荒野
【主要登場人物紹介】
リン(主人公、男)
フィロ(獣人、女)
荒野に鼻唄。
「あ、チョウチョだ」
止まり木めがけて、狙いを定めてジャンプ。
よくもまぁ、体力があるものだ。
同じ量の荷を背負っているはずなのに、鞄は同じに見えても女性の方が軽いのだろうか。
「元気すぎない?フィロ」
「ん?そう?」
この暑さも平気そうだ。
「もういっしゅうかんだよねー、次のまちはいつ?」
「もう少し先かな。この荒野を抜けると今は使われてない街があるみたいだから、まずはそこを目指そう」
「それまちなの?」
「厳密には違う。要するに廃街だね。目印にはなるよ。そこを抜けたら、次の街まではそう遠くない」
地図をまじまじと見ている。
「街をいくつか過ぎたら、その後は大きな都市があるから、一緒にいられるのはそこまでにしよう」
地図をクシャっとするフィロ。
「いーや、ずぅとたびするの」
毎回こうだ。
この話をしようとすると、断られてしまう。
「ふぅ、ほら地図返してよ」
紙はクシャッとなったまま。
声をかけたフィロはというと、一点を見つめていた。
「あそこ、くもがもくもくたってる」
「……ああ煙か、誰かいるのかな」
地面が少し高くなった場所で煙が立っている。
同じ類の旅人かもしれない。
「あ、ちょっと待ってよフィロ」
追いかけた先には誰もいなかった。
「いないね」
「荷はまだあるから、食糧探しとかに行ってるのかもね」
「ふーん」
「あ、こらフィロ、そこゴソゴソしない」
目を離すとすぐこれだ。
3日前も同様な光景があった。
あの時は、1人用の荷しかなかったけれど、ここには複数人の荷がある。
前とは違う人だろう。
「長居は無用だよ」
まだゴソゴソとしている手を引っ張り、高台を降りはじめる。
元来た場所に戻った時、ふと視線を感じた、そんな気がした。
悩みながら歩いていると心配そうに見つめてくる。
「どうかしたの?」
「あーいや、んーとね」
歯切り悪く、曖昧な答えになってしまう。
「なんとなーくだけど、ほんとに僅かだけど視線を感じるんだよね、フィロは何か違和感ない?」
「んー、どっち」
「後ろの方」
「わかんない、おなかすいた」
感覚の鋭い獣人が気づかないということは、僕の体質が過剰反応しているということか。
「はい、パン。もうすぐ備蓄切れるから今日はもう間食はなしね」
「うん」
早いところ、廃街を通り過ぎて、次の街へ行かないといけない様子だ。
悪い予感は当てたくない。
今から早足であるけば、2時間もしないうちに廃街にはたどり着けるだろう。
「少し急ごうか」
1時間以上は歩き、上を見上げる。
暗い。
夕暮れにはまだ早い。
「もくもくだ」
雨が降りそうだ。
いや、もうすでに降っている。
水音を感じた。
大降りになる前に廃街に入って雨を凌ぎたい。
そう伝えようとすると、背筋に悪寒が走る。
何か来る、そう思って、咄嗟に頭を下げた。
耳元をこするかのように、キンキン音が響く。
それが何か伝えるよりも早く、僕は叫んだ。
「走って!フィロ!」
フィロもそれに気づいたのか、瞬時に対応する。
ここには遮蔽物がない。
急ぎ建物内に入る必要がある。
2発目が足下をかすめる。
「もう着く!」
更に2発ほど、射線を掻い潜った僕達は、目の前の塀を飛び越え、建物に入る。
雨音も大きくなる。
声を潜め、窓越しに外を見ると、1人の傭兵がそこにはいた。
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