暗躍する者達⑤
【主要登場人物】
リン(主人公、男)
フィロ(獣人、女)
ジェット(傭兵、男)
【サブ登場人物】
ドム(赤牛亭の店主)
ヨルム・マギー(服屋兼仕立屋の店主)
オウル・P・マギー(ヨルムの孫?)
ギリコ(賭事店オーナー)
ここは中央区・中央街・中央政府が管理する中央塔。
室内にて座す者は、計画の最終調整を行っていた。
「こことここ、警備兵に穴あり」
「ニコラス様、お呼びでしょうか」
「うむ。君の配置は覚えているかね?」
「はい、もちろんですとも。抜かりはございません」
「よろしい」
ニコラスは盤上の駒を一つ一つ潰していた。
「実行日は予定通り明日だ」
「管理システムの再起動日ですか。高性能の技術といっても定期的なメンテナンスを必要とするのは、なんといいますか、生物と一緒ですね」
「違いない。私達にとっては都合が良いがな。これで長を、上から引きずり下ろすことが可能だ」
「要望にあった情報開示も滞りございません。都市全域にモニターで放映できます」
「再起動の影響はどうだ?」
「管理システムを再起動する前に、放送システムを切り離します。管理システムは起動に時間を要しますが、放映は別電源を使用しますので、影響は受けないかと」
「万全だな」
「はい」
盤上の駒は、黒一色で埋め尽くされていた。
場所は変わり、ここは中央区・北西街・中央政府の管理が届きにくい観光区との狭間。
男は連絡をとっていた。
「おい!おれだ!効果が切れちまった。俺はこれからどうすればいい?」
「……薬は見つかったんですか?」
電話の相手はオウル。
「病院にも薬屋にもない」
「そんなことないでしょう」
「ホントだ!変な施設に入ってる時に見つけたんだが、薬を独占している奴がいる。計画か設計かは分からねぇが、変な書類を山のように見た!」
「…それは本当ですか?独占している人物の名は?」
「そこまでは分からねぇよ」
「書類というのは、持ち帰ってるんですか?」
「いや」
「僕には時間がないんですよ!なんでこう、僕の周りには、使えない奴等だらけなんだよ!」
物を投げつける音が回線越しに響く。
「だ、大丈夫だ、俺は記憶力いいからさ」
「はぁ!?」
「同じ男なら分かるだろ、俺を信じてくれ」
「そういうのキモいんですよ!さっきからさぁ!」
「さっきから…?」
「はぁ、だったら、あなたの記憶したそれを僕の所まで届けてくださいよ」
「無茶だ、捕まる」
「はぁ、今いる場所は観光区でしたっけ。私が行きますので、絶対にその場から離れないでくださ……ぃ……」
「ん?お、おいどうした?」
オウルの返答はない。
息遣いは聞こえる。
荒々しくなってもいる。
「……はぁはぁ」
「お、おい!どうしたんだって!」
答えてはくれない。
「はぁはぁはぁ、んぐっ…おぇ」
恐怖は増す。
「はぁはぁ、そんな、嘘だろ。嘘だと言ってくれ」
悲痛な叫び声が響く。
男は、回線を切ることができず、そのまま立ち尽くす。
後で聞かされたのは、訃報だった。




