祭典の街
【登場人物】
リン
フィロ
ジェット
オウル
カレン
ロック
試練の街で起きた出来事のあと、僕達は南下して陰都を目指していた時のこと、途中いくつかの街を通ることになる。
今いる場所は祭典の街。
年中お祭り騒ぎの賑やかな街、催しや大会、賭け事など色々だ。
そういう意味では試練の街に似ているが、ここ祭典の街はそれ以上に人も多く、巨額のお金が動く。
力ある者は試練の街で行われる大会に挑むが、そうでない者は祭典の街で一攫千金を狙う、そういう感じで少し特色が違う。
試練の街でロックが加わり、6人旅となった僕達が初めて訪れた街となった。
「俺はここで大一番を賭けるぜ」
ジェットは早速、所持金全てを賭け事に使う様子。
「僕は技術分野の出展があるみたいなので見に行きます」
オウルは自分の得意分野の研鑽を重ねるため。
「おさかなどこかなぁ」
フィロは相変わらず食欲優先。
「私はお酒の飲める場所へ」
人間観察の好きなカレンは人混みへ。
「オレっちはあちらこちらそちらへ行きますっすよ」
変態のロックは何処に行くのやら。
「僕は………」
この街では、それぞれ別行動。
今日明日はここに滞在する予定。
先を急ぐ必要はあるが、休憩もまた必要、ここで英気を養うことにしている。
何故なら僕達一行は、試練の街で激しい戦闘を繰り広げたばかりなのだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
暫くして現在、僕はカレンのいる酒場にいる。
カレンもジェット同様に酒を嗜む。
どちらが酒豪かと言えば難しい所だが、酔いに強いのはカレンだ。
酔い潰れた所を見たことがない。
「リンは飲まないの?」
「今日は遠慮しておく」
「そう…それで野放しにしておいていいの?」
カレンが言う人物はロックのこと。
口では組織を抜けたという彼だが、本当の所は誰もわからない。
再誕の芽『Riバース』は危険な組織だ。
カレンは組織を調査していた時期があるから、まだロックを信用していないのだろう。
だがそれは一般的な心情として正しい。
能天気なフィロはともかく、僕とジェットは敵だった時もあったから、ロックの加入については問題ない。
カレンとオウルは常識的思考者だ。
2人がロックのことを受け入れ難く感じるのは当たり前で仕方ないこと。
ただ僕はリーダーとして、仲違いさせないことを常に念頭に置いている。
皆が一緒に旅をすると言ってくれた以上、僕にはその責務がある。
「カレンの気持ちも分かるけど、信じてあげるのも必要だとは思うんだ」
「騙されたのに?私達は1回だけど、貴方は2回。陰都での自動駆動襲撃も彼だったんでしょう?疑い深くなるのは当然よね?」
「まあ、ね」
それを言われると胸が痛い。
ロックの擁護は難しい状況。
「心の根っこ部分は悪い人じゃないと思うんだよね、だから僕は彼を信じたい」
「そう、でも私とオウルは時間がかかると思うわ。御免なさいね」
「構わないさ、いつか彼と打ち解けてくれればいい」
今言えるのはこのくらい、か。
言葉選びを間違えないようにするのは冷や冷やだね。
特にカレンみたく人心掌握に長ける話好きには注意が必要だ。
「───っと、お前らここにいたのかよ」
声を掛けてきたのはジェット、と一緒にフィロもいる。
フィロの両手は何処かで買ったであろう食べ物で塞がっていた。
「リン、聞いてもいいんだぞ?」
「何が?」
自慢気に鼻を伸ばしているあたり、賭けには勝利したんだろう。
「……いくら勝ったの?」
「3倍だ」
「んな!?」
「ふっ…これが俺の実力だ」
「まさか…明日もやるとか言わないよね」
「普通にやるだろ。明日はさらに倍の倍の倍にしてやるさ!大船に乗った気持ちでいやがれ!」
なんとも沈みそうで怖い。
試練の街の大会賞金を貰わなかったのは、ある意味正解だったかもしれない。
もし負けていたらと考えるとゾッとする。
明日の勝ち負けが、これからの生活に響くなんてことは絶対にあってはならない。




