仕立屋②
ゴホゴホと咳をしながら、こちらに来る。
「店にお客さんとはいつぶりじゃろうかの」
「どうも」
「新しい服でも買うのかリン?」
「新しいふく買ってくれるのリン?」
「違うけど」
「冷やかしはよくねぇぞリン」
「ひやめしはおいしくないよリン」
「ちょっと二人とも黙っててくれない?」
高圧気味に伝えた。
「よいよい、ここは服屋兼仕立屋。わしはヨルム・マギー。ここの店主じゃ。ゆっくりしていくがよい。なんなら茶でも淹れてやろうかの」
「お気になさらず、お仕事の邪魔になるかもしれませんので御暇します」
何かに引き寄せらたのは確かだ。
体質は関係していない。
「どうかした爺ちゃん?誰かきた?」
奥の扉からまた1人。
「おぉオウルか、丁度よい」
老人は少年を手招きしていた。
「わしの養子でもあり孫のような者じゃ。ほれ、久方ぶりのお客さんに挨拶しなさい」
少年は少し嫌そうに、しかし誠実に頭を下げて、こちらを見た。
年齢はフィロより少し下の14か15くらいだ。
白い肌に瞳は緑、髪は肩ほどで青い、耳は長め。
彼は混血だ。
人と獣人、もしくはごく僅かの妖人と呼ばれる種族かもしれない。
「オウルです。フルネームは長いので省略します。店に用がないのでしたら、早く帰ってくださいね。仕事の邪魔です」
その言葉にキレていたのはジェットだ。
「客いねぇのに、仕事なんてないだろ」
「内仕事はいくらでもあります。野蛮なあなた達には理解できないかもしれませんがね」
「ヤんのかガキ!」
今にも殴りに行きそうだ。
「はいはいストップ、すみませんオウル…さん。今から帰ります」
ジェットを反転させ、背中を押す。
ガラス越しになっても、お互い睨みあったまま。
視線から逃げるように、早歩きした。
追い出すように出ていった3名。
留めることはできなかった。
「何故、あのように追い立てたのじゃオウル、お客さんじゃぞ」
「でも買う気があるようには見えなかった」
「そうだとしても、久方ぶりの客人じゃ」
「必要ないよ。服を売っても大した利益にはならない。冷やかし客と役人はうんざりだよ」
「しかし……ゴホッ、うむ大丈夫じゃ、助けは、いらん。普通の、接客も、出来んやつの手なぞ、借りとうない」
「でも!」
「必要ない、自分で、ベッドに、いくわい」
店内に静けさが戻る。
オウルは、ヨルム爺が寝室に入るのを確認してから自室へと戻った。
すぐさま、自分専用のパソコンを起動する。
「依頼は…来ているかな」
いくつかの履歴を見た後、パソコンを閉じてうつ伏せる。
「はぁ」
この程度の依頼は簡単だ。
達成は容易。
しかし、足りない。
報酬額が少ない。
計画が遅々として進まない。
仕立屋の仕事では、給料は発生していない。
そもそも客は来ない。
服屋において、ハイブランドや実用性、見た目を重視するのは基本だろう。
差別化を図り、競合店に打ち勝つ努力が普通は必要だが、この店に良さはない。
ただの古びれた店だ。
閉店セールは、ずっとしている。
いままでのヨルム爺の蓄えで生活ができているだけにすぎない。
そのヨルム爺も、最近は衰えはじめている。
僕が養子となって拾われた時よりも身体は小さい。
酷く咳もするようになった。
薬がないわけではない。
効果が薄い。
もっと良い薬、大きい病院や施設に預け、診てもらわないとダメだ。
そういった良い薬や病院は、中央政府に管理され、中央に入れる人間も限定されている。
僕やヨルム爺のパスコードでは入ることができない。
パスコードを偽装して、中に入る手段は既に試みた。
もちろん失敗に終わり、役人に目をつけられ、後が無い。
次は確実に捕まるだろう。
それはゲームオーバーを意味する。
クリアしないといけないことが多い。
問題は山積みだ。
普通の客の相手をする時間はない。
今は悪いことをしてでも、お金を稼がないといけないのだから。
感想、評価、レビューお待ちしています。辛口でも構いません。




