激戦②
轟く雷鳴。
迸る雷光。
火薬の擦れたにおい。
木屑やガラスが飛び散る中、至近距離での攻防が続く。
両者、致命傷となる一撃はなし。
銃弾は全て回避され、防戦に徹している方が有利という状況。
銃撃による効果は低いと判断したジェットは武器を切り替える。
「はっ、やっと当たったな」
鋭利なナイフが左腕の肉を抉る。
滴り落ちる血。
ジェットは余裕そうにナイフを回す。
薄暗い中、刃に反射する光が相手の顔を映し出す。
「効果ありか」
ジェットにしてみれば、なぜ銃弾が当たらないのかは分からない。
不明、答えは出ない。
戦闘に時間をかけるのは無意味。
結果優先、究明は必要ない。
「ほらほらどうしたぁ!動きが鈍いぞ!」
勝利は近い。
確信できる。
次の一手で決められる。
所詮は素人。
本物が負ける理由はない。
「これで終わりだ!」
フェイントをかけ、反対の手に隠し持っていたナイフを突き刺す。
ナイフは、胸に間違いなく当たった。
キーンッ、と甲高い音が鳴り響く。
何が起こったのか、男は立ち止まる。
その隙をついて、一時的に距離を離すことに成功したのはリンだった。
「ふうぅ」
大きく息を吐いたリンは、袖で額の汗を拭う。
血は既に固まっており、血濡れることはない。
餞別に貰った鉱石を胸ポケットに入れていたおかげで、危機を回避するに至った。
相手の動きや重心、狙いが別のところにあるというのも瞬時に理解。
後ろに仰け反ったことで、狙いをややずらし、誘導するように、上手く鉱石にヒットすることができたという理屈。
本当ならば、この余韻の合間に詰め寄って、相手を気絶させようと思っていた。
体格差はあれど、気を抜いた相手に思いっきりの速度で体当たりをすれば、可能性の1つはあった。
しかし、それはできない。
不可能だ。
相手が強いからではない。
この戦場に、別の気配を感じ取ったからだ。
こいつは何故、この隙を狙わねぇ?
絶好のチャンスだろう?
石か何かわからねぇが、運良く助かって安心しているのか?
なら素人じゃねぇか。
時間を無駄にしたな。
「幸運は何度も続かねぇぞ!」
追撃で踏み込むジェット。
その時、左右と後方の窓ガラスが割られ、ライダースーツの男達が侵入。
ジェットのみを取り囲むような配置。
臨戦態勢の3名。
「お前ら、何者だ?」
暫く睨み合っていると、一番大きい男から順に口を開いた。
「ワンの旦那殺したのはお前だろ?奥さんからの依頼でな。稼ぎの旦那を失うだけでなく、関係をもっていた男からも逃げられちゃあ、怒るのも当たり前だろうがよ」
「俺達はお前の首を持って帰る、今までのお前の恨みも晴らせる、一石二鳥だ」
「ターゲット」
「あーワン…ね、確かに俺がやったぜ」
「意外とすんなりじゃねーか。一応、理由を聞いてやろうか」
「ヤキが回ったなぁジェット」
「死」
「密輸が頓挫したせいで、金をビタ一文も払わねぇで解雇しやがったんだよ、あの野郎。見張りが仕事しねぇからだーとか言って、俺から金を絞り上げようとするしな。頭に来たから、こうナイフでスパパとやっちゃったわけよ」
「はっ、クソだなお前。女にも手を出すし、碌な生き方してねーんだろな」
「生かす理由もなし」
「死死死」
「同類だろ」
ジリジリと距離が縮まる。
3名とも片手にはナイフ。
「それで、俺を殺せるとでも?」
「問題はないさ。依頼の成功率は上だとしても、人数差は覆すまい」
「遺言は聞かない」
「死!死!死!」
「必要ない、その言葉そっくりお前らに返すぜ」
ジェットは、状況整理に必死そうにしているリンの横を通り過ぎ、後方の壇上に上がった。
「遅いぞ!ノロマども!」
煽られた3人もあとに続く。
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