恋せよ若人
【登場人物】
リン
フィロ
ジェット
オウル
ヨーカ
次の日の朝、僕とジェットは昨日と同じく温かいミルクに舌鼓していた。
ふと、昨日の晩に夜空を見た時のことを思い出す。
「この街の夜空は綺麗すぎる」
「だけど、幻想の所以とするのは純粋な夜空だけじゃないみたいだよ」
「みたいだな」
ヨーカのご両親さんが言うには、もっと格別に幻想的な雰囲気になる所があるらしい。
そこは街長が厳重に管理していることもあって、一般人は中々入れないらしい。
「御目通り叶うかな?」
「俺らにはオウルがいるし、いけるだろ…まぁ俺は見に行かなくてもいいけどな」
「風情を愉しんだ方がいいと思うよ、ここには観光で来ている感じだしさ」
「気が向いたらな……というかまたあの2人はヨーカちゃんと遊んでんのか?」
「オウルはそだね、フィロは違ったような…」
「やっぱりくっつくんじゃねぇのか?」
「いや〜まさかそれは無いと思うよ。仙都を出発してそれほど経っていないのに、ここの移住をオウルが選択するとは思えないな」
「お前は恋したことねぇのかよ?」
「あるよ」
「なら分かるだろ」
「まぁ、ね」
だからといって、オウルがその選択をするとは思えない。
仙都を出る時に、僕に伝えてくれた言葉を思い出せば、彼の旅はまだ始まったばかり。
だから僕の予想はジェットは違う。
いつか彼自身が、この街に舞い戻る可能性はあると思うけどね。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「街長さん、優しい人で良かったね」
御目通りは程なく終わり、夕方になってその場所へと赴く。
川が流れ、水は澄んでいる。
草木も丁度よい長さで、虫の音色が微かに聴こえる。
「あし、ブヨブヨしてた」
「純血だからだね」
「わーむといっしょ」
フィロの言うわーむとは、暗闇に居た黒い生物のこと。
ワーム、黒い化身、この街では神様の類と言われている。
「アレを崇めるのはどうかと思うがな」
「ちょっと言い方!」
この場所にはヨーカちゃんも来ている。
街長が快く許可してくれたのは、ヨーカちゃんの働きも大きい。
「私は大丈夫ですよ。普通の人は恐怖すると聞きますから。ただ彼らも縄張りに侵入されたから追い回したと思いますので、ご容赦ください」
少女の言葉にしては丁寧だ。
僕達の他にも同じように思う人は多いのだろう。
「祠があるのもそういう理由か」
「はい、毎年街の皆で参拝しています。記念日もあります」
祠は綺麗にされていた。
花も添えられている。
「皆さん、そろそろです……」
「わぁ」
「すごっ」
「いいですね」
日が沈み、空には満天の星。
川の畔には光る虫たち。
静けさの中に響く、虫の音色。
街灯はなくても、ここは確かに明るく美しい。
「ヨーカちゃん、これあげるよ」
「これはなに?」
オウルがヨーカちゃんに渡していたのは土偶。
大地の街で、頂いたお守り。
神を象った白い像。
「いいんですか?ありがとう!」
「うん、またいつか此処に戻るから」
「はい!待ってます!」
意外にもこの雰囲気に、ジェットもフィロも茶々を入れない。
仲間のことを想っている証拠。
僕には勿体ないくらいの良い人達だ。
願わくば、ずっとこのメンバーで旅していたいとは思うけど、おそらくそれは叶わない。
だから僕は今を、この瞬間を大事にしたいと思った。
【外伝② 黒い化身と白き偶像 完】




