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シンなる旅路【第一部、外伝】(カクヨムさんの方で修正版を投稿しています)  作者: 飯屋クウ
外伝② 黒い化身と白き偶像

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大地の街を経て

【登場人物】

リン

フィロ

ジェット

オウル

僕達は仙都(The・ハミット)を出て、ダイスを振って、大地の街(ソリース)を選び、いまはこの街を出発するところ。

街特有の衣装も譲り受け、心新たにと思ったが、次なる行き先を決める前に別れ道があるとのこと。


時間はかかるが安全に進めると言われる沼地と、短時間で越えられると言われる暗闇の2つだ。

暗闇の方は情報が少なすぎるため、ほとんどの人達は沼地を選ぶらしい。

暗闇を選ぶ物好きもいたらしいが、情報を持ち帰ったものはいない、と言われている。

僕達4人が選んだ道は暗闇。

多数決は2対2の引き分けだったけど、オウルの自動駆動(オートマシン)は主の意志に背き、暗闇を選択したがために、こうなった次第。

オウルはメンテナンスが必要と言っていたが、故障している風には見えない。

なんにせよ、自分達の選択に後悔をしなければいいだけのこと。

街の人達に見送られながら僕達は暗闇へと向かった。


少し歩いた先から森の雰囲気が一変していた。


「所々木々が折れてたり、根っこから無くなってたりしていますね」


「伐採にしちゃあ、少し変だな」


街の人達は自然豊かな生活をしていた。

木々の伐採もお手の物だったはずだから、これは彼等がしたわけではない、もっと別の…。


「地面も少し抉れているよね、自然災害なのかな?」


「ねぇ、あれーなにー?」


フィロの指さす先には、岩のように大きな黒い塊が横に延びている。

近づいてみると、それが生き物だったことが判明した。


「大きすぎるだろ…」


「死んでます、よね?」


「ブヨブヨー」


「この腐臭は死んでいるからなのか、この生物独特の匂いなのか分からないね」


黒い塊の腸は半分ほど削られていた。

全長20メートルはある生物の腹をだ。

つまり、この大口の歯型生物は他にもいるということ。


「縄張り争い的な何かですかね」


「これ、ナイフや銃も通らねぇんじゃねぇか?」


「逃げるしかないってことか」


「あっ、歯が抜けてる」


「フィロ、汚いから何でもかんでも盗っちゃダメだからね」


これが暗闇と言われる所以なのだろう。

情報を持ち帰った者達がいないのは、きっとこの生物に食べられたから。

僕は早くも選択を間違えたんじゃないかと思えてきた。


「どうする?戻る?」


「戻るのは性に合わねぇ」


「僕も、その気はないです」


「私も、もんだいないよ」


「頑固だなー、皆」



ふと、何か後ろで這いずるような、何かが蠢く音が聞こえた。

オウルの自動駆動(オートマシン)が“敵発見”と言わなければ、退避は一瞬遅れただろう。

黒い大型生物が大口を開けて僕達を飲み込もうとしていたからだ。


「散開!!」


僕の掛け声とともに、動き出す3人と1体。

お互い一定の距離を保ちながら、前へと走る。

ジェットの応戦による銃は全く効いている様子がない。


「どうすんだこれ!!」


「どうしようもないよ!!逃げ回るのみ!!」


「地図は確かフィロが持ってたよね!?」


「うん、はいオウル!パス!」


「「「「あっ…」」」」


空中に投げられた地図は、黒い生物の口に吸い込まれた。

口に投げ入れたのではない。

生物が近くまで迫っていたということだ。


「危ないっ!」


「うわっとっと!」


「地図無しとかやべーじゃんよ!」


「こういう時こそ、自動駆動(オートマシン)ですよ。彼に周囲を探ってもらいつつ、安全な道を行きましょう!」


「そんな道本当にあるのか!?」


「少しは信用してください!」


道標が無い以上、僕も役には立てそうにない。

ここは高性能な機械に頼る他なかった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




どれだけ走っただろうか。

まだ僕達は黒い生物に追いかけられている。

僕や運動能力の高いフィロ、傭兵として生きてきたジェットは余裕があったが、机仕事のオウルはそうはいかない。

オウルは途中から自動駆動(オートマシン)に運ばれていた。


「それって、そういう機能もあるんだ」


一家に1体は自動駆動(オートマシン)、なんて言われてもいいかもしれないほどに便利だ。


「道、迷ってるんじゃねーか?」


「そう思われても仕方ないですよ、地図無いんですから」


「私は、あっちがいいと思うよ」


オウルとジェットの口喧嘩を他所に、フィロは前へと駆け出す。

獣人の嗅覚に従うべきか、機械の提案を優先すべきが迷うとこだが、ここはリーダーでもある僕の判断に委ねられた。


「フィロを信じよう」


何故この決断に至ったかは、ここが森の中だったからだ。

市街地なら自動駆動(オートマシン)を優先したと思う。

森という自然の中では、獣人の方が道に詳しいと思ってしまったのは単なる思い込み。


「おい!もう1体来たぞ!!」


「いえ、まだ来ます!計3体!!」


「共倒れになってくれないかな?」


僕らの会話を他所に、フィロはどんどん前へと突き進む。

さながら猪突猛進といったところだが、フィロは猫、猫突猛進と言うべきか。

道なりは獣道となり、岩肌も見えてきて走りにくい。

四足歩行で走るフィロならばともかく、普通の人達なら躓いて転けていただろう。

オウルが自動駆動(オートマシン)に運ばれていて本当に良かった。


「───こ、ジャンプ!……その下くぐる!」


岩を跳び、曲がった木の下を潜る。

指示に従いなら獣道を抜けると開けた所に出た。

後ろからは3体の生物が迫ってくる。


「このあとは!?」


「あそこにジャンプしてあれにつかまる」


「「はっ?」」


オウルは自動駆動(オートマシン)に運ばれているからいいが、ジェットは傭兵と言えど身体能力は獣人より劣る。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんて所業、普通はできないし、考案もしない。

僕はまぁなんとかなるけど、この提案は普通飲み込めないほど。

やはり僕は人選、選ぶべき道を間違えたのかもしれない。


「破れかぶれだ!突き進むぞ俺は!」


「僕もバックアップします!」


「どうにでもなれ!」


「いっくよー!!」


一斉の掛け声により、対岸へと渡る。

黒い生物は何故か急停止。

谷に落ちることもなく、こちら側へ跳ぶこともなく、森へと戻っていった。


「ふぅ、間一髪」


「あの生物って意外と賢いのかもしれませんね」


「俺はもうこの道通らねぇからな」


「これはきねんだね♪」


「おまっ…猫女、まだ持ってたのかよ」


「結局持ってたんだ」


「うん」


黒い生物の歯なんて、どうするのやら。

専門家に売ればそれなり儲けになるのかもしれないけど、中々機会はないだろう。


「あっ、あれ!」


遠くの方には、街が見える。

波乱道中の旅路はなんとか次に繋がったらしい。


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