幻想の街
【登場人物】
リン
フィロ
ジェット
オウル
ヨーカ
谷を越え街に着いたのは、夜になる前、星が見え始める頃だった。
空には雲一つなく、その星は綺麗に見えた。
「ここは、何という街ですかね?」
地図を食べられてしまっているため、現在地がまるで把握できない。
「街の雰囲気は普通だな」
どこにでもあるような穏やかな雰囲気。
大地の街のような分かりやすい特色はない。
「ん?あれ、あの人…あの人も」
人に指さすのは良くないと、今度フィロに言い聞かせないといけない。
「確かにあの人達は妖人だね、純血かは分からないけど、妖人の血筋が多い街なのかな」
妖人とは人間種の種類の一つ。
ジェットのような一般的な人間が大多数で、次に多いのがフィロのような獣人。
妖人は一番少なく希少とされる。
オウルは人間と妖人の混血で、耳や目にその特徴を引き継いでいる。
もしかしたら皮膚もそうなのかもしれないが、確認はしていない。
混血の場合の多くは、身体的能力は普通の人間と一緒であり、むしろ劣る場合もあると聞いたことがある。
そのため価値のあるのは純血だけであり、オウルが命を狙われたりすることは、ほとんどなかったらしい。
僕は純血の妖人は見たことがないが、もっと異様な姿だと聞いている。
皮膚は鱗状で眼はギョロっとしている。
人間のような足はなく、さっきの黒い生物のようなモソモソっと動く感じらしい。
そして純血の場合は100%の確率で先を見通す眼、先見の眼を持って生まれるらしい。
その眼欲しさに、争いが起きたこともあって数を減らしている。
つまり、この世に純血の妖人は、ほんの一握りしかいないのだ。
「貴方達、お客様?」
キョロキョロと見渡していたのが分かったのか、道外れにいた少女に声を掛けられた。
この子も妖人の混血。
僕達の中で最年少はオウルだが、それよりも1つか2つ年下くらいの女の子だ。
「良かったら、うちにどうぞ」
僕達は顔を見合わせたが、土地勘もないため、お言葉に預かることにした。
後で自己紹介を受けたが、彼女の名前はヨーカ。
ここ幻想の街入口の一軒家に住んでいる。
ヨーカのご両親も温かく僕達を迎え入れてくれた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「滞在は数日くらいか?」
ジェットは朝から温かいミルクを飲んでいる。
酒を飲まないのは珍しい。
「なんだよ?」
「いや、なんとも、長くて1週間くらいかな」
「それまではここに居させてもらうわけか」
仙都の次の街として、ここ幻想に来る人達は多いため、この家のように迎え入れるんだとか。
街に宿屋は無いらしく、家に厄介になるのが嫌な場合は野宿となるのだが、この街は年中天気がよく住みやすいため、野宿になっても文句を言う人はいない様だ。
「オウルと猫女は?」
「ヨーカちゃんと遊んでいるよ」
「ほう」
ヨーカちゃんのご両親が言うには、この街の大半は妖人の血を持った混血が多いそうだ。
次に多いのは獣人と言っていたから、世界の人口割合の真逆ということになる。
また純血も数人いるようで、その人達がここの街長らしい。
所々に警備兵がいるのはそういう理由だ。
純血の街長達を守るためだ。
「職業紹介所もないのは、少し暇だな」
「仕方ないよ、大地もなかったでしょ」
「あれは別次元だったろうがよ。手で飯を食うなんざ、俺はもう御免だぜ」
「はは、一番似合ってたけどなぁ」
街によって、それぞれの色がある。
この街も、その名前にちなんだ特色はある。
幻想の街と言われる所以は夜になったら分かるそうだ。
昨日は走り回ったために、皆熟睡だったそう。
今晩はその真意を確かめようと思う。
「それにしても、どう思う?」
「何が?」
「オウルとヨーカちゃんだよ」
「どうって、普通じゃない?」
「俺は恋してると思うぜ」
「!?」
ジェットは親心でも抱いてるのだろうか。
飲んでいるミルクにお酒が入っていたんじゃないかと思うくらい、その話題は長く続いた。




