豪運
【登場人物】
リン
フィロ
ジェット
オウル
カレン
ロック
翌日、僕はジェットの賭けを応援していた。
カレンとロックの2人はそれぞれ別行動のようで、僕の隣にはオウルとフィロがいる。
「よし!今回も読み通りだぜ!どうだ、見たかお前ら!」
「うわあすごおい」
「お♪さ♪か♪な!」
「イカサマしたんじゃないんですか?」
「おい!もっと喜べよ!宿代と飯代稼いでるのは、このジェット様だからな!」
読み合いに勝てているのは強運なのか、それとも才能か、どちらにしろジェットは今まさに破竹の勢いだ。
僕としては、そろそろ止め時だと思っている。
「記録更新と行くぜ」
終わりそうにないね、これは。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その後の賭け勝負は、一喜一憂だった。
勝っては負けて、また勝つの繰り返し。
勝率的に言えば、半分以上は勝利しているが負ける時の額が大きすぎるため、利益は出ていない。
むしろ減っている。
所持金はどんどんマイナス域へと急降下していた。
ジェットは少しずつ苛々を募らせていた。
「ありえねぇ、次は絶対勝つ!」
「もうやめたほうがいいよ」
「そうですよ、もう何時間此処にいると思ってるんですか!」
「おさかなまだぁ〜?」
「ちったぁダマっとけ!これで最後、全賭けじゃあ!!」
何処から調達したのか、いつの間にか持っていた酒瓶を一飲みすると、物凄い剣幕で残金をオールベッドしていた。
「これが、俺の、生き様よ」
もう、神に祈るしかない。
この勝負の行く末は、僕達の明日を左右する。
借金生活だけはしたくない。
『最後の勝者はクロ様でした!これにて今日の催しは終了致します。また明日も是非お立ち寄りくだい!』
ジェットは失意の如く崩れ落ちた。
僕達も天を仰いだ。
この世は非情だと。
明日からの生活をどうするか悩んでいたとき、声を掛けてきたのはカレンだった。
「もしかして、負けたの?」
「だから僕は止めたのに…」
「ジェットの銃を売ればいいと思いますよ」
「そんな事できるわけないだろうが!お前の自動駆動を売れよ!」
「勝負したのはジェットでしょう!」
「仲間なら是可否でも止めるだろ!」
「酒飲みのアンタを止めれるわけないですよ!」
「2人とも喧嘩してもお金増えないんだから静かにしてよ!」
「私のごはんわぁ?」
「そんなに気落ちしなくてもいいんじゃない?今回は大丈夫かもしれないわよ」
「へ?」
「なんで?」
「やぁやぁやぁ皆様方!ご機嫌麗しゅうでさぁ!」
「ロックか…何処行ってたのさ」
「オレっち?オレっちはずっと一緒にいましたっすよ」
「は?何言ってんだお前」
「いやいやいや本当真実事実っすよ」
「私は最後の勝負しか観覧してないけど、勝者はロックだったんでしょ?」
「いえいえいえーす!!クロ様とはこのオレっち、ロック様のことでさぁ!!」
「「「はぁ!?」」」
確かに参加者の中には一人だけ、ジェットと同じように最初の試合から席に座っていた人物がいた。
まさかそれがロックだったなんて、全くもって気づけなかった。
彼が変装を得意とするというのもあるが、賭け中は会話もある程度で済むために、本人と結びつけることができなかった。
「つまり、最後の勝者はロックだから逆転勝ちってこと…?」
「しゃあ!天は俺を見放さなかった!」
「ジェットのおかげじゃないから」
「同じ事だ。それにしてもやるじゃねぇかロック、見直したぞ」
「それで、結局いくら儲けたんですか?」
1、2、3………。
………?
あれ、これもしかしたら………。
「………」
「どうなんだよ!?」
「あー、うん、はい、お疲れ様でした」
「ふふ、まぁそう甘くはないわよね」
「人生こんなもんですよね」
「おいっ、つまり何なんだ!?」
「勝ってるよ、ただ金額を言うと、今日ジェットが最初に持ってた所持金と同額になるね」
「つまり………」
「丸一日意味無し無意味ってことっすね!」
「………ふざけんじゃねぇ!!俺の時間を返せやあぁぁ!!」
それを言うなら僕達の時間も返して欲しい所。
まぁ、2日間で見れば勝ちは勝ちだし、これにて一件落着──
「──あ!思い出しやした!オレっち、この賭けする前に、自分の身体の部品とか購入したんすよ。だからここから差っ引きやすねー」
「はぁ?俺の金盗んじゃねーよ!」
「Riバースに長く在籍していたなら持ってるんじゃないの?」
「あるっすけど、口座の中っすよ。都市じゃないとおろせないっすね!いやはやすんません!」
「もういっかいかぞえるとぉ………わかんない」
「生活はできるけど、豪遊はできない。つまりいつも通りってことだよフィロ」
「じゃあ、さかなかえるね」
「そうだね」
新鮮であるかどうかはまた別の話になるけどね。
お金に関しては、ロックの未払いを差し引いても若干はプラスではある。
ロックが居たから良かったかどうかは分からないけど、居ないよりはマシだったのは間違いない。
これで彼の評価が上がったのなら、僕としては嬉しい限りだ。
まさに豪運。
山あり谷ありの人生。
まだもう少しは続くであろう僕達の旅路に、お金は大事に使うことが教訓として刻まれた。
【外伝④ お金は大事に 完】




