班員はどこかいってるのか?」
「ロロは合成効果を確認するため植物の採集、カンは倉庫、シェリーは休憩中だよ」
第2班は全部で4名。
最年少の、ロロ・ウィル。
保守派の、シェリー・ハーミル。
配属されたばかりの、カン・リー。
班長は僕。
第1班は3名。
班長のボイル・マクレーン。
無口な、レイド・ルーカス。
そして僕が密かに恋心を抱いている、ユキ・アマミヤ。
「そっちの班員は今どこに?ユキは?」
「2人には、それぞれ別の仕事をしてもらっている。気になるか?」
「いや、あとで自分で尋ねるからいいよ」
ボイルの気づきには大変助かるのだが、時と場合による。
この想いは自分で伝えるべきなのだから。
次の日から合同研究が開始された。
対象は2カ月前に飛来した隕石。
それから得られるエネルギーを使っての実験と調査。
データ採取は順調。
小さな破片からでも抽出されるエネルギーは膨大であることが判明する。
「あとは手軽な摘出方法の模索と保存、それと分解や合成といった加工もできれば200点だな」
「新しいエネルギーを見つければ十分でしょう、保存可能と判断できれば上も認めてくれるわ」
「…同意」
「えっと、でも、他の分野の人に、一から説明して実験となると、手間だよ」
「僕らの仕事は、名目上、エネルギーの開発だ。発見だけでは不十分、更に試行錯誤が必要だと思うよ」
「私も■■に賛成。これからの人類のために、できることはしていこうよ。設備的には問題ないでしょう?班長」
「うむ、アマミヤの言う通りだ」
「失敗する可能性だってあるじゃない。全てが水の泡になったら誰が責任とれるのよ!」
あーだこーだと、この議論は何回もしている。
人数が多いほど、目的統一を図るのは難しい。
とりわけ僕達は故郷も違うし、年齢も性別も違う。
難色を示す一方と思われていたが、一人が折れたことにより、方向性が決まろうとしていた。
「僕も■■の意見に、賛成します。誰かのために、僕にできることをしたいです」
「ロロガサンセイナラ、ワタシヤルネ」
「ロロもカンも承諾してくれたみたいだね。多数決する意味はないと思うけど、どうするシェリー?」
「はぁ、レイドはどうするのよ」
「…総意なら仕方なし」
「うむ。では皆、次の仕事に取りかかってくれ。現状報告を伝えるついでに、追加の防護服の調達と簡易シェルターの増強案を提出してくる。戻って来るまでは、■■が合同班の班長だ」
「よろしくね、皆」
皆が思い思いに返事をしてくれるなか、彼女、ユキも応援してくれた。
その癒しの笑顔に心高ぶり、想いを伝えるのは今日をおいて他にないと判断した僕は、その夜、彼女と待ち合わせすることにした。
異性に告白をするのは、初めてではない。
散った経験も思い出の中にはある。
今回の成功率は高めだと自負している。
日頃から愛想が良いことが理由の1つだ。
ユキと出会ったのは、半年前。
彼女は僕より先に働いていた。
年齢は1つ上だ。
品行方正で礼儀正しく、他の所属分野の人達からも一目置かれている。
優しい声色と淡い薄ピンクの髪が特徴的だ。
配属されたばかりの頃に、何度かフォローしてくれたのを覚えている。
丁寧な説明に、器用な手つき、彼女の香りは、いつも気分を落ち着かせてくれていた。
彼女に対して憧れを抱いていた時期もある。
その人は、今僕の目の前にいる。
「どうかした?」
「こんな夜遅くに呼び出してごめんね、ユキ」
「いいの、■■。たまには夜風に当たるのも気持ちいいよね、誘ってくれてありがとう」
「それもいいよね、ユキ。でも今日は、そういう理由で呼んだんじゃないんだ、僕の話を聞いて欲しい」
見る目が変わった。
「いつもと雰囲気違うね■■。なんだか大人の男って感じ」
「はは、僕は子供だったか…じゃなくて!真面目な話なんだ!」
少し前に出る。
「君のことが好きだ、ユキ。付き合ってほしい!」
頭を下げ、右手を伸ばし、待つ。
暫しの時間が過ぎ、顔を上げると、彼女は微笑んでいた。
「ありがとう■■」
僕の手を両手で握ってくる。
「それはOKしてくれたってことでいいよね?」
彼女は何も言わない。
ただ微笑んでいた。
「そうだ!これ、あの隕石の破片から綺麗に削りとって作ったんだけど、着けてくれる?」
お揃いのペンダント。
器用ではない僕が、休日のほとんどをこの製作に費やした。
「ありがとう■■、嬉しい。大切にするね」
僕も嬉しい、夢心地だ。
叶うならば、この時間が永遠に続けばいいと思った。




