塔の攻略③
【主要登場人物】
リン(主人公、男)
フィロ(獣人、女)
ジェット(傭兵、男)
【サブ登場人物】
ドム(赤牛亭の店主)
ヨルム・マギー(服屋兼仕立屋の店主)
オウル・P・マギー(ヨルムの孫?)
ギリコ(賭事店オーナー)
ニコラス(仙都政府の役人)
ザック(逃走者、武闘派)
正午まで5分を切った。
何段登ったのだろうか、数え切れない。
勢いのあったザックも、今やヘトヘトだ。
残り時間は少ない。
モニター放映されたとしても、証拠を提示すれば、逮捕はできるかもしれない。
しかし、長の安否は保証できない。
悠長にはしていられない。
これ以上の戦闘は避けるべきだ。
僕達は他とは違う重い扉を蹴破った。
「お待ちしておりました」
「やんのかこらぁぁ…」
ザックは拳を構えていたが、相手にその気はない様子。
「敵意はございません。私は味方、ギリコ様のいう情報屋です」
潜伏者がいたことには驚きだ。
そのような情報は聞いていないが、成功率を上げるためだろう。
「あの男は、その扉の向こう側です。何卒、長をよろしくお願いします。私は、持ち場を離れることが許されておりませんので、待たせていただきます」
情報屋は首輪をしている。
おそらく、ニコラスの対策だろう。
抜け目のない男だ。
言われたとおりに、2人だけで上の階へと進む。
部屋の入口に待機するのはニコラス。
眼が合ったその時、鐘の音が鳴り、正午が告げられる。
再起動が終わるまでは、塔内は暗い。
昼間でなければ足下は視えなかっただろう。
対象は動き出す。
ニコラスは銃を構えつつ、部屋へと侵入。
僕達は相手を刺激しないよう、ゆっくりとその後をついていく。
階下では、何やら騒ぎ声が聞こえたが問題はなさそうだ。
ニコラスには聞こえないように、小さな声で話しかける。
「都市長は人質になっていると思うけど、放映スイッチは、さっきの情報屋が持っているから、ニコラスを捕まえるだけでいい」
長が殺される可能性は低い。
怪我で済めば問題はなし。
「相手の気を引きつつ、両側から攻め込もう」
「おう、兄貴分の俺に任せとけって。大船に乗ったつもりでいろ」
相当きついはずなのに、大した根性論。
この船が転覆しないことを祈るばかりだ。
案の定、ニコラスは都市長を人質に取っていた。
ザックに目配せしつつ、タイミングを計る。
「貴様達の妨害は手に取るように分かる」
弾を装填するニコラス。
見た目の形状は違うが、感覚的に、これも追尾式の可能性が高い。
一度の回避だけでは無意味。
ザックではなく、僕に撃たせる必要もある。
先に動かなければならない。
「わざわざ下の階に戻る必要もない。この部屋でも可能だ。貴様達を排除できさえすれば何も問題はない」
「それが本当にできるといいね」
「ふふ。私の気を引く作戦は辞めた方がいい。代わりに私が貴様達の気をそらしてやろう」
ニコラスは懐から取り出した物を押した。
瞬間、モニターに映像が流れる。
パソコンの画面なども強制的に切り替わった。
「これは録画だ」
放映されているのは、菌の開発や薬の保管場所、捏造された文書など。
「スイッチを所持していないと聞かされていたかね?それは間違いだ。あの男は、元々長側の派閥だぞ。この私が、何も準備しないわけがないだろう?裏切る可能性があるのなら、用心に用心を重ねるさ」
録画内容が、犯人像へと変わる。
「さぁ、フィナーレだ!」
ザックに合図して動こうとした時、モニターにノイズが走った。
音声が途切れ、画面は真っ暗になる。
数秒後に映し出されていたのは、幼稚な音楽と店の宣伝。
妖精が羽を広げ歌っていた。
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「……」
「……」
「……ふっ」
我慢出来ずに吹き出したのは僕だけ。
ニコラスは怒り心頭の様子。
ザックは全く分かっていなかった。
「くそっ、何故だ!何故変えられん!この放送を辞めろ!服屋の宣伝を辞めろおぉ!」
チャンス到来。
目配せと同時に身体が動く。
長をザック側に投げ飛ばすニコラス。
銃口が僕へと向けられる。
扉からフィロも参戦。
その横にもう一人。
2つの銃弾が垂直に交わる。
金属音が響く。
跳弾は回避。
三方からの打撃に、標的は沈黙。
妖精の歌声は、都市全域に絶えず響いていた。




