家族
【登場人物】
覆面女
リン
ユキ
オウル
根源と言われたリン・フォワードと、組織のボスであるボイル・マクレーンの最終決戦が行われていた時、覆面女も同僚の25位ダイマと激しい戦闘を繰り広げていた。
結果的には、背水の陣だった覆面女が勝利したのだが、ランキング上位と勝負しただけあって体力はギリギリ。
ボイルに一撃を入れると豪語していた彼女だったが、本当にその一撃だけで倒れ込んでしまいそうなほど疲労困憊の状況だった。
「手当てします!」
Riバースの面々しかいない中で割って入ってきたのは、オウル・P・マギー。
「さっきからずっとコソコソしていたな」
戦闘が始まる前から機を伺っていたオウルは、ようやくその姿を現した。
「情けはいらない」
「もらってください」
オウルの自動駆動は、覆面女の傷を見つけては縫合していく。
「これくらい、自分でできる」
「貴方は鉄糸以外の通常糸も持っているみたいですけど、この戦闘のあとでは無理でしょう。指だって痙攣してるじゃないですか」
「問題ない、直に治まる」
結局、手当ては自動駆動が全て行った。
「感謝はしない」
「問題ありま──って、リンがいる!なんで!?」
鉄格子の奥にいるのは、リンの模造人間。
「貴方は確か、オウルね」
オウルに話しかけていたのは、ユキ・アマミヤ。
「早速で申し訳ないのだけど、この鉄格子から私達を出してもらえないかしら?それと、エネルギーの逆流を使って私達の行動制限を完全に解いてくれない?」
覆面女も鉄格子の破壊を手伝った。
「ありがとう、2人共」
「これくらい、問題ありませんよ」
「──じゃあ私はこれで…」
「何処に行くの覆面女?」
「別に教える義務はない、私はもう組織を抜けた」
「だから?それで?結末は見なくていいの?」
「もう興味がない」
「弟さんが悲しむと思うわよ」
「それはアンタに関係ない!!────っつ、すまない……カッとなった」
「別にいいのよ。私はただ、貴方に1つお願いしたいだけ」
覆面女はユキの顔を見た。
これ以上自分に何を望むのか。
肉親一人満足に救えない自分に何を乞うのか。
「世界の行く末がどうでもいいなら、せめて私の行く末を見ててくれないかしら?」
「どういう………」
「貴方がこの場に居なかったら、私達は鉄格子に取り残されたまま。世界もそれで終わってた、かもしれない。でも貴方の選択で、これから世界は救えるかもしれない。私は…いいえ私達は今とても感謝しているのよ。自分達にまだ出来ることがあるかもしれないから。だから、お願い。私の最後を見届けてくれないかしら?救世主さん」
「………はぁ、私はそんな名前ではない」
「じゃあ、何?」
「教えない」
自分のような無価値な命、さっさと捨ててしまいたい。
だというのに、無性にもこのユキという女の言を聞き入れてしまうのは何故か。
ほつれた鉄糸が、再び一本の線へと結ばれるのを強く感じた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
契約を交わした、あの強大さを感じたボイルがこんなにも小さく脆い存在になっていたことに、覆面女は驚愕していた。
リンとの一戦で体力を消耗していたからではない。
リンが提案を飲み込まず、別の選択をして、ユキ達もそれに賛同しているからだ。
堂々と威厳のあった組織のボスはもういなかった。
長い廊下を歩き、目的の固定砲台へと着いた頃、先への侵入を止めたのは、リンの言葉だった。
「オウルと君はここでストップ。これ以上は危険だ」
君とは覆面女のこと。
「貴方、名前は?」
「……サラ」
ユキの問いに答えたのは、覆面女。
「そう、サラ。良い名前ね、バイバイ」
自分よりも小さいその背は、眼には大きく映った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
世界は隕石衝突を免れた。
否、結晶となって大地に降り注いだ。
だが、世界が救われたことには違いない。
その多くは、リン・フォワードという光の君の活躍があってこそと称されているが、覆面女にとっては違う。
サラにとっては、ユキ・アマミヤこそが救世主。
それは彼女の心の奥底に刻まれるほどに。
「私は、もう往く」
墓標には、2人の弟とユキの名前。
花の代わりに添えるは覆面。
繋がれた、この生命は無駄にしないと、彼女は歩み始めた。
【外伝⑤ 名無しの女 完】




