馬鹿
【登場人物】
レイス都市長
カレン・クジョウ
ロック・ロック
ザック
陰都、800年前の世界崩壊後、世界共通硬貨が発祥した地であり、商人の都市とも言われている。
半年程前の隕石落下回避のあと、カレン・クジョウは古巣であるレイス都市長の下を訪れていた。
「久しいわね、カレン」
「レイス都市長も変わりないようで安心致しました」
「決戦日は行けなくて申し訳なかったわね」
「いえ、都市長が都市を離れるのも如何なものかと。通信だけでも存分にお力添えして頂きました。仲間達の代表として、お礼を述べさせて頂きます」
「仲間、ね………貴方に信頼し合える人達が出来たこと、親の様に嬉しく思うわ」
「はい、最高の仲間です」
「それにしても──あの人とあの人がね、あの子も意外によね、彼もそうだけど★✦*※✩☓△◯…」
「隠語はそれくらいでよろしかと、皆それぞれの道を歩んでますので」
「それもそうね」
都市長直轄の者達は諜報員が多く、カレンもその一人だった。
今は足抜けしているが、現役時と同じくらい情報収集は得意だ。
またここ陰都は様々な情報が集まる。
仲間達の行方もしっかりとカレンは把握していた。
「貴方が此処に来たのは、そういう浮ついた話かと思ったのだけど違うのかしら?」
「はぁ、何故、私が?」
「ほら、2人連れて来たじゃない。てっきり、どちらかとくっつくのかと思って、報告待ちしてるのだけど、結局の所どうなの?」
「バカとアホの2人ですか、いいえ、まったく、はい、ぜったいに、アリエマセンネ」
「そうなの?」
「はい」
「残念」
普段は威厳のある都市長だが、恋バナとなると乙女となるのは、毎度のこと。
カレンは都市長の傍に長く居たから理解している。
この話は早々に切り上げた方がいい。
「よろず屋『ロリ・オウジ』を再開しているみたいだけど、あの2人はどうなの?やっていけてる?」
「ええ、個性ある男どもですので、彼らの長所を活かし、また新たなビジネスを展開しているようです」
「確か、貴方がオーナーをしているのよね?」
「ですね」
「ふぅん」
「何か?レイス都市長の期待しているようなことは起きないと思いますよ」
「三角関係なのに!?」
「三角もなにもまだ一角にもなっていませんよ」
リン達が経営していたよろず屋を継承しているのは、熱い男ザックと変人ロック。
先代には及ばないが、順調に売り上げを伸ばしつつある、活気のある店。
「そろそろ私は失礼致します」
「頑張ってね、期待してるわ」
「………はい」
都市長の期待には応えられないと、カレンは思っている。
何故なら2人はカレンの理想の相手からはかけ離れているからだ。
趣味も違えば、波長も合わない。
四方やなんてことはあるはずがない。
「はぁ、先が思いやられる」
「どうかしたっすか、カレン?」
いつの間にか横に居たのはロック。
彼が作製したこだわり満点の店の衣装はハイカラだ。
「急に背後に立たないでよね、吃驚するでしょう」
「いや早流石に、気ぃ抜きすぎっしょ」
「考え事してたから仕方ないでしょうで、ザックは?」
「知らぬ存ぜぬ分かりませぬ」
店に戻るとザックの姿はいない。
しかし近くで熱い男の声は聞こえる。
店の裏の通りで自伝を交えたヒーローショーをやっているようだった。
店をほっぽり出して何をしているのかと思えば、無料の催し。
カレンはザックの耳を摘み引っ張っていく。
途中、小さな子供から怪人女と囁かれ、ザックへのダメージは増加していた。
「痛ってぇ、針はよしてくださいよ」
ザックの店の衣装は燃える炎のように暑苦しい。
「はぁ、2人共今日の売上はどれくらい?」
「半分くらいっすね」
「時間は何時?」
「夕方だ!」
「つまり?」
「「帰って飯!/帰って風呂!」」
「どちらも違うわ、帰らずに仕事しなさい。ノルマ達成するまで飯も風呂も抜き!分かった!?」
「「鬼!/悪魔!」」
「はいはい、御託はいいから始めて頂戴」
男2人は、慌てて店を再開する。
陽は沈みかけるも、彼らの夜はまだ長い。
店の灯りは消えることはない。
彼らの三角関係?は、まだまだ続く?




