事件発生
【登場人物】
シャルル・ミン
リン・フォワード
ヤヨイ・ユルグ
ガイズ
リンが来てから2週間、時間が経つのは早い。
仕事の覚えも早い、優秀すぎる。
雇用期間1ヶ月がもったいないくらい。
周りにも気に入られつつある。
これが彼の魅力なのかもしれない。
「道に迷ったのは初日だけよね?」
それも可怪しい。
この都市はある意味で言えば生物と一緒。
建物だけではなく、時には道も動いたりする。
これは私達が動かしているのではない。
機械人間とはまた別の自動駆動を建物や道の一部に組み込んでいるため、その自動駆動の判断によって動かされている。
機械人間は意思決定などの入念な設定をしているため、受け答えは一定であるし、対応も基本に忠実な丁寧なロボットだ。
自動駆動は設計自体は人間の手によるものだが、内蔵されている意思決定基準は自由意思であり、彼等の気まぐれによる所がある。
造り手から言えば、自動駆動の方が簡単だ。
ガワだけ造ればほぼ完成だからだ。
細かい動作確認や耐久実験などもする必要はない。
製作費用も安い。
自動駆動を量産すればいいのではと考えるかもしれないが、現実は違う。
この都市は当てはまらないが、普通の都市や街に好まれるのは機械人間のようなタイプ。
自動駆動のような個性の強い気まぐれは、同じく個性の強い個々人が持つことが多いのだ。
量産に至らないのは、そういう現実があるから。
「僕は跡を見つけるのが得意だからね」
「それでもでしょう」
とは言っても、残りの雇用期間はあと2週間。
上司は残留を希望しているみたいだけど、リンの意志はそうではないみたい。
このまま、何も起こらなければいいけれど。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
地下工場を練り歩く2人。
シャルルの上司と現都市長。
2人はシャルルの造ったプロトタイプの前で止まる。
「───して、私の案は順調かな?」
「滞りなくです、ガイズ様」
「あの女もそろそろ用済みだな」
「はい」
「この都市において機械と人間の共存なぞ、有り得ぬぞ。潤うのは私達だけでいい。そうは思わんかね?」
「全くその通りかと」
「これが量産出来れば、潤沢だな」
「その未来はすぐそこです」
プロトタイプの前で2人は大いに笑う。
その3人しかいない大きな空間の中で、声は木霊し響いていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
─────ウゥー!!!!
突如鳴ったのは、都市内の警報音。
発信源は地下の一画。
「シャルル何が起きてるの!?」
「分かんない!ちょっと静かにして!今聞いてるとこ!」
何よこれ。
警報音が鳴ったのって私が拾われた頃以来じゃない。
何が起こってるっていうの?
「…よく聞こえない!……は?いまなんて?ぼう、そう…暴走ってどういうことよ!」
「地下の人はなんて言ってるの?」
「分からない。分からないけど行くしかない!」
「どういうこと!?」
「私のプロトタイプが反逆して上司と都市長を襲ったあげく、他の機械人間を束ねて進軍している、らしいわ。地上に出るのは時間の問題かもしれない」
「へ?」
「私も理由が分からないのよ。軍事用に転用する話は前々からあったから、それが関係しているかもしれないけれど、そうだとしても私のプロトタイプが暴れているなら私が行くしかないじゃない」
「どう考えても危険だよ、1人では行かせられない」
「大丈夫よ、なんとかする。リンは市民を安心させておいて、ね」
関係者以外は巻き込ませない。
それが私の信条。
これ以上、機械を憎ませるなんてこと、絶対にしたくはない。
これは私が止めるべきこと。
私の責任。




