赤牛亭①
【主要登場人物】
リン(主人公、男)
フィロ(獣人、女)
ジェット(傭兵、男)
旅を始めたのは、随分と昔のこと。
地図を片手に、目的地へと向かい、己の為すべきことを為す。
それを繰り返す日々。
後悔はない。
多少の苦労は、自由で相殺。
それが一人旅の醍醐味。
終止符を打たれたのはつい最近。
連なる者は増え続けている。
一人の時間がなくなってから、ひと月が経過しようとしていた。
「この前の湖の一件、もう少し上手く立ち回れた気がするぜ」
そう物申すのはジェット。
宿屋の席で食事を摂りながら話しかけてくる。
「フィロは猫科だから、仕方ないと思うよ。誘惑が多すぎたね」
「あの猫は自制心を養ったほうがいいと思うぞ。また俺の経歴に傷がついた気分だぜ」
「まぁまぁ、一応物取りは逮捕出来たんだから」
「報酬は半分になっちまったけどな」
湖の街で宝石屋に入った時、店主から横行している強盗を捕まえてほしいという依頼をされたのだ。
ジェットの漂う雰囲気に、凄腕のハンターさを感じ取ったからだという。
結果として、捕まえることはできたが、宝石の一部が湖の底に沈んでしまったので、支払われる報酬を減らされたのだ。
神聖な湖らしく、潜るという行為は厳禁なのだとか。
探知に長けている僕も今回は出番なし。
フィロはというと、撒き餌に釣られたことが原因で、逮捕劇から途中退場していたのだった。
「それで、今あの猫はどこにいるんだ?」
「たしか…外に出るって言ってたような…」
ここは都市が管理している宿場町で、それなりに大きく、人通りも多い。
迷子になってないといいが。
「大食い大会の時もよう…」
ジェットが頭を抱えている時、ドンッ、とテーブルに振動が走る。
ここの店主らしき男が、追加の料理を持ってきた。
「まぁまぁ兄ちゃん、これ食って元気出しな、サービスだ」
色とりどりの野菜に魚、丸焼きの肉など、サービスとは思えない量だ。
「こんなに、食べられるかな…」
「悪ぃなおっさん、有り難く頂くぜ」
「はは、おっさんではない。俺はまだ32だ」
おじさんか否かは微妙な年齢ではある。
ジェットは年が近いことに驚いていた。
「俺と4つしか変わらねぇじゃねーか」
「だからおっさんではないと言ったろ」
店主はドムという名前。
旅人の話を聞くのが趣味で、ここ以外に2つ店舗を構えているとのこと。
「近くの都市、仙都にも店を出しているから、宿に困ったら是非利用してくれ、安くしてやろう」
「仙都ですか…」
「由来はたしか、昔仙人が住んでたからだったよな?」
「よく知っているな、えっと…?」
「ジェットだ」
「ああジェット、その通りだ。そしてハムとも呼ばれている」
「ハムって、食べ物のハムですか?」
「うむ」
ハム好きが統治しているのだろうか。
「仙都はかなり広い、人種も多種多様だ。技術もかなり発達しているから、セキュリティも厳しい。管理をしているのは中央政府で、まさに都市の中央に位置する。中央部には高層ビルがいくつもあり、1つの円形塔を囲むように造られている。都市長もそこの最上階にいるわけだが、公には顔を出していない。演説時はいつも顔を隠している」
「よく知ってますね」
「俺は都市にも行くし、旅人の話も聞く、これくらい普通だ」
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